召喚されました
ミミから受け取った書状には、王家の物と思われる封蝋印がしてあった。
開封したくないなぁ~……。
でもそういう訳にはいかないだろう。
「アンシー」
「ハイ」
俺がアンシーに書状を渡すと、彼女は右手の人差し指の爪をカッターのように変形させて、封を切って俺に返す。
で、中の手紙を読んだ直後、俺はテーブルに突っ伏した。
「い~や~だ~……」
「お嬢様、書状にはなんと?」
アンシーが手紙を覗き込んでくる。
普通のメイドなら、主人の手紙を勝手に見るなんて有り得ないが、俺と彼女の距離感は主人とメイドのそれではないからなぁ。
むしろ主従関係以上の絆がある。
それにアンシーも他人事では無いのだろうし。
「読んだらすぐに登城しろ……と。
私、まったく王家とは接点が無いのに……。
……やはり公爵家絡みですかね?」
「それしか考えられませんね。
ザントーリ公爵家が何もしていなくても、お嬢様が不法逮捕された時にはラントール伯爵家やマルドー辺境伯を中心に抗議を入れてもらいましたので、騒動が王家の耳に入る可能性はあったと思います」
ああ、そっちの方向でか……。
それらの家には後日お礼をするとして、まずは王城だ。
行きたくはないが、王族の命令を拒否したら、それこそ罪に問われる。
できれば面倒事には関わりたくないんだけどねぇ……。
まあ、もしかしたら国による不法逮捕について謝罪される可能性もあるのかもしれないけど、どう転ぶか分からんな、これ……。
しかも現在俺の義手と義足は、以前と比べると性能が落ちている。
なので身体能力については、弱体化していると言ってもいい。
まあ「変換」は問題なく使えるので、必要に応じて武器を作って戦えるが、やはり不安はあるな……。
「アンシー、王城へ向かいますので、一緒に来てください。
いざという時は私を守ってください」
「勿論です、お嬢様。
このアンシー、命に代えてもお嬢様をお守りいたします」
「そんな……命を懸けなくても。
アンシーの方が私は大切です」
そう答えつつも、真摯なアンシーの態度を見て、思わず顔が赤くなるのを感じた。
「なんかイチャついている……」
そんな誰かの声が聞こえてきたので、
「さ、さあ、行きますよ。
ミミ、後は頼みます」
俺は慌てて出発の準備をした。
初めて間近で見る王城は大きかった。
まさに荘厳といった感じだ。
前世の日本では石造りの城なんて見る機会は無かったので、ちょっとした観光気分になるが、これからのことを考えると素直には楽しめない。
はあ~……誰に何を追及されるのかと考えると、ちょっと胃が痛くなるよ……。
で、俺とアンシーは、正門の門番に書状を見せた後、持ち物検査を受けた。
当然、武器の持ち込みは禁止なのだが、俺は「空間収納」にいくらでも隠せるし、そもそもアンシー自身が兵器そのものだ。
いざとなれば彼女だけで城を制圧することができると思うが、何も起きないのならそれが一番いい。
城内に入った俺達は、応接室へと通された。
しかしそこには誰もいない。
やべぇ……。
これは少なくとも、俺が持っている子爵位よりも上の奴が出てくるぞ?
これは身分の上下関係をハッキリさせる為に、客人をワザと待たせる手法だ。
日本人の感覚なら客人を待たせるのは失礼にあたるけど、貴族……というか政治の世界ではこういう嫌がらせじみた手法でマウントを取ることはよくあるらしい。
これで大人しく従うのならよし、反感を持って逆らうような者なら、相手にしなければいいだけの話なのだろう。
実際、権力者に冷遇されて無事な者なんて、そんなにいないしな。
逆に平気な者は、他に強い後ろ盾がいる可能性が高く、だからこれは敵味方の選別方法の初歩として多用されるらしい。
確かに前の世界ですら、それを他国のトップに対してやった奴がいたわ……。
だからこの誰もいない応接室は、確実に高位の貴族が出てくることを示している。
なんで?
ただの事情聴取なら、役人とかが出てくるんじゃないの?
それから暫くすると、女の人……というか、16歳くらいの少女が護衛を引き連れて部屋に入ってきた。
光の加減で薄いピンク色に見える金髪と、まだあどけなさを残すが将来は美女になると思わせる整った顔立ちを持っている。
まあ、俺には負けるが。
そして服装は社交界で着ていそうなドレスだが、これが普段着だとしたらやはり地位は高そうだ。
だが、この人が俺に何の用だ?
まったく見覚えは無い人だが……。
……ふむ、取りあえず挨拶だな。
「初めまして、エルネスタ・タカミです」
俺は席から立ち上がって、頭を下げる。
すると彼女は──、
「良い。
そのまま席に座っておれ」
と、答え、席に座る。
うわ、めっちゃ偉そう……。
そして彼女は名乗る。
「私はこの王国の第5王女、ミーティアだ」
ええぇ……。
なんで王女が?
暇なの?
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