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少女公爵の出征

「そ……それはどうなのだろうな……?」


 国王はカトリ教国を叩き潰すことに対して、あまり乗り気ではないようだった。


「私の能力に不安がおありで?」


 俺とアンシーだけでも、教国を焦土に変えることができるぞ。

 いや、そこまではやらないけど……。


「そ、それは疑ってはいないが……。

 むしろ報復は必要だ。

 だが、そなたばかりを重用しては、他の貴族達が(こころよ)く思わぬだろう。

 せめて各領から兵を(つの)った方が、良いのではないか?」


 確かに戦争なんて、貴族が武勲を立てて陞爵(しょうしゃく)するよい機会ではあるからな。

 だが、この国ではノルマ以上に納税していれば地位は上がるから、そこまで武勲にこだわる必要は無い。

 それに──。


「それでは時間がかかりますし、各地に教国の工作員が入り込んでいる可能性がある今、それは得策ではないでしょう。

 各領主は、領地の安定に全力を傾けるべきです。

 それに……辺境伯領の砦を破った兵器と戦うのならば、数万の死者は覚悟しなければなりません」


「それは……そなたの兵器を、我が軍に配備して対抗するのでは駄目なのか?

 そなたの兵器ならば、教国を圧倒することも容易(たやす)かろう?」


 それはそうなのだが……。


「ええ、勝てます。

 しかし私の兵器を多くの者に見せれば、教国がそうしたように模倣する者が現れる可能性が高まります。

 私の兵器は悪用できないように制限をかけていますが、模倣した物には制限がありませんし、それを使えば子供でも王侯貴族を暗殺することが可能という、危険な情勢を生むことになります。

 そうなれば教国よりも手に負えない敵を、国内に抱え込む事になりかねません」


「う……うむ。

 そうか……。

 しかし……だな、落としどころはどうする?

 余はむしろ、そなたのやりすぎを心配しておる。

 教国が崩壊したら、難民が我が国に押しかけて大変なことになるのではないか……?」


 確かにその可能性はあるな。

 大量の難民が入り込んだら、数人の工作員が入り込むよりも大きな問題になる可能性もあるだろう。

 その対処の為には、莫大な予算が必要になるはずだし、それでも問題が解決するという保証は無い。

 おそらく治安悪化とかで、多くの人間が死ぬだろうな……。


 だが、考えはある。


「それについてですが、教国から排除するのは上層部だけと考えております。

 その後は私に恭順を示した元教国人を、教国相手の外交官として使えないかと思い教育しいたので、彼らに統治を委任すれば良いかと」


 教国のことは教国人で。

 それが一番軋轢が少なくて済むはずだ。


「……それは、そなたが教国の支配者になると聞こえるが……」


 まあ、それを疑うよな?

 だが、冗談じゃない!

 面倒くせぇ!

 狭い公爵領だけでも充分だよ。

 だから可能な限り教国のことは、他人に任せる。


「まあ待て、父上。

 エルネスタにはそんな野心は無い。

 あったら、今頃この国も無事ではないでしょう」


 ミーティアさん、フォローのように見えて、国王を煽るような発言はやめてくれません?

 顔が面白がっているぞ……。


「私は教国の統治については、あくまで橋渡しの立場となるつもりです。

 すべては陛下の意向に従います」


「う……うむ……。

 そうか……」


 国王は納得していない表情をしていたが、無理やり納得して頷いた。

 ぶっちゃけこの人、俺に勝てる物を何も持っていないからなぁ……。

 俺が強硬姿勢になれば止められないことは、分かっているのだろう。


 まあ、教国の民間人から不必要に搾取するとかなら別だが、ある程度は王国の意向に沿って統治するというのは本気だぞ。

 俺が支配者になっても、別に得なんて無いもん。

 現状でも、その気になればあらゆることがどうとでもなる。


 でもまあ……可能なら、教国を民主主義国家に移行させたいとは思っている。

 だが、絶対君主制である王国の隣にそんな国が出来れば、王侯貴族達は快く思わないだろう。

 王国内でも民主主義を求める声が上がり始めれば、それは貴族達の立場を脅かすからな……。

 難しいものだ。


「しかし、そう上手くいくのか?

 教国は神の教えとやらによって、完全に民の思想を統一していると聞く。

 頭を()げ替えるだけで、上手く統治できるのか?」


 それが問題ではある。

 宗教国家なんて、同じ思想の奴が大多数を占めるのだから、トップを挿げ替えても、また同じようなのが台頭してくることもあり得る。

 結果として、何も変わらない教国が残る……かもしれない。


 だから、教国人の宗教観をぶっ壊す必要がある訳だが……。

 それについては、俺の傘下に入った教国人の中には、俺のことを聖女だとか天使だとか呼んでいるので、教国人にもちょっと人知を超えた光景を見せたら、宗旨替えしてくれる者が続出してくれるんじゃないかな?

 そう目論んでいる。


 つまり、ちょっと自重をやめて、全力で未来兵器を降臨させるぞ。


「私に策があります。

 どうかお任せください」


「そ……そこまで言うのなら、好きにせよ」


 という訳で、国王の許可も得られたので、教国へ出征するぜ!

 最近は『瑠璃の宝石』の影響で、石や化石の展示がメインの博物館に足を運んでいます。

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