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戒律のひな型

 私は聖女ミラ。


 大神殿が消滅しました。

 私の解析能力でも、どのような理屈で大神殿が消滅したのか分かりません。

 この攻撃を仕掛けてきたとのはダーラグ王国のタカミ公爵だと思われますが、彼女の能力の神髄は、強大無比な兵器郡などではなく、この全てを消し去る力なのでは……!?


 ともかく私達大神殿にいた者達は、足場を失って落下中です。

 このままでは地面に激突して、死んでしまうのでしょうねぇ……。

 そのことは分かり切っているのですが、私にはどうしようもありません。

 空を飛ぶことはできませんので……。


「あれは……!?」


 落下しつつ私は、上空に巨大な物体が出現していることに気づきました。

 それは直径数kmはある円形の物体で、それほど巨大な物体が空に浮いています。


 しかも私の解析能力では、半分も理解できません。

 逆に言えば、半分は理解できる……。

 おそらくあれは、人間の技術でも再現可能なのです。


 だけどそれはあまりにも巨大で、あまりにも高度で、今の我々の技術では再現不可能──。

 一体何百年……いえ、何千年先の先進技術があれば、再現できるのでしょう……。

 そんなものが、今この場にあるのは絶対におかしいのです。

 たとえタカミ公爵の能力が、どれだけ高かったとしても──。


 これは……神の介在が無ければ、有り得ません。

 まさに神の奇跡……!!


「……!?」


 私はいつまでたっても、地上に到達しないことに気づきました。

 私の身体(からだ)は、何故か空中に浮いていたのです。

 いえ……私だけではなく、大神殿にいた全員が……!!

 これなら死者は、1人も出ないでしょう。


 これはタカミ公爵がやったのですか?

 彼女が本気なら、この聖都ごと全住民を消滅させることも可能だったでしょうに……。

 これは……完敗ですね……。

 私は無意識の内に、天に向かって祈っていました。




 大神殿を「変換」して、空中要塞を作ってみた。

 未来技術の(すい)を結集した無敵要塞だ。

 真下から見ると銀色の円盤だが、横から見ると某天空の城のような形状をしている。

 天辺に木は生えていないけどな。


 なお、大神殿にいた者達は、足場を失って空中に投げ出されたが、それはアンシーの反重力を制御する能力で落下スピードを緩やかにしてもらい、全員無事に地上へと着地している。


 まあ、大神殿にいるのがカトリ教国の首脳陣や軍人だけならば、助けないで皆殺しでも良かったのだが、たぶんメイドや料理人のような、一般人に近い立場の者もかなりいたはずなので、その人達を巻き込まないようにする為にも、取りあえずは全員助けることにしたのだ。


 で、未来技術てんこ盛りで空に浮かぶ空中要塞の威容は、教国の者達に神の存在を実感させるには充分だったはずだ。

 今ならば俺の言葉にも、素直に耳を貸すだろう。


『再び傾注せよ!

 いましがた見せたのは、警告に過ぎない。

 汝らが考えを改めなければ、空にそびえる我が城が天罰を落とすぞ!!』


 ふむ……町の住人達がひれ伏しているのが見える。

 これなら効果はあるな。


『理解できたのならば、我が言葉を心に刻め!


 亜人や魔族などの多種族を、理由も無く下に見て(しいた)げてはならぬ。

 彼らもまた、汝らと同じ神の被造物である。


 何かを行う時、神の名を利用して正当化してはならぬ。

 汝らが行うことは、全て自身の責任で行うべし。


 無暗に命を奪ってはならぬ。

 自らの身や隣人や財産を守る為に、獣などを食料とする為に、作物を荒らす害虫や害獣を駆除する為に──それらの理由も無く、命を奪うなかれ。

 戦争など言語道断である。


 他者から奪うことなかれ。

 略奪が横行すれば、生産者は活動の意義を失い、文明は発展しなくなる。


 ──以上。

 ただしこれらは、絶対順守しなければならないものではない。

 何故ならば、この世に絶対は無く、状況次第で正しさは変わるからだ。


 故に人は、何が正しいのかを、常に考え続けなければならぬ。


 物事の良し悪しを汝らが判断し、法を定めてそれに従うが良かろう。

 人が生きる上で、神を妄信して過度に頼ることを、我は良しとせぬ。

 

 ただし我の言葉を拡大解釈し、大きく逸脱した行為が目立つようになれば、我は再びこの地に現れ、制裁を科すであろう』


 ……よし、これだけ言い聞かせればいいかな?

 これで教国の人々は、当面の間は大人しくなるだろう。

 まあ、支配者層が変わらなければ、この教国は変わらないけど、重要人物は大神殿を消したことで一網打尽だし、捕らえてから処分を考えよう。


 ……って、その割には、大神殿の跡地にいる人間の数が少ないような……?


「アンシーは要塞の制御をお願いします。

 私は教国の者と接触を試みてみます」


「はい、お気を付けください」


 俺は鎧を纏ったまま、大神殿の跡地へと降り立った。

 そんな俺の姿を見て、その場にいた人々は更に(かしこ)まったように平伏する。


「頭を上げなさい。

 この場で最も地位の高い者は誰ですか?」


「私です……」


 俺の問いかけに対して答えたのは、12歳前後の真っ白い髪をした少女だった。

 過去の自分にブーメランが返ってくるけど、こんな子供が高い身分なのか?


「あなたは?」


「私は聖女ミラと申します」


 ……こいつが聖女か。

 俺の兵器を模倣する能力を持つという……。

 その所為で沢山の犠牲者を出しているので扱いは難しいけど、どのように対応すべきか……。

 子供が相手だとやりにくいな……。


 って、この場に教皇とかはいないのか?

 地元では雪が降り始めました。寒い……。

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