自己解決
私はアンシー。
愛しきお嬢様のメイドです。
しかしそのお嬢様は、現在魔族領へと一人で出征しており、非常に寂しい限り。
ただ、私を領都アネストに残したお嬢様の御慧眼は、さすがでしたね……。
お嬢様が危惧していた通り、カトリ教国の手先と思われる、ワイバーンの群れがこの領都を襲いましたから……。
まあ、それは即片づけましたし、市街地への被害も、最小限で済みました。
人的被害も無かったはずです。
しかしその後、ワイバーンの親玉のような大物が現れました。
しかも、意外と手ごわいですね……。
高出力の陽電子砲を撃ち込んでも死なないどころか、音響攻撃による反撃までしてきましたし。
バリアの展開が遅れていたら、市街地への被害は勿論、死者も出ていたかもしれません。
とはいえ、相手も余力がそれほどある訳ではないようで、バリアのエネルギーをそのまま攻撃力に変換させてぶつけたら、逃げていきました。
だけど、逃がしませんよ!
私とお嬢様の時間を邪魔したことは、万死に値します!
……で、ワイバーンの親玉を、お嬢様直伝のイナズ●キックでトドメを刺して街へと戻ってくると……。
セリエル様と、何者かが戦っているのが見えます。
ふむ……見たところ、私が手助けするまでもありませんね。
上空で待機しましょう。
実際セリエル様は、私とお嬢様の戦闘訓練には真面目に参加しておりましたし、その成長は著しかったです。
彼女の実力は、我が領では4番手といったところでしょうか。
勿論、状況次第では3番手と入れ替わりますが、いずれにしても単純な人間同士の戦いでは、まず負けることは無いでしょう。
おや、相手が勝負に出ましたね。
その姿が12人に分裂して、一斉にセリエル様へと襲い掛かります。
あれは残像や幻術ではなく、全て実体のようですね。
おそらく地属性魔法で砂を生み出し、それで分身を形作っているのでしょう。
ちなみに私も、ナノマシンを駆使すれば同じことができますよ。
何であれ、あの分身は実体でであるだけに、無視するわけにはいけません。
常人にはあの12人の同時攻撃を、回避することは不可能でしょう。
ですが──、
「ぐはぁぁぁぁぁぁーっ!?」
セリエル様の全身から電流が迸り、相手を分身ごと飲み込みました。
電流によって貫かれた分身は崩れ落ち、本体の男も倒れ伏します。
「おーっほっほっほ!
その程度の攻撃、この私に通用すると思っているとは、随分と侮られたものですわね!」
……まあ、あの電流はバリアでもなければ、回避不能ですしねぇ……。
なにせセリエル様自身をも飲み込む形で、一定の範囲を電流が嵐のように荒れ狂うのですから。
そう、本来なら自爆技なんですよね、あれ……。
かつてセリエル様は、お嬢様より受けたテーザー銃による電気の刺激を大層気に入ったのですよね。
彼女のような性癖の人をドMというらしいです。
しかしお嬢様は、理由も無く女性を痛めつけるようなお方ではないので、セリエル様に対してテーザー銃を使うことは滅多にありませんでした。
まあ、それはそれで「放置プレイだ」と、彼女は喜んでいましたが、物足りないようでもありました。
だからですかねぇ……。
いつしかセリエル様は電撃魔法を習得し、自らに電流を流して愉しむようになったのです。
まあ、端的に言って、変態の所業ですがね……。
しかも繰り返し電流を受けている内に、耐性が付いてしまったセリエル様は、より強い電流を求めて電撃魔法に磨きをかけました。
その結果生まれたのが、あの自らを巻き込んでの無差別電撃攻撃です。
あれは防ぐことや耐えることはできても、回避することは私やお嬢様にもできません。
「あああ……素晴らしきかな、この身を流れる痺れるような刺激!
あなたもそう思いますわよね?」
恍惚とした表情で問うセリエル様ですが──、
「……相手はもう気絶しておりますよ。
もう電流を流すのを、おやめください。
その公爵夫人に相応しくない、だらしないお顔も」
「──っ!
アンシー様!?」
既に決着しているのに、電気の垂れ流しは感心しませんね。
絶縁処理の対策こそしていますが、それでも私の体内にある電子機器やナノマシンに影響を与える可能性がありますし……。
そもそも街の往来での変態行為は、ちょっとどうかと思いますよ……。
「……ですが、よくぞ領都に侵入した不埒者を、倒してくださいました。
あとでお仕置きですね」
「……ええ、喜んで!」
なんで満面の笑みになるんですかねぇ……。
今更ですが、お仕置きがご褒美になるって、おかしくありませんか?
遅くなりました。お盆は夜勤だったもので、執筆時間が足りず……。




