砂糖を作ってみよう。
とりあえず、現状の飼料大根でどの程度の砂糖ができるのか確認しておこうと思う。
ニ十株程度を成長させ収穫し、細かく切って湯の中で煮出す。
煮出した飼料大根を取り出し、木灰を使ってアクを取り煮詰めてシロップを作った。
シロップの水分は水の精霊に依頼して抜いてもらう。
すると、砂糖の塊?ができた。
結構な量だ。砂糖大根の糖度って高いんだなぁ……。
軽く塊を砕き一口食べてみると、おお……甘い……。
何をしているんだろう?って感じで円卓に座って覗いている四人組。
「ベアトリス、あーんして」
「あーん」をするベアトリス。
口に砂糖の欠片を放り込んだ。
「あっ、甘い」
頬を押さえて驚くベアトリス。
「ご主人様、私も」
「我も」
「アリヨシ様、私も」
雛鳥のように口を開けて待機する三人。
欠片を放り込む。
「アリヨシ」
「ご主人様」
「アリヨシ様」
「あまーい!」
三人も甘さに驚く。
一応純粋な砂糖だからなぁ。
「ベアトリス、コレって金になる?
あの畑で作っている飼料大根で作った砂糖なんだ。
南方産の砂糖より安くして周囲に売り払えば結構な利益になるんじゃないか?」
ベアトリスは腕を組み、少し考える。
頭の中で計算しているのだろう……。
そして、
「はい、莫大な利益を得ると思います。
北部で砂糖が生産できるのです。利益が出ないはずがありません」
「ちなみに、この前買った壺の砂糖でいくらぐらいするんだ」
「えっ、えーと」
「言い辛いぐらいに高い?」
「はっはい。金貨十枚ぐらいでしょうか」
「高ッ」
お徳用上白糖一袋百円で売っているスーパーを思い出す。
「飼料大根を煮出す燃料があれば基本出来るからな。
燃料を薪にするなら木灰は燃えカスからとれるから要らないな。
製造費については激安じゃないかなぁ。
あとは輸送費がどのくらいかかるかだろうね」
「薪はこの周辺の森から確保するとして、やはり輸送費ですね」
「ただな、圧倒的に人手が少ない。
近くの村も人手が足りないから俺が開墾した場所に手が出せなかったんだ。
製法は簡単だから俺じゃなくてもできると思う。
品種改良した飼料大根。
んーもう砂糖大根でいいや。
この種さえ外に漏れなければ希少性は確保できるんじゃないかな」
ぽかんと話を聞いているケモノーズ。
口に砂糖のかけらを追加した。
再びもぐもぐする
ウルはある程度わかるのか頷いていた。
ウルは結局何者なんだろう……。
「ベアトリス、悪いんだがオヤジさんと相談してきてくれないか?
岩塩はベアトリスが任されてはいるが、砂糖となると一応オヤジさんに相談しておいたほうがいいだろう」
「はい、わかりました。」
その返事のあと、
「これが事業として成立すればアリヨシ様が……フフフ……」
ボソリと何か言うベアトリスの不穏な声が聞こえる。
「ノワル、悪いんだがベアトリスを家まで送ってもらえないか?」
ノワルは口をもぐもぐさせながら、
「おほ、りょふかひなのじゃ」
と言った。
ベアトリスは立ち上がり俺に近寄る。
「アリヨシ様、早速行ってきます。
出来上がった砂糖を何かに詰めてもらえませんか?
ノワルさんドラゴンに戻ってもらえないでしょうか?」
俺は、調理場から空いた壺を探し出しその中に砂糖大根産の砂糖を入れる。
ノワルは少し離れバハムートに戻った。
「この砂糖はお父様に見せるために持って行きます」
ベアトリスは壺を受け取ると、小脇に抱えてノワルに乗る。
「ベアトリス頼んだぞ。
ノワル、気をつけてな」
「大丈夫じゃ。
我を倒せるのはアリヨシぐらいなのじゃ」
ニヤリと笑うノワル。
「それでは行ってきますね。
ノワルさん行きましょう」
「了解なのじゃ」
ベアトリスを乗せたノワルはクルーム伯爵の館へ向かった。
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