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【書籍化】魯鈍の人(ロドンノヒト) ~信長の弟、信秀の十男と言われて~  作者: 牛一(ドン)
第3章 『引き籠りニート希望の戦国宰相、ごろごろ目指して爆走中!?』
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蛇足4.竹中半兵衛の遺産と信照の夢。

竹中(たけなか)-半兵衛(はんべえ)-重治(しげはる)

竹中-重元(たけなか-しげちか)の子で織田家への忠誠を示す為の人質として神学校に神童と名高い息子の半兵衛(はんべえ)を預けられた。

熱田明神の生まれ変わりと言われた信照(のぶてる)との出会いは、強烈な化学反応(ケミストリー)を起こして、彼の運命をねじ曲げ、期待された名将・軍師としての才能は消えた。

歴史の表舞台に半兵衛(はんべえ)の名が出てくるのは、信照(のぶてる)が天下を統一した以降となる。


しかし、天才科学者にして、天才技術者でもある半兵衛(はんべえ)の存在無しに、数々の兵器や製品は生まれなかった。

況して産業革命など・・・・・・・・・・・・。

彼がいなければ、信照(のぶてる)が植えた苗が芽吹くのは、50年、100年先になっていたに違いない。

信照(のぶてる)の晩年には、機関車が走り、空に飛行機が飛び、各都市に紡績工場などが造られ、補助動力のタービンエンジンが積まれた帆船が白い帆が上げてはためいていた。


だがしかし、町に自動車が走る事もなく、牛車や馬車が町を行き交った。

大量生産による大量消費という言葉も生まれていない。

信照(のぶてる)の基本方針は『地産地消(ちさんちしょう)』であり、国を跨ぐ交易は贅沢品だ。


例えば、極東の生産物は主に穀物だ。

甜菜(てんさい)で作った砂糖を売って外貨を稼ぎ、小麦や米などを輸入しているが、最悪でも穀物だけで生きて行ける生産量を奨励した。

余裕がある分だけ牛や豚や鶏を飼い、さらに余裕があれば、玩具や競技などでの遊び贅沢を尊んだ。


信照(のぶてる)は野球やサッカーやラクビーなどの競技を広め、日の本の国別対抗戦などを開催した。

(剣術、相撲、弓道、馬術などは信照(のぶてる)が奨励しなくとも全国で競技会が広まり、全国大会も開催された)

