エピローグ・星の海へ
それからのことを、私が語ろう。
カトリ教国は聖女ミラを中心に、タカミ公爵領から派遣された人員によって、改革が薦められ、後に共和国として生まれ変わった。
ただ、神の使途によってもたらされた言葉を国是とし、宗教国家としての側面は消えなかった。
それでも、以前のように他国へ思想を押し付けることもなく、各国との協調路線を取って、平和的に繁栄を続けた。
一方、ダーラグ王国は、400年後に来る巨大隕石に対抗する為に、私達が国の主導権を奪い、宇宙開発へと力を入れることになる。
ただ、一国だけでは力は足りず、カトリ共和国や魔王国のみならず他の大陸にまで足を伸ばして、新たな国々とも協力体制を築いた。
その道程は決して平坦では無く、大変なこともたくさんあったけれど、この星が一丸となって、困難に立ち向かうことができるようになった。
その結果、世界中に天文台が作られ、迫りくる巨大隕石がこの星に到達する前に、その位置を特定できるようにする為の監視体制が構築されたのだ。
宇宙戦艦という隕石を破壊する手段はあるが、その位置を事前に察知できなければ、対応することもできないのだから──。
この人類の技術の粋を結集して作った天文台の設置で、この星は隕石に対抗する為の猶予を得られることになったのだ。
ただ、それでも巨大隕石の脅威を排除する為には、一人の人間の寿命だけでは、時間が足りなかったと言える。
私達は体内にあるナノマシンの影響か、普通の人間よりも寿命は長くなっていたが、それでも健康な状態を維持するのは250年が限界だった。
女神サレナが予言した、400年後にはとても届かない。
だからエルネスタは、自身の寿命が残り少ないと悟った時、自らを「変換」し、自身の人格と記憶を引き継いだ戦闘用女性型ロボットを作ることにした。
そしてアンシーは、エルネスタと運命を共にすることを望んだ。
ええ私は、私達は、エルネスタとアンシーの全てを引き継いで生まれた2人の融合体であり、かつ娘のような存在──エルシーです。
母達から使命を引き継いだ私は、着々と準備を整えつつ、その日が来るのを待った。
そしてついに巨大な隕石の存在を確認した時、私は長い年月をかけて改良した宇宙戦艦に乗り込み、宇宙へと飛び立ったのだ。
だが、対峙した隕石は、あまりにも巨大だった。
惑星とさえ言えるほどに。
それは宇宙戦艦の主砲は勿論、最大の威力を持つ艦首波動砲を用いてさえも、その破壊には至らなかった。
私は最終手段として、宇宙戦艦の全エネルギーを増幅して暴走させ、隕石とともに自沈させることにした。
その試みは成功した。
その代わりに、私は宇宙空間に投げ出され、帰還が困難になったが。
最早、どの方向に母星があるのか、分からない。
完全に自分が何処にいるのか、見失ってしまった。
……まあいい。
母星には、ナノマシンを駆使して生み出した、エルネスタと妻達の子──その子孫達がいる。
後のことは、みんなに任せておけば、問題は無いだろう。
私はこのまま宇宙空間を彷徨い、いずれは別の惑星に辿り着くか、このまま朽ち果てるだろう。
だが、宇宙空間を彷徨うのは、エルネスタが転生する前に経験したことだし、これで2度目だ。
あの時と比べれば、私は、私達は、愛しい人と一心同体だ。
だから寂しくはない。
それに死んだら神の一員として向かい入れてくれる……というようなことを、女神サレナが言っていた。
だとしたら、私の終わりはまだまだ先──きっと永遠に近いほど遠い。
それと比べれば、宇宙を彷徨う程度の時間は、きっと誤差だと感じられるほど短くなるだろう。
ならばこの宇宙の旅を、楽しもうじゃないか。
暇を持て余したら、考えるのをやめればいいだけだ。
私は暗い闇の中、漂っていく。
だけど心躍る光景じゃないか。
小さく輝く星々の中に、いくつもの世界がある。
いつか私が辿り着くかもしれない世界が、一体どんなところなのか──。
そんなことを想像しながら、私は揺蕩うのだ。
~ 完 ~
ちょっとダイジェストっぽいけど、これで完結です。今まで読んでいただき、ありがとうございました。
なお、今回の内容を詳細に書くと、数十話くらい政治の話とかがダラダラと続きそうだったのと、キャラの死別とか重い話も増えそうだったので、その辺はいっそバッサリと切ってコンパクトにまとめました。今回書かなかった部分は、読者様の想像に任せたいと思います。
今後は新作の方をよろしくお願いします。
『その者、神にハイシンす。~猫耳な男の娘にされた俺の冒険記~』
https://book1.adouzi.eu.org/n0046ll/
読んでいただければ幸いです。




