精霊魔法を使った品種改良を行いました。
朝食が終わり、農場へ向かう。
今日は農作業が主なのでグレアとノワルとウルで行くことにした。
「今日は大豆と飼料大根の種まきだ。
まず大豆ね。
俺が畝を作るから、グレアとノワルはその中央に大豆の種を置いてくれるか?
ウルは置いた大豆の上に土を被せてくれ。
ちょっとでいいぞ?」
人差し指と親指でこれくらいって感じ出見せる。
「ご主人さま、わかりました」
「了解なのじゃ」
「グレアよ、どちらが多くの列に大豆の種を置けるか我と競争じゃ!」
「ノワル様、望むところです」
ケモノーズは対抗心を燃やす。
「アリヨシ様、精霊魔法を使っても?」
「ああ、それでいい」
「了解です」
俺が畑全体に畝を作り、中央を少し凹ませておく。
すると、グレアとノワルが競い合い、あっという間に大豆の種を置いてしまう。
勝負はノワルに軍配が上がったようだ。
そしてウルが土をかける。
最後に大豆の畑の上に軽く雨を降らして終了だ。
「アリヨシ様、早すぎです。
この規模なら一日仕事のはずなのですが……」
ウルあきれ顔で言った。
「まあ早いに越したことは無いだろ?」
「まあ、そうですが」
グレアとノワルのケモノーズが褒めてアピールで待っていた。
グレアは期待で尻尾がブンブン回る。
グレアとノワルの頭をガシガシ撫でると二人ともにっこりと笑った。
俺の横に気配。
「ウルもか」
コクリとウルが頷く。
「みんなありがとうな」
そう言ってウルの頭も撫でた。
畑用の部分とランニングバードの放牧場を比較してふと思った。
「ウル、魔力があれば植物を早く育てられるんだよな」
「そういうことになります」
「なら、思うタイミングを木の精霊に依頼すればそこで止められる?」
ウルがブツブツと何かを話している。
「木の精霊に聞いてみましたが、できるそうです」
だったら、年単位で行う品種改良が分単位でできるって事だ。
俺は飼料大根の種をひと掴みばら撒く。
「悪いな、木の精霊よ根が太くなるまで育ててくれ」
そう言うと、魔力が吸われる感覚が起こり、目の前にあった種は葉が茂り根が太る。
それを引き抜き削って食べ、甘いと思う物だけをヒールで癒して埋めなおした。
甘味のあとにえぐみもあるので、ケモノーズとウルにはちょっと食べさせられないな。
甘くないものは、牛の放牧場に投げ込んだ。
残ったのは十株程度。
グレアとノワルは暇なのか乳しぼりと卵回収に精を出している。
「木の精霊、次は、花が咲くまで進めてくれ。
ウル、花のめしべに花粉をつける事は可能かって聞いてみてくれ」
「『めしべ? おしべ? なにそれ?』って言ってます」
俺の知っている言葉と精霊が知っているおしべとめしべを表す言葉、違うのかもしれんね
仕方ない、受粉は手でやるか……。
花が咲いた物の一本を折り、他の花に擦り付ける。
これで大丈夫かねぇ。
わからんがやってみるか……。
「木の精霊、それじゃ、種が成熟するまで進めてくれるか?」
葉が萎れ茎が黄色くなり種ができた?
一株何百という種が採れた。
十株で数千か……。
黒いのや白いのがあるな。
元々の種が黑かったから、もしかしたら受粉できなかったり成熟しなかったりするものもあるのかもしれない。
よく混ぜて、もう一回種を適当にバラまく。
木の精霊に育ててもらうと
ありゃ、やっぱり育たない奴もあるや……。
それでも百株ぐらいが育った。
ここまで三十分程度しかかかっていないんじゃないだろうか。
さあ、あとは同じ事を繰り返すだけだ。
十回ほど同じことを繰り返しているうちに、どの飼料大根の株も安定して甘くなった。
というか甘すぎる。
糖度いくらなんだ?
もう砂糖大根と言ってもいいんじゃないかな。
わかんないけど……。
もう一度種を取り、畝を作ってグレアとノワル、ウルに手伝ってもらって種を蒔いたところで夕方になった。
木の精霊に言って、程々育ててもらっておく。
さあ、砂糖製作までもう少し……。
小説を読んでいただきありがとうございました。




