海ゆかば
改めて町の人間に話を聞いて回ったが、それによると海に出現する魔物は、島のような姿をした怪物らしい。
巨大な蛸か亀の怪物だろうか?
それが水上に出てきて、島のように見えるのだろう。
それならば動きは鈍いだろうから、倒しやすいかな?
それならばなんとかなりそうだ。
サメとか動きが速い上に、水上にはほとんど出てこないタイプだと、対処が面倒臭くなりそうだからなぁ……。
攻撃手段が魚雷や機雷などに限定されるし、万が一深海に逃げ込まれたら俺が直接追うことも難しい。
潜水艦を使う手もあるが、いざという時に逃げ場の無い海中には行きたくないのよ。
かといって無人の水中用ドローンも、戦闘力が高いかというと、ちょっと微妙だからな……。
だけど水上に姿を現すような相手なら、海岸からミサイルを撃ち込むとか、空中から爆弾を投下するとか、やりようはいくらでもある。
だが、ここは折角だから、男のロマン兵器を使わせてもらおう。
そんな訳で、数日かけて準備をする。
そして魔物退治の当日、招集したのは先日俺に絡んできた漁師達だ。
アンシーから教育を受けた彼らは、すっかりと大人しくなっていた。
「それでは、協力をお願いします」
「いや、あんた誰だよ……?」
貴族令嬢の姿をした俺を見て、困惑する漁師達。
「先日、場所代を払えと言われた者ですが。
ちなみに、この土地の領主です」
更に困惑顔になる漁師達。
先日は少年のように変装をしていたから、今の姿とは印象が全く違うからねぇ……。
しかも──、
「え……領主?
嘘だろ……?
それって……つまり……」
「はい、公爵ですが」
「「「うえぇぇぇぇぇ!?」」」
公爵本人に対して、とんでもない無礼を働いたことを知った漁師達は、驚愕しつつも顔面を蒼白にした。
まあ、死罪にされてもおかしくない程の、やらかしだったからなぁ……。
しかも俺の嫁が王女だと知ったら、どうなっちゃうんだろうね?
「さあ、あなた達の罪について、今は目をつぶります。
その代わり、海での案内をお願いしますね」
「え……あの……本当に海へ……?」
男達は魔物が怖いのか、怯えた様子だった。
公爵としての俺の威光は、半信半疑なのかあまり効いていない。
……が──、
「返事は?」
「は、はいっ!!
喜んで協力させていただきますっ!!」
アンシーに睨まれるると、素直に従った。
余程キツイお仕置きを受けたか。
魔物よりもアンシーの方が怖いようだ。
「早速、魔物が出現する海域まで案内してください」
「し……しかし、こんな小舟で……」
「魔物に出くわしたら、一瞬で沈められてしまう!!」
そう、今俺達が乗っているのは、小さな漁船だ。
だから乗っているのは漁師達と、俺とアンシー、そしてなんだか面白がって、どうしても同行すると言ってきかなかったミーティア王女だけだ。
それ以上となると定員オーバーだが、そもそも危ないので他の者達は連れてきていない。
というか、オスプレイですら酔うセリエルが船に乗ったら、死ぬんじゃないかな?
「大丈夫ですよ。
この船で行くのは途中までですから」
これから作るのは、大きすぎて港に入らないからな。
「それはどういう……?」
「そろそろいいですかね」
ある程度沖に出たので、この漁船を核にして、用意した鋼材を材料に加えつつ「変換」する。
「おおおっ!?」
次の瞬間。俺たちは巨大な物体の上に立っていた。
正確には広い甲板の上だ。
「こ……これは……」
「こんな巨大な物が水に浮くのか……。
まあ、鉄の塊が空を飛ぶのよりは、驚きは無いが……」
漁師たちはもちろん、ミーティアも驚いている。
ただ、アンシーは常に平静を装っているので、内心は分からない。
「というか……これは船なのか?」
「はい、大戦艦ヤマトです」
「ヤマ……ト?」
宇宙戦艦の方ではない。
将来的には宇宙戦艦も作りたいが、未来技術の結晶と言えるようなものは、膨大な資材と魔力を使うので、現時点では作るのは難しい。
その点このヤマトは、前世の世界でも既に時代遅れになっていた兵器なので、この巨大な船体を再現すること以外は、さほどコストはかからない。
とはいえ、俺とアンシーだけで動かす為には、ある程度コンピューター制御できるようにしてはある為、本物の大和と全く同じ物という訳でもない。
事実、兵装も一部変えており、大和には無かった水中魚雷発射管もある。
水中の敵にも対応する為だ。
……さすがに艦首砲口や、パルスレーザー砲と煙突ミサイルの再現は自重した。
使い道もそんなに無さそうだし。
ちなみにアンシーも俺の義手と同様に、電子機器に接続して操作できる能力がある。
しかも無線なので、俺よりも性能がいいかも……。
「見ての通りこの巨体なので、浅瀬や岩礁で座礁する可能性があります。
漁師の方々は、そうならないように案内してもらいたい」
「お……おう……」
漁師達は、責任重大な任務を任されて、緊張した様子だった。
まあ、座礁したら「空間収納」に入れて別の場所に移すから、廃船にするレベルのことにはならないけどね。
ともかくこうして俺達のヤマトは、大海原へと突き進むのだった。
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