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エルフが仕事を覚えてくれました。

誤字脱字の指摘、感謝です。

 エルフたちが集落で暮らし始めた。

 俺が作った土(石?)の家は意外と居心地がいいらしく好評である。

 温泉も体の疲れが取れると言っていた。

 彼らは、自分で周囲に畑を作り野菜の栽培を始めた。

 まあ、更地にしていたところに種を植えただけなのだが。

「この土地は育ちがいい。魔力が満ち溢れている」

 とクルツが喜んでいた。

 ごめん、それ俺のせい……とは言えなかったが、

「ふっふーん。うちにはドラゴンやフェンリルのような魔獣も居るからかもしれないなあ……」

 と意味もなく誤魔化しておいた。


 馬小屋を作り、四頭の居場所も作った。

 こいつらは、岩塩や農作物の運搬に活躍してもらおう。

 そう言えば、眠らせて連れてきたフォレストウルフは、フェンリル状態のグレアが現れるとすぐに怯え、腹を出して服従のポーズをとった。

 グレア曰く。

「あのフォレストウルフは夫婦ですね。メスは妊娠していて臨月が近いそうです」

 ということだった。

 確かに腹がデカいな。そんなのに腹出して服従のポーズなんて大丈夫だったのか? 

「『餌は出す。しばらくオスのほうだけでいいからうちの番犬になってもらえないか? 』って言ってもらえない?」

 と俺が言うと、

「フォレストウルフは『畏まりました』と言ってますね。『できれば静かに暮らす小屋があると嬉しい』とも言っています」

 ふむ、犬小屋かぁ。

 犬飼うなら要るよな。

 エルフの家を作った方法で、チャッチャと犬小屋を作った。

 ちょっと広め。中には草を乾燥したものを置いておく。

 尻尾を振りながらフォレストウルフの夫婦は新居へと入っていった。


 クルツに依頼し、エルフたちを集めてもらう。

「それじゃ、俺の依頼なんだけど、一つは農場の管理。内容はランニングバードと牛の世話と卵と牛乳の回収。大豆と砂糖大根の世話。後には小麦の栽培もする予定なのでそっちも増えます。まあ、その時には大豆が終わっているから、労力的には特に問題はないと思っている。砂糖大根からは砂糖の生産。大豆は後に作ってみたいものがあるのでそれを作るかもしれない。ちなみに、砂糖大根から砂糖を生産する時には水の精霊や炎の精霊へ依頼しなきゃいけないんだ。砂糖の生産については、あとで俺の方でやり方を教るから」

 ウンウンと頷いて聞いているエルフ。

「もう一つは岩塩鉱山からの岩塩を掘り出して欲しい。これは地の精霊に依頼してブロック状に切り出してもらえたらと思う。切り出した岩塩は鉱山横の倉庫へ仕舞っておいて、ルンデル商会のが引き取りに来たら納品と言う形になる。とりあえずは必要量が揃えばいいので、それが終われば農場の手伝いに回ってもらうことになるかな。まあ、今のところはそんな感じ」


 エルフの一人から手が上がった。

「ランニングバードを飼育しているのですか?」

「そういう事。卵を原料にお菓子や調味料を作りたいと思いと思っているんだ」


 別のエルフが、

「牛乳というのは何でしょう」

「牛の乳のこと。これもお菓子や料理の材料にする。乳の絞り方も教えるよ」


「はい!」

 次のエルフの手が上がった。

「どうぞ」

「砂糖の生産とは?」

「飼料大根を改良した砂糖大根からエキスを抽出して濃縮、そして水の精霊に依頼し水分を飛ばして砂糖を作ります。これを売ってお金にしますので、製法は外に漏らさないでください」


「いいでしょうか?」

 手を上げるエルフ。

「はい、あなたどうぞ」

「岩塩鉱山とは?」

「その名の通り結晶化した塩の鉱山です。ここから少し離れたところで採掘してもらいます」


「他に何かある?」

 見回すが意見は無いようだ。

「みんなにやってもらうのは、ここの収入にかかわります。収入に応じて給料も出しますので、よろしくお願いします」

 俺はエルフたちに頭を下げた。

「アリヨシ様、我々はここで暮らすと決めて来ているのです。あとは我々にお任せください」

 クルツが言うと、エルフたちも顔を見合わせ頷くのだった。


 それから数週間で、エルフたちは仕事のやり方を覚えた。思ったより早い。

 順調に砂糖と牛乳、卵のストックが増えていく。岩塩倉庫にも着々と在庫が貯まりつつあった。

 整備した道も好評で、馬車に乗り合い仕事に出掛ける姿が当たり前になった。

 砂糖は水の精霊に頼めば乾燥状態にしておいてくれるので問題なし。

 牛乳は余ったら水分抜いて全乳粉にでもしてストックするかな。生クリームやチーズ等の加工製品も考えないと。

 卵は比較的日持ちするけど、卵焼きやオムレツのようなものばかりじゃちょっとね……。とはいえ、俺の中のレシピがその程度なのも事実。あと思い浮かぶのは、クッキー、ケーキなどのお菓子。あとマヨネーズ位かな。とりあえず現状では余剰を分配して食べてもらうってことで。

 エルフたちには岩塩の欠片を持ち帰ることは咎めていない。砂糖も一定量は支給した。塩と砂糖がふんだんに使えるようになったと皆喜んでいる。

 実感はないが砂糖も塩も高いらしいのだ。

 そういえば砂糖の小さな壺一個が金貨十枚だって言ってたな。まあ、だから商売をしようと思ったわけだが。


 ベアトリスの家を建て終わりそうなドワーフたちから提案があった。

「巨人の旦那、俺たちも家族を連れてここへ移住しちゃいかんかね」

 ってことらしい。

 さすがに一人では決めかねるので、四人に相談してみたが、

「ご主人様にお任せします」

(われ)らを裏切れば、食ってしまえばよい」

「エルフはドワーフと仲が悪いわけではないので、問題ないですよ」

「建築技能、鍛冶技能を持つドワーフが来るのなら、ここの発展はしやすくなるでしょうね」

 一人、ちょっとズレた意見もあったが、概ね賛成だった。

 ドワーフは鉱山とかも得意そうだし、後々は岩塩鉱山はドワーフ。農場はエルフというふうに分業にしてもいいかな。


 というわけで、ドワーフの移住も確定した。ベアトリスの家を建て終わったらそのまま飯場に居残り、自分たちの家を作るそうだ。暫くしたら来る予定のルンデル商会へ手紙を言伝て、家族に来てもらうらしい。

 家族会議って要らんのかね。

「勝手に決めて!」と怒られるような気がする。

 ドワーフも六人程度だからふえても二十人までか。それでも一人だった頃に比べれば格段の進歩だと思う。


 エルフとドワーフたちが働く姿を見てベアトリスが言う。

「ここをあなたの領都にします」

 ベアトリスの壮大な計画は始まったばかりのようだ。


読んでいただきありがとうございます。

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