獣人の子供を連れて帰って、色々ありました。
俺は自分に問う。
行きは一時間ちょい、帰りは二日が我慢できる?
まあ、できないよなあ。
ずっと下を向いた子供たち。
んー、元気出して欲しい。
そりゃさ、税金払えなかった親を怨む奴も居るだろうが、それでもさ……。
それに、あー、馬車頼むんじゃなかった。
俺んちで使えばいいかなと思って買ったんだけど
遅っせーわこれ。
俺が巨人化して連れて帰ったほうが早い。
ヨシそうしよう。
俺は急に馬車を停めると、
「アリーダ、面倒くさい。馬車が遅くてかなわん。そこで強引に連れて帰る作戦をう!」
「アリヨシ、どうした?」
「馬と子供たちはスリープクラウドをかけて寝かせ、俺が巨人に戻って俺の手に乗せて帰る。
遅すぎる」
「へ?」
アリーダは理解できていないようだが、荷台の方にスリープクラウドを唱えると、子供たちはそのまま寝てしまった。
そして馬にスリープクラウドをかける。
両手で荷馬車を抱えると、アリーダとグレアは俺の肩に乗る。
「それじゃ行くぞ」
俺がそう言うと、二人はコクリと頷いた。
揺らさないように走るが、一歩一歩が大きいぶん速度が全然違う。
しばらく走ると壁に到着した。
そのままハードルのように壁を越え、俺の家まで走って帰った。
手に持った荷馬車を置くと、アイーダとグレアを降ろし俺は人サイズに戻る。
既に走って帰った俺を見た獣人が、何事かと俺の家へ集まってきていた。
我が子の確認をし、涙を浮かべている母親も居る。
そして、スリープ状態を解除すると、荷台に居た子供たちは、きょろきょろと周りを見回す。
風景が変わり周りに獣人が居るのに驚いているようだった。
「坊や~!」
「二度と会えないかと思っていたのに」
「ニコ、お帰り」
獣人たちはそれぞれの子に抱きつき頬ずりをしていた。
しかし我が子が居なかったのを確認しガックリとする獣人も……。
ミカルさんが近寄ってくると、
「アリヨシ様ありがとうございました。
子供が戻った親たちは喜んでいます」
「ああ、でも全員を連れて帰った訳ではないんだよな。
喜んでいる者も居るが、それを見て悲しむ者も居る」
「アリヨシ様それは無理ですよ。
すべての帝国内に散らばったかもわからない子供を探し出せというのは無理です」
ミカルさんは慰めてくれているのかもしれないな。
「ただ、イーサの町に居たアデラって司令官に依頼して、奴隷商人を通して獣人の子を捜してもらえるように頼んであるから。
それとなく言っておいて」
「えっ、『龍血』ですか?」
驚くミカルさん。
「そういやそんな二つ名だったな」
「なぜ、そのような関係に?」
「いや、色々とあってな……」
俺が言葉を濁す。
しかし、
「アリヨシ様、その辺のことを説明していただきましょうか」
と言うベアトリスの声が聞こえてきた。
振り向くと、そこには仁王立ちのベアトリスが居た。ちょっと怒ってる。
俺の手を引くとベアトリスの家へ引っ張られていった。
中に入ると、なぜかノワル、グレア、ドリス、ウルまで待っていた。
「えーっと、何か?」
「アリヨシよ『アデラ』というのは何物じゃ?」
ノワルが聞いてきた。
「あー、帝国の司令官だね。
第何か知らないが王女らしい。
『龍血』という二つ名を持ってる。
ドリスにはパスで聞いたから知ってるだろ?」
「はい、質問があったので教えました」
ドリスは頷く。
「グレアさんに聞いたのですが、なぜ、そのお方が協力者になったのでしょうか?」
「それは、砂糖で揉めた時に『がー』って言って噛みついてきたから、『キャーン』って言わせたら懐かれた。
プリンも効果があったようだ」
擬音語で誤魔化す俺。
「我と同じか」
自分に重ねたのか諦め気味のノワル。
一応今の説明でわかったようだ。
「とりあえず、月一でイーサの町へ砂糖を卸すことになったから。
このリュックで一杯分。
その際にアデラの伝手を使って獣人の子が見つかっていたら、その子を連れて帰ることになっている。
会ってもその時ぐらいだなぁ。
こっちには攻めてこないってさ、壁になるって言ってた」
結婚させられそうになったら亡命するって言ってたのは黙っておこう。
「獣人の子たちのこともありますし、収入が増えるのは良い事です。
ただ壁になってもらわなくてもいいんですけどね」
ベアトリスがため息をつきながら言った。
グレアは尻尾を振っている。あまり気にしていないらしい。
現場に居たしな。
ウルもあんまり気にしていないかな?
