表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】魯鈍の人(ロドンノヒト) ~信長の弟、信秀の十男と言われて~  作者: 牛一(ドン)
第一章『引き籠りニート希望の戦国武将、参上!?』
151/506

閑話.多事多難(1)。

清洲騒動は全国を走った。

交易都市である熱田は多くの商人が集まる。

多くの行者(ぎょうじゃ)、あるいは、修行僧(しゅぎょうそう)も通り過ぎた。

今で言う報道マン兼ニュースキャスターだ。

全国津々浦々(ぜんこくつつうらうら)までニュースを届けた。

北条から三好が派遣した間者らも徘徊していた。


【美濃】

斎藤-利政(さいとう-としまさ)(後の道三)に命じられて、春日丹後と堀田道空が熱田に派遣された。

そして、驚くような話を持ち帰った。


「高政、聞いたか?」

「父上、今こそ織田を攻めるべきです」


高政の強気に利政もびっくりだ!


「今の話を聞いていたのか?」

「若君、火を撒く大鳥に、火を飛ばす武器ですぞ!」

「織田は今、疲弊しておる。この機を逃して勝機はない」

「それは間違いないが、失敗すれば斎藤家は滅ぶぞ。空から攻めてくるのだ。稲葉山城など塵芥(ちりあくた)に過ぎない」

「そのような戯言は信じません。人は空など飛べません」

「若君、信じられないのは当然でございます。この目で見た某も信じられません。ですが、事実でございます」

「ええい、俺を誑かすなど許さん」


刀を抜いて、春日丹後と堀田道空を威嚇する高政を見て利政は溜息を吐いた。

織田家が疲弊している。

その高政の意見は正鵠を射ている。

利政も承知していた。

そうでなければ、魯坊丸が脅し文句の書状を送ってくる訳がない。

裏切れば、斎藤家を滅ぼすと言っている。

清洲辺りまでは取れても那古野、熱田が取れるだろうか?

利政にはその姿が想像もできない。

高政のように楽観する武将らが清州辺りまで取って満足してしまう危険性が怖かった。

自分達が強者と勘違いしている。

織田家を滅ぼさねば、斎藤家が滅びると言う自覚がない。

高政と共に稲葉山城が燃える姿が利政の目に浮かんでいた。


【六角】

六角-義賢(ろっかく-よしかた)は父である定頼(さだより)(去年、天文21年没)を失って、その武威を示す為に浅井討伐を考えていた。

長年、対立していた京極-高延(きょうごく-たかのぶ)浅井-久政(あざい-ひさまさ)が和睦し、三好-長慶(みよし-ながよし)と同盟を結んだ為だ。

義賢は利政と和睦し、北近江の浅井を挟み打ちにするつもりでいた。

仲介役として同盟国の織田家に近付くのは有益と考えた。


「丁度良い金蔓と思っておったが、虎の子を猫と間違っていたようだな!」


六角の家老がずらりと並ぶ中に得珍保(とくちんのほ)の田中頼長(小幡商人)が召し出された。

頼長は熱田で見た限りの事を話すと家老らは重苦しい表情で唸ったのだ。

それを嘘と思わない。

現に魯坊丸は京の退却戦にて織田衆700人で二万人の三好勢を退けた。

ならば、尾張で三万人の今川勢を全滅に追い込んだのも事実だろう。

これが偶然でないことは明らかだった。


「そう言えば、望月殿は尾張でも領地を持つことになったそうだな?」

「喜ばしいことだな!」

「望月家も儲かっているしな!」

「お戯れを! 娘は三河との国境に1,000石の領地を賜っただけでございます」

「目出度いではないか? 益々、縁が深まったと言うものだ」

「過分な評価を頂いて、嬉しく存じます」

「あの雪斎を討ったのだ。過分もあるまい」

「(三雲)賢持(かたもち)殿の弟御も領地を貰ったそうだな!」

「弟に追い抜かれぬように気を付けます」


義賢は頭を掻いた。

望月家と三雲家ばかりが魯坊丸に近くなるのも問題であった。


「(進藤)賢盛(かたもり)は得珍保を通じて、熱田衆、津島衆との縁を深めてゆけ!」

「よろしいので?」

「構わん。許す」

「ありがとうございます」


進藤家は京の出口を守っているので、鎌倉街道を守る望月家と同様に商人関係で熱田衆、津島衆と縁が深い。

また、平井-定武(ひらい-さだたけ)は田中頼長の小幡商人らと縁が深い。


「定武、そなたに頃合いの娘がおったな!」

「それがどうか致しましたか?」

「我が養女として魯坊丸に嫁がせたい。構わぬか?」

「ありがたき幸せ!」

「うむ、(田中)頼長よ。頼みがある」


田中頼長に密命を与えた。

熱田商人にその話を広げて、様子を窺うように命じられた。

義賢に丁度頃合いの良い娘が居れば、それが一番よかったのだが、能登の畠山-義綱(はたけやま-よしつな)に嫁いでいなかった。

定武に頃合いの娘が居た事を思い出して、そう言ったのだ。

義賢の養女となれば、格式にも問題がない。


「(蒲生)定秀(さだひで)、そなたには浅井攻めの先陣を申し付ける」

「承知仕った!」

「魯坊丸を召喚する故、賢秀(かたひで)にでも接待をさせよ」

「名軍師の腕前をしかと確かめさせて頂きます」

「任せたぞ!」


定秀の息子である賢秀は、後藤-賢豊(ごとう-かたとよ)の娘を妻に貰った。

義理の父である賢豊が魯坊丸の接待に参加するのは自然な流れだ。

浅井攻めは次郎左衛門尉(目賀田忠朝)の目賀田城に集結する。

当然、次郎左衛門尉が段取りに関わる。

これで六宿老が全て魯坊丸と縁を持つことになる。

六宿老への気遣いは只事ではない。

義賢は父の定頼のような全幅の信頼を得ているとは思っていないからだ。


「父上、某も出陣しとうございます」

「四朗、お主にはまだ早い」

「然れど、魯坊丸は私より一つ年下です」

「あれと比べるな! あれは父と同じ化け物だ」

「殿、弱気はいけません」

「弱気ではない。分を弁えているだけだ。あの化け物にこの六角を好きにさせん。そう心得よ」


魯坊丸への警戒感はマックスに達し、破れた三好家など頭の片隅に据え置かれてしまっていた。


2回投稿ではありません。


元々、将軍の四コマと1つでした。

書いていると、公方様の部分が四コマっぽいなと思い、書き直してテストしてみました。

こちらはそのままです。


後半は三好、今川等を書く予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魯坊を召喚するとは義賢は魔術師か?魯坊の嫁さん浅井に行くはずの人を廻して、浅井を潰したらお市の嫁ぎ先はひょっとしたら朽木になるのかな?ロリコン野郎じゃなくて当主の元綱へ。なんか将軍様からそん…
[良い点] マムシが色んな意味で隠居出来なくなってて草。当分道三にはなれないね …確かに空爆を警戒するのって飛行船が出来たWW1辺り、20世紀の戦なんよね。400年近く先の戦のやり方なんぞ、一部の天才…
[一言] 宿老をさらっと流したけど、たぶん宿老って何って知らない人の方が多いと思う。 ゲームだと家老の上の階級として宿老があるけど、仕えた年数程度の話だけど発言力の重さが変わってくるんだよね。 京の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