王都の危機?
私はミーティア。
私の元婚約者候補のランラックが、突然王位を簒奪すると宣言をしたんだが?
「貴様……自分が何を言ったのか分かっているのか?
冗談では済まされないぞ」
王位を脅かしかねないランラックの発言は、私が通報したら彼の一族郎党が処刑されてもおかしくない大罪だ。
つまり反逆罪──。
まあ、実際には私の証言だけで、ランラックのキンシーラ侯爵家全体を処罰することは難しいだろうが、少なくともランラックは厳しい取り調べを受けるだろうし、その拷問じみた取り調べの過程で命を落とすこともあり得る。
仮に生き延びても、1度でも反逆者の汚名を着せられた者が、貴族社会で尊重されることはありえない。
「貴様は、もう終わりだぞ、ランラック」
「さて、それはどうでしょう?
あなたの訴えを聞き届ける者がいなければ、この身を罰せられることはあれませんよ?」
こいつ……既に勝ちを確信している?
何らかの策が、もう動き出しているということか。
あるいは私を口封じする……というのは、王位の正当性を得る為に、王族であった私との婚姻を望んでいるようだし、それはないかな……。
なんだかんだで血筋が馬鹿にできない──それが貴族社会だからね。
取りあえず、私の身は今すぐどうこうされることは無い……として、ランラックの計画は……まあ、大丈夫か。
「ふむ……そういうことなら、陛下に確認をとってみようか。
丁度、謁見をするところだ」
「は……?
王なら今頃はもう……」
ランラックが困惑した表情を浮かべるが、私の考えでは確実に、彼の目論見通りには事が進んでいないはずだ。
それは私の護衛であるはずのシズヨニちゃんが、この場にいないことに必ず意味があるからだ。
私は控室を出て、謁見の間に向かう。
「お、おい、勝手に動くな!!」
ランラックは私の後を追ってくるが、直接手を出してはこなかった。
私が学園時代、戦闘クラスでトップの実力があったことは、こいつも知っているからな。
ランラック1人だけでは、私をどうこうすることは難しいだろう。
……だが、それにも関わらず、1人だけで私の前に現れたということは、万が一の時には私を制圧する手段が何かあるのか?
私は振り返り、ランラックの方を見る。
「貴様……!」
ランラックが拳銃を構えていた。
我が領から密輸した物なら問題は無い。
エルネスタが作った物は、悪用できないように設定されているから、私に対して危害を加えることはできないだろう。
しかしエルネスタは言っていた。
私が作り出したものは、今はまだ私にしか作ることはできないけれど、この世界の人々がその存在を認知したからには、いつか誰かが模倣するだろう──と。
銃はこの世界とは違う理で作られているから、簡単には再現できないし、再現できたとしても数百年は先の話かもしれない……。
だけどそれも遅いか早いかの差でしかなく、なんらかの偶然で再現に成功してしまうこともあり得る──とも。
そのように他者の手によって生み出されたものだとしたら、その銃には私に対する殺傷力がある。
「おい、それをどこで手に入れた……?」
「ふふふ……これは教国の聖女様が作り出したものらしいですよ。
かの聖女は、なんでも解析できるそうで……」
こいつ……教国との繋がりが……!?
いや、このタイミングで国王に反逆するのだから、当然か……。
だがそれよりも、聖女とやらの能力の方が危険だ。
もしもエルネスタの兵器をすべて再現できるのだとしたら、とんでもない脅威になるぞ……!
教国にはエルネスタと違って、兵器を無制限に使うことへの忌避感が無いからな。
下手をすれば世界が滅びる。
そしてこの銃の性能が確かな物だとすれば、私も安全ではいられない。
「……分かった。
私は従おう。
抵抗はしない」
「ふっ……懸命だよ、ミーティア。
まあ丁度いい。
私も刈り取られた王の首を、確認しに行こうと思っていたところです。
謁見の間まで一緒に行こうではないですか」
私が従ったことで気を良くしたランラックだが、実際には彼の立場が優位になった訳ではない。
なぜならば、彼の背後にシズヨニちゃんが忍び寄っていたからだ。
「ぱ」
直後、シズヨニちゃんに後頭部を殴られ、ランラック奇妙な悲鳴のような物を上げて倒れた。
「ありがとう。
よくやってくれた!
……して、他の連中も片づけてくれたのだろうか?」
私はシズヨニちゃんの頭を撫でながら問う。
彼女はちょっと鬱陶しそうにしながらも、
「ん……不穏な気配を出している連中がいたから、無力化してきた」
と、胸を張る。
後で分かったことだけど、この時シズヨニちゃんはランラックの仲間200人ほどを、たった1人で──しかもほとんど騒ぎを起こさずに、制圧していたらしい。
つまり一方的かつ一瞬で倒したということだ。
誰の指示を受けた訳でもなく、自主的にやってくれたのだから、護衛役としては実に有能だ。
そしておそらく彼女にとって、ランラックが1番脅威度が低かったから、最後まで後回しにしたのだろう。
だから私に多少危険が及んでも、咎めるつもりは無い。
「さて、国王へ報告に行こうか」
父上のところに行けば誰かいるだろうし、彼らから事のあらましを騎士団に伝えてもらい、無力化されたランラック達の捕縛はをお願いしよう。
それに反逆者たちは城内だけではなく、王都に潜んでいる可能性もあるから、警戒態勢を敷いてもらわなければな……。
これで最悪の事態は回避されるだろう。
しかしそうはならなかった。
ほどなくして、マルドー辺境伯領の砦が、カトリ教国軍によって突破されたとの一報が届いたからだ。
そういえば本作の総合評価が2500に達しました。ありがとうございます。