「その人の胸は……」
と聞いてきたので、
「ウルと同じくらいかな?」と言ったら喜んでいた。
そういや、ノワルが進化してツルペタ枠がベアトリスとウルになっていたな。
ドリスは「『龍血』ってどんな感じでしたか?」とアデラに興味津々である。
思ったよりも追及は少なく、話は終わった。
さて、話も終わった事だし、風呂へ行く。
俺の温泉は気持ちいい。
巨人サイズで風呂に入っていると、ベアトリスが裸のまま温泉に入ってきた。
「どうした?」
俺が聞くと、
「やっと、あなたとの婚約が認められました」
そういえば、ベアトリスの実家の手紙は今回見てなかった。
「えっ、実積は?」
「兄のところに子ができました。
それはあなたのメモを参考にした結果。
あなたは伯爵家の懸念の一つを解決したのです。
これ以上の実績はありません。
ちなみにあのメモは、家宝となるようです」
学校の性教育で習う程度なんだがねえ。
「それと継続して、砂糖、岩塩の販売を続けるようにと手紙に書いてありました」
「更に実積を上げ続けろと言うことね。
了解」
「そして、私もやっとみんなに追い付きました。今後ともよろしくお願いしますね」
ん?
やってもいいよってことらしい。
俺は人サイズに戻ると、ベアトリスを抱き人サイズ用の小さい風呂に入った。
「お風呂っていいですね。
ここに来てはじめて思いました」
「まあ、うちのは温泉だから余計だろうね」
ベアトリスは俺の胸に頭を載せると、
「恥ずかしながら、私はあなたをどう喜ばせればいいのかを知りません。 だから、色々教えてください」
真っ赤になって頭を下げた。
「気にしなくてもいいよ。
ゆっくりやってこう」
そのままの流れで、ベアトリスにも手を出すことになる。
事が終わる頃には、ベアトリスの髪は濡れ、ストレートヘアになっていた。
こっちもいいね。
疲れてのぼせそうになっているベアトリスを軽く洗い洗い、抱き上げ脱衣所にあった服を着せると、ベアトリスの部屋へ連れていって寝かせた。
「ベアトリス、水は要るか」
と聞くと、コクりと頷いた。
俺はコップに冷水を入れベアトリスに渡す。
ん? 首を横に振る。
ちゅーってするベアトリス。
「ちゅーって口移しか?」
今度は頷く。
冷えてたほうが体にはいいと思うが、俺は冷水を口に含むと、ベアトリスを抱き上げ口移しした。
コクコクと喉が動き水を飲むベアトリス。
ただ、口からも冷水が線を引きベッドを濡らす。
「甘えすぎだ。
ほら、こぼれてしまった」
俺は魔法で乾燥させる。
「いいんです。甘えたかったのですから。
甘えてもいい人がやっとできました。
私は面倒くさいですよ」
「自分から『面倒くさい』と言うのも問題ありだと思うが、なんとか受け止めるよ。
他に甘えることはないか?」
「では、添い寝をお願いします」
俺はベアトリスの横に入り腕枕をした。
体をゆっくりと同じリズムでトントンと叩く。
ベアトリスは疲れていたのか、間もなくスースーと寝息をたてて眠り始めるのだった。
小説を読んでいただきありがとうございました。




