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獣人を助けに行くことにしました。

 俺んちに帰ると、ホールの前で俺はグレア、ノワルそして獣人の子を降ろし人サイズに戻った。

「巨人が人に」


 そりゃ驚くだろうね。


「悪い、巨人で話すよりもこっちのほうがいいだろう?

 怯えられても困るしな。

ちなみにグレアはフェンリルだし、ノワルはバハムートだ」

「これが私の本当の姿です」

 グレアがフェンリルに戻る。

「これが(われ)の本当の姿じゃ」

 ノワルもバハムートに戻った。

 獣人の子はドリスのほうをじっと見ている。

 そりゃこの流れからいったらドリスもってところだが、

「私は人ですから……変化しませんよ?」

 ドリスが獣人の子に言うと、獣人の子はちょっとがっかりしていた。


「ところで、ガキんちょ」

 俺が獣人の子に言うと、

「ガキんちょ言うな!

 アリーダって名があるんだ!」

 と怒られた。

「ご主人様、いきなり『ガキんちょ』は無いのでは?」

 グレアに窘められる。

「じゃあ、アリーダくん」

「『くん』じゃない!」


 ん?

 おお、女の子だったのか。

 確かによく見れば胸がある。


「じろじろ見るな」


 おっと、怒られた。


「見たいのなら、(われ)が見せてやる……」

 ノワルが上半身の服を除去しようとしたので、

「今はいい」

 と食い気味に止めた。


「おお、悪かったな。じゃあアリーダちゃん。何で追われていたんだ?」

「そっ、それは……」

 一度目を逸らすアリーダ。しかし、再び俺の目を見ると、

「兄ちゃんは強いのか?」

 と質問で返してきた。

「強い弱いで言えば一応巨人だから強いだろうな」

「だっだったら、皆を助けてくれよ!

 帝国の軍隊が村に来て急に俺たちを捕まえたんだ」

「ふむ、俺に利点は?」

「そっ、それは……」

 アリーダは言葉が詰まった。

 まあ、利点などなくても助ける気にはなっていたが一応聞いてみた。

「でも、俺にはこの体しかないから……おっ俺が兄ちゃんの奴隷になるよ。

 何でもする……だから……」

「別に奴隷なんて要らない。

 欲しいとも思わない」

「えっ」

 アリーダはそれ以外の選択肢が思い浮かばないようだ。

「アリーダ」

 あえて呼び捨てにした。

「はい」

「お前たち獣人は勤勉か?

 よく働くか?」

 俺がそう言うと、

「ご主人様……」

 嬉しそうに尻尾を振るグレア。

「アリヨシも意地悪じゃの」

 口角を上げるノワル。

「えっ」

 アリーダは意味が分かっていないのだろう。

「お前たち獣人はよく働くのかって聞いているんだよ」

 俺は再びアリーダに聞いた。

「ああ、俺たち獣人は良く働く。

 主人と認めた者を裏切ったりしない」

 良い方に向かわせたいアリーダは泣きながら俺に言った。

「そうか……ベアトリス。

 労働力はあったほうがいいよな」

「アリヨシ様、当然です。

 人の数こそが力です」

 俺たちの様子を見に来ていたベアトリスが言った。

「ドリスの手下も要るしな」

「はい、騎士一人では、ここは守れませんから」

 ニヤニヤしながらドリスも言う。


「決まりだな。

 ベアトリスはここで待機。

 何かあったら調整してくれ」

「はい」

「ウル、エルフを動員してできるだけたくさん食事を作ってくれ」

「わかりました」

 ウルは頭を下げ、エルフの集落に走った。

「ドリスはドワーフと荷馬車で壁の手前まで移動して待機。

 歩けない者も居るかもしれない」

「わかりました。

 ドワーフの所に行ってきます」

 ドリスも走る。

 俺は再び巨人に戻る。

「俺とグレアとノワルは魔物だ。

 魔物が村を襲っても問題あるまい?」

「そうじゃな、村に居た者はすべて食い殺されたのじゃ」

 ノワルが話に乗る。

「ご主人様のことです、最後には村ごと消滅させるのでしょう?」

 グレアはわかってるみたいだね。

「そのつもりだよ。

 兵士と獣人は俺たちに殺された。

 だから、もうこの世にはいなくなる。

 それでいいんじゃないか?」

「わかんない!

 それに獣人が殺されるなんて困る」

 やっぱり説明要るよね……。

「兵士を殺し、村人を逃がした後、その後その村が吹き飛ぶほどの事が起こったら、そこに居た村人はどうなったと思われる?」

「あっ」

 やっとわかったかな? 

「一緒に吹き飛んだと思われる。

 壁の向こうに行っても追手は来ない」

「そういう事だ。

 だからアリーダにも頑張ってもらわなきゃいけない。

 巨人の俺が説得しても聞いてくれないだろうからな。

 さあ、この手に乗れ。

 アリーダの仲間を助けに行こう」

「はい」

 アリーダが俺の手に乗ると、俺の肩に乗せる。

「振り落とされないようにちゃんと持ってろよ」

 アリーダが熊スーツの毛をギュッと力を入れて掴んだのを確認すると俺は壁に向かって走り始めた。

 追従するグレアとノワル。

 さあ、行こうか。


小説を読んでいただきありがとうございます。

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