最後の聖人
俺とアンシーは、カトリ教国の聖地へと足を踏み入れた。
ここには教皇など、教国の上層部の人間がいるはずだ。
「入り口は坑道のようなのに、中はかなり広いですね」
幅は30m、高さは50mくらいあるかな?
それがかなり奥まで続いているのだから、人力で掘ったものだとは思えんな。
いや、巨人とかを使えばあるいは……だが、おそらく元々は、天然の洞窟だったのだろう。
ただ、中が薄っすらと明るいのは、人為的な魔法照明かな?
おそらく先に入った、教国の者達によるものだと思う。
ん? 壁際に大量の箱が積みあがっているな?
もしかして……。
「アンシー、あれは……」
「銃器や爆薬のようですね」
やっぱりそうか。
聖女ミラが解明した銃器等の製造方法を用いて、ここで大量生産していたってことかな?
他にも兵器工場があるようなら、後で潰しておいた方がよさそうだな。
勿論ここも、ことが終わったら全部吹き飛ばそう。
でもその前に、片づけなければならないことがある。
まずは──、
「お嬢様、お下がりください。
ここは私が……!」
奥に誰かいる。
全身を鎧で包んだ騎士風の者が、1人だけ立っていた。
……足止め要員か?
「本気を出せば、一瞬で片づけられますが、その場合は天井や壁面が崩れる恐れがあります。
少々お時間いただきます」
と、アンシー。
まあ、閉鎖空間でビームとかは、危険だもんな……。
しかも壁際に積んである爆薬に、引火する可能性もあるし。
まあアンシーなら、近接戦闘でも制圧できるだろう。
一方、相手は──、
「我が名は聖人ザンヂ。
この先は通さん。
それ以上進むのなら、死を覚悟せよ」
歩み寄るアンシーに対して、そう名乗った。
兜の中から聞こえてきたその声は、若い男のものであるようだ。
というか、まだ聖人が残っていたのか。
その辺はミラに、詳しく聞いておけば良かったなぁ。
お、アンシーが仕掛ける。
彼女なら、手刀で鎧を引き裂けるだろう。
事実アンシーの手刀は、ザンヂを斬り裂いた……かのように見えた。
しかしザンヂは、攻撃を受けてはいないようだ。
彼自身は動いたようには見えなかったが、紙一重で躱したってことか。
だけどアンシーは攻撃を繰り返す。
目にもとまらぬ速度で、数十、数百と繰り返すが、ザンヂはほとんど動かぬまま躱し続ける。
こいつ……達人だ……!!
「数に頼るは、自信の無さの表れ。
極めたる技あれば、一振りで事足りる」
その刹那、ザンヂが振り上げた剣が、アンシーの胸を斬り裂いた。
彼女が回避動作をまったく取ることができないほど、神速の一撃だ。
「ア、アンシーっ!?」
俺は一瞬動揺するが、斬った本人のザンヂが訝し気な顔をしているのを見て、冷静さを取り戻した。
「出血もしないとは、面妖な……」
「ご安心ください、お嬢様」
おお、アンシーが受けたダメージは、ナノマシンの力によって物凄い速さで回復していく。
いや、でもアンシーのサイボーグボディの耐久力を考えると、ダメージを受けていること自体がおかしいのだが!?
恐るべき剣の達人だ。
おそらく人間としては、この世界で最強の部類だろう。
仮に俺が相手をしていたら、死んでいた可能性があるな……。
さすがに俺も、即死するようなダメージを受けたら、回復できないからな……。
まあそうならないように、遠距離から攻撃するが。
一方アンシーなら、万が一のことがあっても、俺の能力でいくらでも復活させることはできる。
だがそれでも彼女には、できるだけ傷ついて欲しくはなかった。
そもそも、復活させるような事態になった場合、アンシーが依然と同一の人格と記憶を保持しているという保証も無いのだ。
最初の1回だけが、奇跡的に成功していたという可能性もあり得るのだから──。
「……お嬢様が心配されるので、本気を出すとしましょう。
美しくないので、あまりやりたくはないのですが……」
アンシーの本気とな?
しかも美しくないとは一体……?
そんなことを思っていると、アンシーの身体が光り始める。
そして着ていたメイド服は分解され、魔法少女の変身シーンのように裸──おいおい、俺のアンシーの肌は他の男に見せたら駄目ーっっっ!!
……ん? いや……アンシーの全身が、メタリックな光沢を放ってるな……。
これは一見、全身に装甲を纏っているかのように見えるが、実際には彼女が人間としての擬態をやめて、サイボーグとしての本当の姿を現したということか?
それはまさに俺が、前世で子供の頃に慣れ親しんだ、特撮ヒーローのような姿だった。
顔は仮面のようなもので覆われており、頭髪だけはそのまま残っているが、それすらも赤く変色している。
まったく別人といってもいい姿だ。
その姿を、アンシー自身は「美しくない」と言っていたが……、
「大丈夫です、アンシー!
凄く格好いいですよ!!」
俺の癖にはかなり刺さった。
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今週からヒヤシンスの水耕栽培を始めました。2日程度で根が出て、今は2cmくらいまで伸びてます。




