寄り道してスレイプニルを探しに行きました。
地図を入れてみました。縮尺も適当です。
俺たちはノワルの元家に向かう。
山頂付近の洞窟。
この周辺にスレイプニルの群れが居るということだった。
ノワルの場合移動は音速を越えるので、少々距離があっても元家まではすぐに辿りつく。
「アリヨシ、到着じゃ」
ノワルはいつもの通り強引に洞窟内部に着陸した。
「ノワル、ありがとな」
「どういたしましてじゃ!」
グレアはノワルの飛行速度に驚き、
「ノワル様、凄く速くなっていましたね」
と言っていた。
するとノワルは、
「進化したからの」
と言った後、
そしてノワルはわざわざ胸を張り。
「グレアに負けぬ武器も手に入れたぞ」
と胸を強調した。
負けずとグレアは、
「私はご主人様のお手付きになりましたから」
と張り合う。
「アリヨシは、いつ我にてをつけるのかの?」
ノワルがジト目で俺を見た。
あっ、俺に飛び火した……。
「とりあえず、まずはスレイプニルだな」
ノワルのジト目を軽く流しレーダーで魔物を探す。
何カ所か集団でいる魔物が居るがどれがスレイプニルなのやら……。
しらみつぶしで探すしかないか。
「固まっている魔物の反応が数カ所ある。
そこに行ってみるか」
俺はグレアとノワルに言うと、
洞窟を出て巨人に戻った。ノワルとグレアを肩に乗せる。
「とりあえずこっちだな」
しばらく歩くと、遠目に四頭の魔物が居た。
体調一メートル五十センチぐらいか……。
「ゴールドゴートじゃな。
岩場に住みつく魔物じゃ」
「美味しいのですか?」
「我も食べたことは無いの。
じゃが美味しそうな匂いがする」
「確かに美味しそうですね」
「じゅる」っという音がしたので、肩を見ると二人が涎を垂らしていた。
「狩るか?」
「はい!」
「じゃな」
俺がスタンクラウドでゴールドゴートを痺れさせるとグレアとノワルの手の爪が伸び、ゴールドゴートの首を搔き切った。
「焼くんだろ?」
「はい」
「じゃな」
しかし、このまま放置というわけにはいかないな。
「ノワル、悪いんだけど、これ持って一度俺んちに帰ってくれるか?
エルフたちにできる者が居るなら解体を依頼して欲しい。
俺とグレアはスレイプニルを探してるから」
「了解じゃ。
しかしグレア、二人っきりとは羨ましいのう」
ニヤニヤするノワル。
「二人っきりです」
ニコニコするグレア。
「今日は何もせんよ」
俺がそう言うと、
「残念」
グレアの呟く声が聞こえた。
ノワルがゴールドゴートを持って俺んちに向かうのを確認すると再びスレイプニルを探す。
近くにあった群れをレーダーを確認してそこへ向かった。
そこには八本足の馬、スレイプニルが三頭。
大きめが二頭、小さめが一頭、親子かね。
俺の匂いに気付いたのか、俺のほうを見るスレイプニルたち。
一番大きなやつは体高で三メートル近くありそうだ。
それでも俺よりは小さい、なのに逃げなかった。
前足で地を蹴り、あからさまに敵対心を見せる。
そして、空を蹴り飛び上がるとグレアを襲った。
グレアも慣れたものでそのまま地上まで飛び降りフェンリルに戻る。
スレイプニルは驚いたのか動かなくなった。
巨人のままじゃ威圧感があるかな?
俺は人サイズに戻る。
それを見たグレアも人化した。
「わざわざ、負けるのがわかっていてなぜ戦う?」
「ご主人様、あれを」
グレアが指差す先に居た小さなスレイプニルの足に金属。
鎖が杭に繋がれている。
小さなスレイプニルは体力が落ちているのかうずくまっていた。
トラばさみ?
こっちにもあるんだな。
別の物を捕まえる罠にかかった?
逃げようと暴れたのか足の肉が抉れ骨が見えている。
俺はそのスレイプニルへ近寄った。
トラばさみを広げ足を抜く。
そして、フルヒールでその足を治療した。
回復した足でトントンと地面を蹴って感触を確かめる。
フンフンと俺の匂いを嗅いだ後、俺を舐め始めた小さなスレイプニル。
大きな二頭も俺に近寄り舐め始めた。
「羨ましいです」
ちょっと違うぞグレア。
スレイプニルは俺に懐いたようだった。
ん?
