お貴族様のマウントバトル
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声がした方を見ると、金髪縦ロールヘアで、小生意気な顔をした少女がいた。
まだ12歳ほどだが、既に悪役令嬢になりそうな片鱗が見える。
なお、この学校は何歳から通わなければならないという決まりは無いので、同い年の彼女が先輩なのか同級生なのかは分からなかった。
そんな少女の後ろには、取り巻きと思われる少女が2人。
雰囲気からして、ドリル娘よりは格下なのは間違いなさそうだ。
こいつか?
こいつらがミミを侮辱したのか!?
うん、俺も侮辱されたと思うが、それはどうでもいい。
自分が立派な人間だとは、まったく思っていないからね。
で、ドリル娘は俺が視線を向けたことで、「しまった」とでも言うような顔をした。
どうやら聞こえるとは、思っていなかったようだ。
相手が自身よりも上位の貴族である可能性があるのに、迂闊な発言をするのは失態どころの話ではないからな。
おそらく仲間内で陰口を叩き、盛り上がる為の発言だったのだろうし、相手に聞こえるような声量のつもりはなかったはずだ。
でも、俺は義足によって身体能力が強化されているから、普通の人間なら聞こえないような音量でも聞こえるんだよ。
そして兎獣人であるミミのウサ耳にも……。
そのミミは、困惑したような顔をしていた。
この国における獣人の立場は、奴隷階級……という訳でもなく、少数民族ではあるが、ごく普通の一般人という扱いのようだ。
ただ、やはり偏見はある。
というか事実として、獣人の中には弱肉強食が当然であり、力さえあれば何をしてもいいという価値観が部族単位で根付いている場合があるらしい。
それは主に肉食獣型の獣人種族で、暴力沙汰をよく起こすという。
また、カラス型の獣人などは、貴金属に強い執着を持ち、金銭トラブルや窃盗事件を起こす事例が絶えない……とも。
そんな具合に種族としての本能とも言える特性が価値観の大きな違いを生み、人間達との軋轢を生じさせる原因になっているのは、厳然とした事実のようだ。
つまりその種族と言うだけで嫌われるのにも、それなりの理由はあるということらしい。
しかしミミは、大人しい草食動物型の獣人だ。
ちなみに草食動物型とは言っても、基本は人間なので草しか食べられないということはない。
要するに殆ど人間と変わらず、ちょっと身体能力が高くて、繁殖能力が強い程度の差しかないという。
いずれにしても、悪し様に言われるような謂われの無い種族だ。
まあ、兎は性欲が強いと言われているし、それを理由に偏見の目で見られることはあるのかもしれないが、「獣人」だと一纏めにされて「汚らわしい」とか言われるのはおかしい。
当のミミ本人は、こういうことが初めてではないのだろうけど、相手が貴族令嬢だということで、どう反応して良いのか分からない様子だった。
ならば代わりに、俺が対応すべきだろう。
というか、差別思想に凝り固まったクソガキがいるのなら、わからせてその性根を正してあげるのが大人の役割だろう。
……今は俺も少女だが。
「あなた達ですか、我々を侮辱したのは?
名乗りなさい。
そして謝罪を」
「な、なんですか!?
私がラントール伯爵家の長女、セリエルと知っての無礼ですの!?」
伯爵家……うちの子爵家よりも家格が上だな……。
だが──。
「私はタカミ子爵家当主のエルネスタですが、どちらが無礼なのでしょうね?」
「と、当主!?」
「ちょっと……マズイのでは……」
ドリル娘改めセリエル達は、明らかに動揺していた。
そりゃね、いくら家格が上でも、その貴族家に所属しているだけの娘よりは、貴族家の当主の方が地位は高いからね。
俺は多額の納税をするとか、国に多大な貢献しているもの。
ただの扶養家族とは格が違うのだよ!
まあ、もっと上の侯爵家や公爵家の人間なら、子爵家当主よりも強い権力を持っている場合があるのかもしれないけど、1個上の伯爵家程度なら当主同士ですらもそれほど大きな力の差は無いだろう。
どちらかと言えば財力の差の方が物を言うのかもしれないが、そちらでもたぶん俺の方が上だろうから、遠慮無く攻めていくよ。
「で、謝罪は?」
「ぐ……ぐぬぬ……!」
俺の謝罪要求を受けて、セリエルは悔しそうに顔を赤く染める。
「何故この伯爵家の私が、子爵家ごときに謝らなければなりませんの……!?
それに当主とは言っても、どうせお金で買ったものでしょう?
そんな成り上がりと、200年続く由緒正しき我が伯爵家を比べようとは、おこがましくてよ!」
おっと、家格の差でゴリ押す気か。
でも確かにセリエルの言うこと、一理ある。
しかし──、
「仮に私の地位が買った物だとしても、それを認めたのは国ですよ?
それを無視するということは、尊き御方を蔑ろにするということになるのでは?」
ここではあえて王族とは言わない。
下手にそれを利用するような発言をすると、不敬だと相手に攻撃材料を与えかねないからな。
でも、国の取り決めたことに逆らうことは、それを認可した王の権威にも逆らうということになる。
それでいいのか?……と、俺はセリエルに問うている。
「くっ……!」
セリエルは反論に詰まった。
伯爵家の当主である父親に泣きつけば話は別だが、現状では彼女が俺に勝てる要素は無いんじゃないかなぁ……。
だけどその時──、
「なんですか、この騒ぎは?」
知らない声が聞こえてきた。
それを効いてセリエルは、
「お姉様!」
と、喜色の混じった声を上げる。
援軍が──おそらくはより上位の存在が現れたということかな?
セリエルは伯爵家の長女だと言っていたから、「お姉様」とは姉妹という意味では無いのだろう。
つまり姉のように慕う存在……他家の貴族令嬢であることは間違いないな。
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