戦 禍
俺はオスプレイに乗り、領都への帰路についた……のだが、一応カトリ教国との国境に異変が無いかを確かめる為、遠回りして飛んでいた。
すると──、
「ちょっ、おいおいおいっ!?」
教国に面しているマルドー辺境伯領の砦が、激しく崩壊している。
魔族領みたいに、巨獣が突っ込んだのか!?
「周囲に敵兵の姿は無いな……。
よし!」
俺は慌ててオスプレイを着陸させて、砦の状態を確認することにした。
砦の外壁は、大きく崩壊している。
しかし巨獣のような、巨大な物体が衝突したような感じでは無かった。
どう見ても爆発による破壊だ。
ただ、魔法によって爆発を起こすことはできるが、これは砦の外壁を一撃で破壊している。
だけど魔法でそんなことをできる者を、俺は知らない。
いや……竜のブレス攻撃ならあるいは……?
しかし足跡などの、巨大な生物が周囲にいた痕跡は無いな……。
空を飛んでいた者の仕業である可能性もあるが、どちらかというと俺が使う爆弾の効果に似ている。
「それよりも、生存者は……!?」
教国側から崩壊した外壁を乗り越えると、遺体がいくつも転がっていた。
しかもその全てが、王国軍の者達ばかりだ。
その全てが腐敗し、中には獣に食い荒らされているものもあるから、数日は経過している。
つまり俺が魔族領に向かった時には、もう手遅れだったってことか……。
この世界の伝達情報は遅いから、もしも俺の所へ救援を求めたとしても、それが俺に伝わるまでには本来なら馬でも2~3週間ほどかかるだろう。
転移魔法という手段が無ければ、魔族領も手遅れになっていたかもしれない。
ともかく俺が魔族領よりもここを優先したとしても、この惨状は回避できなかったということなのだが──、
「銃創だ……!!」
遺体には、銃による攻撃の痕跡があった。
俺が作った銃は、基本的には人に向かって撃つことはできない。
勿論例外はあるが、その例外は大抵俺が使う時に限られる。
だからこれは、俺の銃による攻撃ではない。
誰かが銃を──そして爆弾を再現したのか!?
俺という手本があったにしても、早すぎる。
人間の考えることなんてみんなそんなに変わらないから、いつかは俺とは無関係に発明されるとは思っていたが……。
何者かが俺が作った物を模倣したとしたら、この惨状の遠因は俺か……!
勿論、この人達を直接殺したのは、教国の者達だ。
それに戦争になれば、武器の強弱と関係なくどのみち人は死ぬ。
だから俺とは無関係だ……と、切って捨てるには、重すぎる結果だ。
「……私が……俺が招いた結果か……!」
結局、覚悟することができず、教国を野放しにしていた俺にも責任がある。
いつでも潰せるのに、多くの人を巻き込むことを恐れて潰さなかった俺の……。
「ちっ、手加減はもうやめだ……!!」
ここからは少し本気で対応することにしよう。
だが、まずは優先順位を決めなければな……。
辺境伯は無事なのか?
コリンナ先輩は2年前に他領へ嫁入りしたから巻き込まれていないはずだが、見知った人間が死んでいるのはあまり見たくない。
それでも確認は必要だ。
遺体の1つ1つを確認していくが……、
「……ふぅ、辺境伯らしき遺体は無し……か」
おそらく辺境伯は生きている。
ならば辺境伯は、残党を率いて撤退戦をしている最中かな?
それを追う教国をどうにかしなければ、今度こそ手遅れになる。
俺が直接追撃してもいいが、この死屍累々の惨状を放置するのもな……。
まずはドローンを飛ばして、教国軍の位置を確認……だな。
一応、標的に突っ込むタイプの攻撃用ドローンだが、カメラなども搭載しているので、偵察任務も可能だ。
なお、ドローンは俺の左腕と無線でつながっていて、細かく誘導することもできるが、教国軍に追いつくまでは自動操縦で行こう。
足跡などの痕跡は沢山残っているから、追うこと自体はそんなに難しくない。
そしてドローンが追跡している間、俺は遺体を「変換」することで埋葬の代わりとする。
このまま腐らせて獣の餌にするのは忍びないが、埋めたり焼いたりして埋葬する暇は無いのでこうするしか無い。
でも、装備だけは残して、後ほど遺品として回収することにしよう。
それに、ただ葬る為だけに「変換」するのではない。
遺体からは、とあるものを作りだすのだ。
「お前達自身で、無念を晴らしたいよな……」
作った物は、取りあえず「空間収納」に入れて、まずは量産に専念だ。
──暫くして、ドローンが教国軍に追いついた。
辺境伯は……少し離れた場所を移動している。
殿を務める為なのか、撤退する軍の最後尾にいたからすぐに分かった。
……一軍の将がそれでいいのか?
彼に何かあったら、指揮系統が混乱するだろうに。
まあ、もう逃げる以外の行動はとれないから、指揮の必要も無いということか。
だけど今後の領地運営とかあるんだから、どうかご自愛くださいよ。
まあ、教国軍をどうにかしないと、どうしようもないか……。
えーと……教国軍がいるのは、20kmほど先……。
それなら射程範囲だな。
右腕を発射装置へと変形させて、いましがた作って「空間収納」にストックしていた対戦車ミサイルを装填する。
それからドローンから送られてきた位置情報に合わせて、照準をセット。
あとは相手が壊滅するか、ミサイルのストックが無くなるまで撃ちまくるだけだ。
まあ、100機以上作ったので、足りないということは無いと思うが。
「さあ、この砦の敵討ちといこうか!」
俺は右腕に装填した対戦車ミサイルを、空へと向けて次々と発射した。
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