拡大する戦い
爆発の衝撃が落ち着いた頃──。
俺は先程の場所から、かなり離れた場所にふき飛ばされていた。
我ながら凄まじい破壊力……。
その中心にいたアングリーは倒せたと思うが、確認は必要だな。
上空から見渡す限りの大地を見てみるが、異常は見当たらない。
仮にアングリーの遺体が残っていた場合、爆風で数km以上吹っ飛んでいる可能性もあるが……。
さすがにその範囲までは、確認できないな……。
後は魔族に任せるか。
「おーい、エルネスタ殿ーっ!」
ん? 魔族の王女マグエアルと、従者のクロムスタが駆け寄ってくるのが見えた。
戦闘が終わったと判断して、城の方から出てきたんだな。
俺は地面へと着地し、鎧を解除する。
「お久しぶりです、マグエアル様」
「ああ、久しぶりだな。
この度の協力に、感謝する。
父は立場があるのですぐには無理だが、改めて謝礼の場を設けたい」
「いえ、私としても、お得意様がいなくなっては困るので」
マジであのままアングリーの侵攻を許していたら、この国は消えていたかもしれないからな。
そんなことになったら、交易をしている我が領としても、経済的損失が大きい。
勿論、知人がいなくなるというのも嫌なものだ。
それが未然に防ぐことができたのなら、良かったのだが……。
「あの……敵を完全に倒しきれたのか、その確認がとれていないので、今後も警戒してもらえたら……と」
「ああ、それは当然だな」
「それと食料などの支援物資も持ってきました。
20tほど。
被災民の為にお役立てください」
「おお、それは助かる!
ありがとう!」
本当に嬉しそうに礼を言うマグエアル。
余程、切羽詰まっていたのだろう。
実際、地神に農地がかなり破壊されてしまったようだし、今後も食料が不足するようなら、格安のツケ払いで提供した方が良さそうだ。
「お……おい、あれ……」
その時、俺の後方で、岩の巨人が──ただし上半身のみが地面からせりあがってきた。
その額からは、アングリーの上半身が生えている。
……まだ生きているのか!
でも、そのまま逃げられなくて良かった。
こいつの能力は、簡単に国を亡ぼせるくらいにヤバいからな……。
……なんか俺にブーメランが、刺さっているような気もするが。
それはさておきアングリーは、巨大な拳を振り上げ、俺達へと振り下ろそうとしていた。
だが、それは俺に通用しないと、そろそろ学習……は、面倒臭くなるからしなくてもいいが……。
ともかく、その岩のボディは、「変換」の材料にしかならない。
適当な鎧にでも「変換」して、後で鉄材として利用しようかな。
そんな訳で、岩の巨人は瞬時に消え失せ、支えを失ったアングリーの身体は、落下して地面へと叩きつけられる。
俺はすぐさまアングリーのところへ駆けつけるが──、
「こ……これは……!?」
「お前は……あの鎧の中身か。
ちっ、面倒くせぇ……」
アングリーの身体は、腰から下が消失し、更に両腕も無い。
わ~、四肢欠損とか親近感~……じゃなくて。
彼は力を使い果たしたのか、傷が再生する気配も無いし、地面に潜ることももうできないようだ。
この状態は既に、生命すらも残り少ないように見える。
さっきの攻撃は、最後の力を振り絞ったものだったのだろう。
「これじゃあ、もう戦えねぇ。
もっと戦って、もっと殺して、遊びたかったなぁ……」
何言ってるんだ、こいつ……。
戦闘狂なのは分かっていたが、そもそもクズじゃねぇか。
戦いに多くの人を巻き込んで……人の命をなんだと思っているんだ。
こいつは確実にここで倒しておくべき存在だ。
俺は右腕を砲身に変化させ、アングリーの眉間へと照準を定める。
「くくくく……。
あんたとの遊びは面白かったぜ。
俺はここで終わりだが、他の連中との遊びを楽しんでくれ。
天国で1人は寂しいから、早く仲間を送ってくれよな」
それって……!!
「他の土地にも、侵攻している聖人がいるのですね……!?」
「お前なら、簡単に片付けられるだろうが、果たして間に合う……か……な?」
「ちょっ……!?」
直後、アングリーの身体が崩れていく。
お、おいっ!
まだ聞きたいことがあるのに、まだ死ぬなよっ!!
「あ……ああ~。
消えてしまった……」
くそっ、これはのんびりしている場合じゃないな。
「マグエアル様、私は今すぐ帰国しなければならなくなりました。
支援物資も、運んでいる時間が無いので、ここに置いていきます」
「ああ、後は我々で運んでおく。
改めて、感謝する。
ありがとう」
「いえ、どういたしまして。
それでは失礼します」
俺はオスプレイを「空間収納」から出して乗り込んだ。
ここには滑走路が無いから、来る時に使ったステルス戦略爆撃機は使えないんだもの。
ちょっと速度が遅くなるが、仕方がない。
このステルス戦略爆撃機で、教国と面した国境を確認しながら帰るとしよう。
俺の領地はアンシーがいるから大丈夫だと思うし、後回しでもいいから……優先すべきは、一度攻められているマルドー辺境伯領かな。
確かコリンナ先輩が学園を卒業して、辺境伯領に帰っているはず……。
無事だといいけど……。
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