魔法を学ぼう
「いいですか、クレア。
人前では私のことを、兄様と呼んではいけません。
姉様です」
「はあ……」
クレアは釈然としない顔をしつつも頷いた。
彼女が俺を「兄様」と呼ぶことについて、アリサには「昔は男の子っぽかったから」と誤魔化しておいたが、クレアが「兄様」と呼ぶたびに周囲への説明をするのは面倒臭い。
ならば呼び方を変えてもらうのが、手っ取り早いからな。
それはさておき、あれから俺達兄妹はアリサヘと改めて謝罪し、とりあえず許してもらうことはできた。
ただ、クレアとアリサとの間には、まだまだぎこちない空気が漂っているが……。
まあ、こればかりは時間が解決してくれるのを、期待するしかない。
俺が口出ししても、逆効果になるかもしれないしなぁ……。
で、現在は俺の部屋にクレアを招いて、お互いがこの3年間でどのように生きてきたのかを話し合った。
「そう……私に弟が……」
弟の誕生は喜ばしいことなのかもしれないけれど、改めて自分の帰る場所が無くなってしまったのだということを実感する。
表向きには、弟が長男になってしまうのだろうなぁ……。
そしてクレアも、似たような状況であるらしい。
後継ぎの役割を降ろされて、用済みになった。
だからこのままでは、雑に政略結婚の道具にされるだけだろう……と。
「そういうことなら、もしもクレアが家を出たい時は、我が子爵家で受け入れますよ」
「本当、兄様!?」
クレアは笑顔を浮かべた。
実に3年ぶりに見る笑顔だ。
どことなく陰鬱な顔付きをしていた彼女だが、それだけこれまでの環境が良くなかったのだろう。
昔はよく笑う活発な子だったのに……。
俺の変化に巻き込んでしまった結果か……。
でも、あの頃のクレアに戻ってくれたようで、その笑顔には救われたような気持ちになった。
「それにしても子爵にまでなった兄様が、何故今更学校に通う必要があるの?」
「それは……」
アリサの付き添いと言ったら、クレアはいい顔をしないよな……。
「営業半分……ってところですかね。
学園に通う貴族の娘達を通じて、顧客となる貴族との繋がりを増やそうかと」
「半分……?
もう半分もあるの?」
「あとは、魔法の勉強ですね」
「魔法の?」
「私は、魔法がまったく使えないので」
スキルとの相性がなぁ……。
その所為で武具を作る時に、魔法を付与することができない。
折角の異世界なのに、魔法の恩恵が得られないのは残念すぎる。
俺のスキルと魔法の力が合わされば、更に強い武具が作れるかもしれないのに……。
「そういうことなら、魔法の上級クラスである私が力を貸しましょう!
手取り、足取り!」
そういえばクレアには魔法の才能があるんだっけ。
アリサも上級クラスだし、彼女の協力も得られるかな……。
今のところ初級クラスではなんの成果も上げられない俺でも、2人の協力があればなんとかなるかも……。
そう思っていたんだけどなぁ……。
「やっぱり駄目だったねー」
クレアと一緒に、魔法の自主練をしていた俺。
そんな俺達を見ていたアリサは、予想通りだという顔で言った。
「……まったく成果が上がらないなんて……」
あれから10日ほど、クレアによる魔法の指導を受けたが、なにも効果は上がらなかった。
アリサとしては、エカリナさんやリーリアからの指導を受けてきた俺の姿を見ているので、同じ結果になったとしか思えないのだろう。
「姉様には膨大な魔力があると、感じられるのに……。
何故魔法が発動しないのか、理解できないんだけど……。
もう才能とかの問題じゃ、ないと思うの……」
やっぱりスキルとの……あるいは俺自身との相性か。
「う~ん、疑似魔法なら簡単なんだけど……」
俺は掌から炎を放出してみる。
「いや、そっちの方が凄いと思うんだけど……。
呪文詠唱とかしてないし」
だけどこれは、武器として生み出して放出しているだけだから、放出した後の操作ができない。
出した火球の軌道を変えて、敵を追尾するようなことをやってみたい。
まあ、近代兵器でも同じことはできるから、それはこだわるほどのことではないのかもしれないが……。
「でも、このままでは、武具に魔法の効果を付与することができない……」
「私、付与魔法は得意よ。
いっそ私に任せたら?」
それだと大量生産ができないし、俺単独では使えない。
だが、できないことにこだわっても、仕方がないか……?
「それじゃあ、既に魔法が付与されてる物を材料にして、エルが能力を使ってみたら?」
と、アリサ。
ふむ……それならば、俺が作った武具に後から魔法をするよりも、能力の拡張性もあるかもしれない。
勿論、「変換」後に、付与されていた魔法の効果が残っているのかどうは分からないが、ちょっと試してみるか。
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