戦後処理と新たな襲撃
我が名はマグエアル。
魔王ゼアルの娘だ。
だが、魔王の娘という肩書はあっても、我自身の能力は大したことがない──と、思い知らされている今日この頃だ。
いや、我もそこそこ強いという自負はあるし、将来的に魔王の後継者となっても申し分のない実力を持っているとは思っている。
しかしだなぁ……。
今回攻めてきた教国の巨獣……あれは無理だ。
かつての我は、地竜にも勝てなかった。
今ならなんとかなるかもしれないが、そんな我でも地竜の上位にある真竜には勝てないだろう。
そしてその真竜でさえ、あの巨獣は無理だ。
その無理なものを、エルネスタ殿は倒してしまうんだものなぁ……。
前々から異常な戦闘力を持っていたが、今はもう次元が違う。
彼女1人で、国の一つや二つは簡単に滅ぼすことができるだろうと確信できるほどの実力だ。
しかもまだ、本気を出していないように見える。
その気になれば、世界を亡ぼすこともできるのではないか……?
そんな危機感も覚えるが、幸いなことに彼女は、信頼できる人柄だ。
その能力を悪用することは、まず無いだろう。
だけど他の者達には、それが分からない。
彼女の能力を無駄に恐れ、排斥しようとする者もいるかもしれない……が、今回の彼女の戦いを直に見た者は、自ら敵に回るような真似はしないだろう。
見えている実力差が分からないほど、馬鹿な奴は魔族にはいないと信じたい。
ともあれ、これで反人間思想の勢力は、大人しくなるだろうな。
まあ、教国のこともあるし、防衛力の強化を訴える声は高まるかもしれないが、その防衛装備もエルネスタ殿に頼っている状況だしなぁ……。
無論、依存しすぎるのも危険だし、我々独自で力を得る試みは必要だが、力を求めすぎて暴走しないように気を付けなければならないだろう。
はあ……直接的な危機はひとまず去ったが、これから破壊された地域の復興など、やることが山積している。
むしろ今後こそが大変なのかもしれない。
「まずは……このエルネスタ殿が置いて行った物資の運搬だな。
クロムスタ、手伝ってくれ。」
「はい」
クロムスタの転移魔法を使えば、運ぶことは難しくないが、仕訳には時間がかかりそうだ。
さあ、いそがしくなるぞ。
「空襲警報発令ーっ!!」
「住民の避難を急いで!!」
私の名はセリエル。
エルネスタ・タカミ公爵の夫人として、日々の生活を送っております。
しかし今、私達の領都アネストは、数えきれないほどのワイバーンによる襲撃を受けていて……。
まったく……よりにもよって旦那様が留守の時に、襲撃してくるとは……。
いえ……カトリ教国に侵攻された魔族領を救う為、旦那様が出掛けているこのタイミングを狙っての襲撃……。
十中八九、教国の仕業ですわよね……。
取りあえずこの領の中枢ともいえる原子力空母には、対空装備もあるので危険は無いとして……。
問題は町の住民の安全ですわね……。
まあ、それもさほど心配はいらないのでしょうけど……。
「あ、アンシー様が出撃しましたわ!」
空を飛ぶメイドの姿が見えます。
……なんでメイドが空を飛ぶのか、それはちょっと理解できませんが、とにかく飛んでおりますわね……。
そしてアンシー様が両手の指先から光線を撃ち出す度に、ワイバーンが落下していきます。
それも1度に10匹とか、おびただしい数を撃墜しているので、すぐに片付くと思いますわ。
ただ、墜落したワイバーンによる建物の破壊は、避けられそうにありませんわね。
それでも人間の上には落ちないように、アンシー様が計算されているようなので、大きな問題はありません。
後々の再建は大変ですが……。
「きゃつ!?」
その時、凄まじい突風が吹き抜け、私は吹き飛ばされそうになりました。
小さな子供なら、本当に吹き飛ばされましてよ!?
それにワイバーンの落下によってできた瓦礫も飛ばされていましたし、それが人間に当たると命に関わりかねませんわね……。
「な、何事ですの……!?」
今の突風は、上空の方から吹き下ろされてきたような……。
私が空を見上げると、そこには巨大なワイバーン……なのかしら?
普通のワイバーンが10m程度の翼長なのに対して、それは200mほどもあるような……。
あけだけ巨大な翼で羽ばたけば、暴風じみた風が巻き起こるのも当然ですわね。
実際、まだ町の上空に到達していないのに、先ほどの突風はすさまじいものでしたし……。
あれが町の上空で飛び回られたら、町が壊滅してしまいますわよ!?
あ……アンシー様が、巨大ワイバーンの方へ……。
でも、巨大ワイバーンからかなり離れた空中で止まりましたわ?
え……?
掌を重ねるような形で突き出した両腕が変化して、巨大な砲身に……。
そして直後、その砲身から巨大ワイバーンに向けて、眩い光の奔流が撃ちだされました。
なっ、なんですの~っっ!?
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