わからせた結果
え~と、「空間収納」は反則じゃないよな……?
審判のコリンナさん?
俺が彼女の方を見ると、
「私にはそれが魔法なのか、それともスキルなのか判断がつきません。
ただ、元々防具の使用は認められているので、その盾を使うだけなら、問題は無いものとします」
「そんな、お姉様!?」
コリンナの判定はセーフ。
まあ、素手で模擬戦に臨んだ俺が、後から盾を持ち出すのは、ある意味負けを認めたようなものだけどさ。
だが、素手のままではセリエルを一撃で気絶させるとか、そんな器用な真似はできないので仕方がない。
だけどこの盾を使えば、たぶん勝負は簡単につくはずだ。
無駄に戦いを長引かせて、女の子に不必要な怪我をさせるのは趣味じゃないからな。
「それでは、そろそろ終わりにしましょう」
「勝つのは私ですわ!」
と、セリエルは怯むことなく攻撃をしてくるが、その攻撃は俺の盾に弾かれる。
元々フルーレの細い剣身は、金属製の防具に対してはほぼ無力だ。
革ならまだしも、鉄とかの金属を貫通するほどの威力は無いのだから。
いや、異世界なら、金属を貫通させるほどの威力を出せるスキルがあるのかもしれないよ?
「ぐっ……!」
だけど現時点でのセリエルには、それたけの威力をスキルに乗せることはできないようだ。
彼女が先程使ったスキルも、通用しない。
だから本来ならば、装甲の隙間を狙うという戦法をとるしかセリエルには手段が無いのだが、俺が出した盾は大きく、この身体を殆ど覆い隠してしまっている。
この盾による防御を、セリエルが突破するのは困難だろう。
俺の方が身体能力が上なので、横や後ろに回り込もうとしても、すぐに向きを変えて対応するしな。
勿論、俺は防御に徹するつもりはない。
「それではいきますよ」
「きゃっ!!」
俺は勢いよく踏み込み、盾ごとセリエルへと体当たりをした。
シールドバッシュ……というよりは、シールドチャージと言われている技だな。
「あっ!」
そして盾に弾かれたセリエルは地面へと倒れ込み、その上に俺は盾ごとのしかかった。
それだけで彼女は、そこから抜け出すことができなくなる。
「ちょっと……どきなさいよ!」
セリエルは藻掻くが、もう大きな盾と地面でサンドイッチ状態だから、手足を動かすことすら難しいだろう。
まあ、盾だけならはね除けることもできたかもしれないけど、俺の体重も加わったらねぇ……。
いくらセリエルが強かったとしても、筋力は少女のそれを大きく超えるものではない。
だから既に大人以上のカを出せる俺に押さえこまれたら、もうどうしようもないのだ。
「審判、これはもう戦闘不能ですよね?」
「あっ……!
しょ、勝者、エルネスタ様」
そんな訳で、俺とセリエルの勝負に決着がついた……はずなのだが。
「み……認められませんわ。
こんな負け方……」
セリエルはまだ納得していないようだ。
確かに子供が非力なのは当然のことで、そんな努力では克服することが難しい要素で負けるというのは、理不尽に感じるのかもしれない。
また、武人系のキャラであるセリエルとしては、身体が動いて戦える内は、負けだとは認めたくないのかもしれない。
しかし現実を受け入れてもらわないと、彼女に成長はない。
「ご自身が非力なことを認めましょう。
そしてそれを魔法などの別の方法で、補うことを考えましょう。
それができないのならば、何度やっても結果は同じです」
「なんですってぇ!」
というか、子供の癇癪にはいつまでも付き合えないぞ。
「この……っ!」
セリエルがフルーレを振り上げて、攻撃を仕掛けてきた。
……もう模擬戦じゃないし、自衛の為なら何をしてもいいよな?
俺はそれを撃つ。
「え……な?」
撃ち出された細い糸のような物を付けた物体がセリエルと命中し、その瞬間彼女の動きが止まった。
そして──、
「あばばばばばばばばば──!?」
全身を小刻みに震わせながら、お嬢様らしからぬ滑稽な悲鳴を上げる。
だが、無理もない。
俺が使ったのはテーザー銃と呼ばれる物だ。
電流を流して相手の動きを封じるというスタンガンの一種で、外国で警官が使っているのをテレビなどで見たことがある人もいるだろう。
俺もその1人だ。
そのテーザー銃を元々護身用に作って「空間収納」に入れておいたので、それを取り出して使った訳だ。
「なんでもありの戦場ならば、一瞬で勝負を決めることも可能だったのですよ?
今までどれだけ手加減に苦労したのか、察してくださいよ」
「……!!」
そんな俺の声が聞こえたのかどうか、セリエルは地面に倒れ伏し、動かなくなる。
テーザー銃での死亡事例は結構あるので、威力はかなり小さめに設定していたのだが、さすがに子供には刺激が強すぎたようで、気絶してしまったようだ。
「保健室に運びますね……」
そんな訳で、セリエルとの戦いはこれで完全決着となった。
結果、周囲からの俺への評価は、「能力はよく分からないけど物凄く強い奴」ということになったようで、セリエルのように正面から因縁をつけてくるような者や、俺が聞こえる範囲で陰口を叩く者はいなくなった。
むしろ俺のことを怖がって、まったく近寄らなくなった者もいる。
ちょっと傷ついた。
逆に俺に対して、憧れの視線を向けるようになった者も増えたが……。
強いということは、それだけでも魅力的なものとして目に映るんだろうね。
特に思春期に入り始めたばかりの、中二病予備軍とも言える年齢の子供達にはな。
その代表はというと──、
「エルネスタお姉様のお言葉には、痺れましたわ!
こんなの生まれて初めての経験です!」
うん、実際に電気で痺れていたからな。
そう、セリエルだ。
彼女はデレデレとした顔で、俺の腕へと手を回して抱きついている。
あ~……お嬢様キャラが、チョロいというのはよくあるよな。
そして武人系キャラがドMだというのも。
テーザー銃の刺激を、気に入っちゃったかぁ……。
他にも強い者には従うという、武人特有の弱肉強食的な価値観もあるのかもしれないけど、とにかくセリエルに懐かれてしまった。
彼女は素直にミミに対しても謝罪してくれたし、それならば俺も拒む理由は無い。
しかしこうなると、黙っていない者達もいる。
「ちょっと、お姉様って何よ!
私の血が繋がった姉様なんですけど!?」
「エルは、私の親友だよ!」
セリエルに張り合おうとするクレアとアリサ。
更に遠巻きに、怖い笑顔でこちらを見ているアンシー……。
騒がしい学園生活になりそうだよ……。
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