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再 誕

 あけましておめでとうございます。まあ、私の年末年始は全部夜勤だったので、正月気分とか皆無でしたが。

 俺の目の前には、冷たくなったアンシーが横たわっている。

 おそらく死因は、出血多量だろう。


 人が死ぬところが見たいから、アンシーの怪我を放置していた!?

 なんだよ、それ……っ!?

 拷問されたり陵辱されたりした方がマシだとは決して思わないが、だからといって興味本位で「試しにやってみた」とでも言うかのような軽いノリで、命が奪われるなんてことがあっていいのか……!?

 こんな人の尊厳を無視したような……っ!!


 だとしたらあの下着泥棒も、本当は下着なんてどうでもよくって、スリルを(たの)しみたいとか、貴族の令嬢達を(おび)えさせて愉しむとか、遊び半分な目的でやっていたんじゃないのか?

 変態ではなかったのかもしれないが、サイコパスではあったのだろう。

 そして更に許しがたくなった。


「……で?

 お前は何をしていた?」


 俺は男に問う。

 こいつ……さっきアンシーを、麻袋に詰め込もうとしたよな?

 物みたいに処分しようと……!!


「え……あ……。

 片付けておけって言われたから……」


 そう答える男には、さほど葛藤が見られなかった。

 下っ端であるが(ゆえ)に、面倒事を押しつけられたというのなら、同情することもできるが、こいつはたぶん人の死に慣れている。

 人を物のように扱うことに──。


 ならば──、


「ガッ……」


「なっ!?」


 俺は男の眉間(みけん)に銃弾を撃ち込む。

 お前が人を物のように扱うのなら、こちらもそのように扱う。

 お前は材料(・・)となれ!


 さあ、まだ泣く時じゃない。

 まだアンシーを(あきら)める時じゃない。

 俺は俺のできることをする。

 アンシーを(よみがえ)らせるんだ!


「こっ、これは……!?」


 目の前で男の死体が光り出したことに、執事が動揺する。

 これから先のことは、あまり見せたくないな……。

 いっそ、こいつも材料にしてもいいのだが……。


「爺さん、巻き込まれたくなかったら屋敷から出ろ」


「いや……しかし……」


 この執事には、ことの顛末(てんまつ)を見届ける役割があるのかもしれない。

 だがそんな相手の都合などは知らん。


「そこの男のようになっても知らんぞ」


「わ、分かりました……」


 光に包まれ、消えつつある男の死体を見て、執事は足早に去って行った。


 さて、材料は男だけでは足りない。

 俺の「空間収納」の中に入っている全ての物と、俺の魔力を全部使って、アンシーを「変換」する!!


 ……だが、俺が望む結果を得る為には、まだ材料が足りない。

 それならばこの屋敷全体を、材料にすればいい!

 周囲全体が光り出し、そしてアンシーも光る。

 これなら行けそうか……?


 いや、まだ足りない。


「それならば、俺の義手と義足を捧げてやるっ!!」


 その瞬間、義足を失った俺は倒れ込む。

 義足に侵食されたというか、同化が進んだ所為なのか、両足は膝上まで消失していた。

左腕は肘までだ。


 これでどうだ!?

 ……う~ん、まだ足りない気がする。

 それなら、ええぃっ!!


「まだ無事な右腕を持っていけぇ!!」


 直後、右腕に激痛が(はし)る。

 そして更に右腕が消失し、激しく出血した。

 まだ義足の治癒能力が残っているはずだから、血はすぐに止まるだろうし、致命傷にはならないだろうけど、メチャクチャ痛ぇ!!

 だけどそれで精神の集中を乱してて、「変換」を中断しては元も子もない。

 何が何でも耐えろ……っ!!


 俺が必死で意識を集中していると、周囲のあらゆる物が消失するにつれて、アンシーの身体が一層強い光を放った。

 だが、それも一瞬のことで、やがてその光は徐々に薄らいでいく。


 光が消えた後、そこにはアンシーの身体(からだ)が、以前と変わらずにある。

 いや、スカートを汚していた血の痕跡は消えていて、そのメイド服が新しくなっていることが分かった。

 そしてその身体も──。


 よし、「変換」自体は、最後まで完遂できたということで間違いない。

 問題は俺の思い描いていた結果に、なっているかどうかだ。


 俺はアンシーのところまで這っていく。

 幸いにも右腕の出血も止まりつつあるので、なんとか動ける。


「ア、アンシー!」


 俺が何度か呼びかけると、アンシーは(かす)かに動いた。

 生きている!

 ……生きているはずだ。


 ただ、アンシーの魂が──人格や記憶が、ちゃんと残っているのかは、まだ分からない。

 そこは賭けだった。


 やがてアンシーは目を開け、俺の方を見る。

 そして──、


「坊ちゃま……?」


 彼女はそう言葉を発した。

 記憶は間違いなく残っているようだ。

 今の俺の姿を見て、そんな呼び方をする者なんて、アンシー以外には有り得ないからな。


「ど、どうしたのですか!?

 そのお身体はっ!?」


 それに四肢を失った俺を見て慌てるその姿は、以前のアンシーとなんら変わらないように見える。

 もしかしたら記憶データと、疑似的な人格がそのように演じているだけの可能性もあるけれど、俺だけは信じなければならない。


 生と死の摂理を歪め、彼女をこんな身体(・・・・・)にしてしまった俺だけは、彼女が本物だと──。


「良かった……アンシー。

 本当に……っ!」


 ともかくアンシーが動き、喋っている。

 今はそれだけで充分だ。

 俺は思わず、目から涙が溢れそうになった。

 平和的? 知らない子ですねぇ……。

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