近寄る光点。なぜこんなところに人が?
煌びやかな鎧に剣を身に着けた騎士のような者、杖を持ちローブを纏った魔法使いのような者、短刀を持ったシーフのような者が現れた。
おぉ、パーティー初めて見た。
「お前、せっかく罠にかかったスレイプニルをなぜ逃がした!」
リーダーらしき騎士が俺に言った。
「逃がしてないぞ?
懐いたんだ。
それにお前このスレイプニルは体力も落ちていた。
放っておけば死んでいたと思うが?
それに歩けないスレイプニルをどうやって連れて行く?」
「ぐっ」
言い返せないなら言うな。
「三頭のうちの一頭を俺に渡せ」
「何で?」
「必要だからだ」
「何に必要?」
問いに問いで返す俺。
「我が帝国のご息女であるエリーザ様がスレイプニルを求めておられるからだ」
「スレイプニルは嫌がっているが?」
「我々は帝国から派遣された冒険者。
帝国とやり合う気か?」
「帝国って何だ? グレア」
「知りません」
正直国のパワーバランスなんて知っているはずもなく。
ベアトリスあたりなら知っているんだろうが、呼んでくる気もない。
「あんた、帝国って何だ?」
って聞いてみたが、そう言えばベアトリスが襲われたのは帝国との戦争推進派だと聞いたような気がする。
壁向こうの国がそれなのかもしれない。
「カール・アッカーマン率いる我が帝国の事を知らないのか?」
「田舎者なので知らないなぁ」
知らないものは仕方ない。
「バカにしやがって。これは王国側から我々に喧嘩を売ったと考えていいのだな?」
「帝国に喧嘩を売ったつもりは無い。
喧嘩を売るなら俺が買うぞ?
俺は壁向こうの村を統べる者だ。
住民は数十人、相手にしたかったら来ればいい」
「我々は数万人を有する軍でいく。
勝てると思うなよ!」
捨て台詞と共に騎士たちは去った。
「いいのですか?」
グレアが心配そうに聞く。
「俺とグレアとノワルを普通の人間が相手にできると思うか?」
すこし考えた後、
「ちょっと、攻めてきた側がかわいそうになりました」
「一応、俺って決戦兵器だからな。エグイ魔法も持ってる。まあ、使う気は無いがね。
俺の周りにスレイプニルが集まってきた。
「お願いがあるんだ。
ドリスという女の馬になってもらえないか?
悪い奴じゃない。
痛めつけるような奴でもない、だから頼むよ」
俺が頭を下げると、一番大きな父親の馬?
が俺の頭を舐めた。
「いいのか?」
『ブルル』と言いながら縦に頭を振る
「悪いな。俺の我儘を聞いてもらって」
ブルルルっと頭を振り否定する。
「気にするなって事らしい」
そんな言葉のない会話をしていると、ノワルが戻ってくる。
「お待たせなのじゃ。
アリヨシ、スレイプニルを手懐けたのじゃな」
「いろいろあってな、手懐けはできたが、後でベアトリスに怒られそうだ」
「ベアトリスは怒らんよ。
アリヨシを信用しておるでな」
「だといいんだがね」
グレアがノワルの背に乗り続いて俺が乗ろうとすると、一番大きなスレイプニルがひざをつき待機する。
「乗れって?」
「ブルル」と言って頭を縦に振る。
肯定らしい。
俺がスレイプニルに乗ると立ち上がり駆け始めた。
俺は裸馬に乗ったことは無いが、気を遣ってくれているのか問題なく乗れる。
俺のあとからノワルと母スレイプニル?
と子スレイプニルが追いかけてきた。
「我よりは遅いようじゃな」
ノワルはニヤリと笑いいスレイプニルを見るが。
一番大きなスレイプニルが口角を上げ笑うと、一気に加速する。
「おお、やるのうではこれはどうじゃ?」
そう言った後、音速を越えた。
それを追うスレイプニル。
「ノワル、俺たちを置いていく気か?
俺が乗っているスレイプニルは早いかもしれないが、後の二頭はついて行けんぞ?
そこを考えられないと……ベアトリスのような奴ができる」
念話で言うと。
「アリヨシ、調子に乗りすぎていたのじゃ。
みんなと一緒にオセレ村に向かうのじゃ」
そう言うとノワルは速度を落とす。
そして、ノワルと三頭のスレイプニルが共に飛び、オセレ村に到着した。
小説を読んでいただきありがとうございます。




