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屋敷の奥で

 今年最後の更新になります。今年もお付き合いいただきありがとうございました。

 公爵家の別邸だが、その正門に門番の姿はなかった。

 上級貴族の家なら防犯上有り得ないが、本来は資産として持っているだけの物件で、 普段は使用していない家なのかもしれない。

 実際、庭は放置というほどではないが、毎日手入れをしているようには見えない程度には荒れている。


 この屋敷をあの変態とその仲間達が、たまり場にしているのかもしれない。

 そんな家で謹慎を命じられても、あの変態にとっては痛くも痒くもないだろう。

 やはり甘過ぎる処分だったといえる。


 だからアンシーの拉致なんて、馬鹿なことを考えるのだ。


「まずは私が呼びかけてみましょう」


 と、執事の男が玄関へ向かい、中へと呼びかけているようだが、反応はなかなか返ってこなかった。

 扉も中から施錠されているらしい。


 俺は段々と焦れったくなってくる。

 そして足元の石畳に血痕らしき物を見つけて、我慢の限界となった。

 まさかアンシーのじゃないよな!?


「……どけ。

 時間の無駄だ!」


「なっ!?」


 俺は玄関の扉を、「変換」で拳銃へと変えた。

 これで扉を破壊する必要も無くなるし、これから使う処刑道具も手に入って、一石二鳥である。


 それに大きな音を立てていないから、敵にはまだ気づかれていない。

 これで誰にも邪魔されずに、アンシーを捜すことができるだろう。


「入りますよ」


 困惑する執事を押しのけるように、俺は屋敷に踏み入った。

 人の姿は見えないが、気配の多くは2階にあった。


「2階は?」


「殆どが寝室になっております」


 昼間なのに、まだ寝ているってことか?


 それならば2階は後回しにして、1階を捜すか。

 いや……まずは執事に聞いてみるか。


「拉致した人間を、閉じ込めていそうな部屋は?」


「そうですな……。

 奥に倉庫として使われている部屋が、あったはずですが……」


 じゃあ、そこから調べてみるか。

 その部屋に近づくと、確かに人の気配がある。

 扉も少し開いていていて、そこから何かガサゴソと音が聞こえてきた。


 そっと室内を覗き込んでみると、薄暗い中で麻袋を持った男が、それに何かを詰め込もうと──、


 アンシー!?

 詰め込もうとしているのはアンシーか!? 


「おい、動くなっ!!」


「うおっ!?

 な、なんだお前!?」


「言う通りにしなさい。

 私はザントーリ公爵家の筆頭執事だ」


 執事の呼びかけに、男は動きを止めた。

 その間に、俺はアンシーへと駆け寄る。


 アンシーの着衣には、殆ど乱れが無い。

 おそらく性的な暴行を受けた可能性は、かなり低いだろう。

 ただ、スカートがベッタリと、血のような物で汚れて変色している。

 部屋の中に血溜まりような物があるから、かなりの出血があったはずだ。


 しかし、その血は既に乾きつつある。

 そしてアンシーの肌は青白く、生気が無かった。

 嘘……だろ?

 俺はどうしたらいいのか分からなくなって、硬直する。


「なんてことを……。

 これはどういうことだね!?」


 執事が焦った様に問う。

 いかに公爵家の息子でも、やって良いことと悪いことがあるし、隠蔽できることにも限度がある。

 そもそもこれは、俺にとって逆鱗に触れる行為だ。

 もう公爵家もまとめて滅ぼしたい気分だ。


 すると男は──、


「若が因縁のあるメイドを捕らえてこい……と。

 少し手強い相手だから、弱らせた方がいいと言われて……」


 弱らせて……ってなんだよ……?

 弱らせただけで、こんなことになるのかよ!?

 この異世界なら、死ぬような重傷でも、魔法で治すことも可能なんだぞ!?


「お前ら……アンシーに何をした……っ!?」


 俺は男に拳銃を向けた。

 返答次第では即射殺する。

 しかし──、


「い、いや……何も」


 は?


「何もしなきゃ、こんな……!!」


「ほ、本当だって!!

 若が人の死ぬところを見たいって放置して、出血で弱っていくのを眺めていただけだからっ!」


「……は?」


 理解の及ばぬ答えを聞いて、俺は目の前が真っ暗になる思いだった。

 こんな大変な展開ですが、続きは来年となります。年末年始は仕事なので、次の更新は1月10日近くになるかと……。救いはあるので、気長に待っていただければ嬉しいです。

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国滅んだな
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