それを支える器具や照明なども半兵衛(はんべい)の発明品だった。

様々な便利な道具が生活を向上させて行くが、軍事品や軍事物資がそのまま民間転用され難いという歪な文明開化を起こした。

あれはあれ、これはこれの精神だ。


そんな社会を維持できたのも半兵衛(はんべえ)という存在なしに語れない。

信照(のぶてる)半兵衛(はんべえ)を見出し、その周りに助手・鍛冶師・大工・医者・薬師・毒師などの数多の天才達を召喚しなければ不可能であった。

天才の天才による天才の町が熱田・知多であった。


 ◇◇◇


〔永禄7年 (1564年)〕

呂宋(ルソン)美麗島(ふぉるもさ)(台湾)、アユタヤ (タイ)、トラック諸島を巡った信照(のぶてる)が熱田に帰って来た。

半兵衛(はんべえ)は最近の不便さに不満を述べた。


信照(のぶてる)様、この知多の工業地帯は我が物で間違いございませんな?」

「何を今更」

「ならば、私の実験が最優先でなければなりません。そうに間違いありませんな」


内容を述べず、詰め寄る半兵衛(はんべえ)に困った。

そこに熱田の右筆である岡本-定季(おかもと-さだすえ)が横に来て耳打ちした。

要するに、知多が手狭になってきたのだ。

知多の研究所も製鉄所も造船所も工場も半兵衛(はんべえ)が造ったと言って過言ではない。

信照(のぶてる)の絵図を元に半兵衛(はんべえ)が設計図に仕上げ、設計図にある部品や組み立てる工場を次々と生み出していった。

種を捲いたイザナギが信照(のぶてる)とすると、産んだイザナミは半兵衛(はんべえ)である。

半兵衛(はんべえ)は才能があり過ぎて、飽きると次の事を始める。

残った研究所、製鉄所、造船所、工場などは弟子達が運営する事になっていった。

今、お熱なのが帆船に乗せる大型タービン機関とグライダーに積む小型ディーゼル機関と同じく、グライダーを改良したジェット機関であった。

一時は、どんな船体が高速移動に向くのかという造形美にこだわる時期もあったが、高速船と輸送船の形が決まると興味を失った。

ディーゼル機関の形はほぼ完成し、後は耐久問題を解決すると船に乗せる事ができる。

外輪船は一隻で飽きたようだった。

いくら回転数を上げても速度が上がらないので、スクリュー船に移行した。

高速船に積むのは高出力が得られるタービン機関であり、未だに爆発せずに試験を終えた船はない。

但し、ディーゼル機関は完成の域にあり、一部の連絡船に搭載されている。

12時間以上の連続稼働をしないならば、安全に使える。

無風の時の補助動力として搭載されており、これから造られる帆船には補助動力として搭載される。

弟子達は連続稼働30日を目標に改良に苦労している。

つまり、弟子達の改良製品の稼働実験の為に、半兵衛(はんべえ)の実験場所が無くなった訳だ。


「昔ならば、工場で実験できましたが、工場が爆発すると周辺の工場にも被害が及びます」

「あぁ、それで実験場所を別に造ったのだったな」

半兵衛(はんべえ)殿が同時に色々な実験をされますので、実験場もかなりの数を用意しましたが、それでも足りない状況になっております」


以前は、知多半島が広く感じられて場所に困る事はなかったが、今では所狭しと工場や練習場や実験場で埋まってしまった。

海岸でも造船所が並び捲くっている。

埋め立てて、新しい土地を用意しないと、半兵衛(はんべえ)の希望は叶わない。


「いっそ、オーストラリアに新しい町を作るか?」

「オーストラリアだと?」


日の本と違って資源が豊富だ。

その資源を採掘する為に移民団を派遣するつもりだった信照(のぶてる)は、その開発に適任者を見つめた。


半兵衛(はんべえ)。今度こそ、半兵衛(はんべえ)の町を造る事を許可する」

「嘘ではございますまいな?」

「設計から完成まで半兵衛(はんべえ)に任せる。これならば、文句もないだろう」

「銭が掛かりますぞ」

「佐渡の金山が軌道に乗った。しばらくは銭に悩む必要もない。好きなだけ使え」


知多で生まれた製品は後で多額の利益となって還元される。

巨大投資と思えば、高い買い物ではない。

信照(のぶてる)はそう思っていたが、完全な失敗であった。

実際、造船とライフル銃など売り上げは、信照(のぶてる)を納得させる結果となった。

一世代前の兵器を海外が利益を得る属国に対して、日の本は一世代先の兵器を装備しており、属国に対して軍事的な有利を保った。

属国がライフル銃を揃えると、幕府は機関砲を保有している。

そんな感じだ。

船も同じであり、同じ形に見えても幕府の船は中に鉄で補強しており、大砲の精度も段違いの性能があった。

その船を貸し出しているのが信照(のぶてる)の商会群であった。

信照(のぶてる)は雪だるま式に富みが膨らんでいるような感じを受けていた。

しかし、半兵衛(はんべえ)が造った工場都市は、その信照(のぶてる)の富を使い果たし、さらに肥大化していた。

都市の存在を隠した為に、二重帳簿にした結果、信照(のぶてる)の手で管理されていなかった事が最大の欠点だった。

信照(のぶてる)は視察に行く度に知る新兵器が生む利益に目を細めて笑みを零している場合ではなかった。

毎年、予算を交渉する程度の手間を惜しむべきではなかった。

半兵衛(はんべえ)の死と共に、帳簿を見た信照(のぶてる)が頭を抱えた。


都市の開発と信照(のぶてる)の収益がバランス良く使われていた。

山のような財産がすべて溶けてなくなっていた。

もちろん、投資した額は帰ってくる。

但し、帰ってくるのが50年後か、100年後という長期の試算ならばだ。


例えば、ジェット機の技術を持っているが、プロペラ機より上位の機体を発表していない。

信照(のぶてる)自身が禁止していた。

いずれは、周りの技術レベルが上がれば、公開しても良いとなっているが、ゼロ戦ですらオーバーテクノロジーな状態でジェット機の技術を公開するなどあり得なかった。

時代が追いつくまで利益にならない。


信照(のぶてる)は開発予算を半分に削り、オーストラリア南部だけで経済が回るように構造改革を断行すると、自らの予算を削って都市の維持を保った。

若隠居しようと考えていたが、公務を離れると食って行く銭がない。

また、予定変更だった。

借金のような人材不足を乗り切ると、本当に借金が追い掛けて来た。

経済観念のない半兵衛(はんべえ)の所為だ。

半兵衛(はんべえ)が一人で楽をさせるモノかと課題を残したのかもしれない。


信照(のぶてる)は世界一に銭を稼ぎながら、自分で使える銭は一文もない状況がしばらく続いた。

太閤様の世界巡行がしばらく続き、収入と都市の浪費とバランスが合った所で息子に太閤職を譲った。

少しでも失敗すれば、赤字に転落しかねない遺産を貰った息子も大変だっただろう。

苦労から解放されたが銭はない。

望月の里でないない尽くし貧乏暮らしが始まった。

千代女を働かせてゴロゴロする駄目亭主となり、他の妻達は息子らの世話になると言って散って行った。

それでも信照(のぶてる)は千代女と一緒に田舎暮らしを楽しんだと言う。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1662年に清ではなく明が誕生? 自分が理解出来ていないだけなら申し訳ありません
[良い点] オーストラリアに大穴開けるってコロニー落としかw [気になる点] 文字通り蛇足と題されている以上読み手を選ぶのはしかたないとはいえ、年表の内容はいくら何でもやりすぎ感が。
[一言] 全て半兵衛が悪い。
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