冒険者ギルドに登録できました。
何かを思い出したように手を叩くドリス。
「アリヨシ様の冒険者登録をしませんか?」
冒険者登録か……。
後々必要になりそうだな。
「わかった、よろしく」
すると、服を持ってきた。
「アリヨシ様、父の物ですが着替えてもらえますか?」
厚手のシャツにズボン、なぜか皮鎧。
「熊スーツいかんの?」
「少しは冒険者らしい格好をしたほうがいいと思います。
今のままでは蛮人ですから。
あっ、ショートソードを渡しておきますね」
服を着替え、鎧を着け、剣を帯びる。
それが終わるとドリスと共に冒険者ギルドへ向かうのだった。
扉もない小屋のようなところにドリスと一緒に入る。
「ドリス様、いらっしゃい」
カウンターには二人、男性と女性。
ギルドマスターらしき恰幅のいい男がドリスに声をかける。
「マスター、この人の冒険者登録をして欲しいんだけど」
「ドリス様が下男以外の男を連れてくるのは珍しいな」
ドリスを見てギルドマスターはニヤリと笑う。
「それじゃ、名前を教えてくれるかな?」
装備がショボいので軽く見られているようだ。
まいっか……。
「アリヨシと言います」
「アリヨシね……」
カードに俺の名前を記入したようだ。
「この台の上に手を置いてくれる?」
台にはカードを置く場所と、手を置く場所がある。
俺は言われるがまま台に手を置く。
「じゃあ、君の魔力をカードに登録するね」
ボン!
台から煙を吹く。
「ドリス様!
ドリス様が連れてきた人を冒険者登録しようとして壊れた登録機はこれで三台目です!
業務ができないじゃないですか!」
三台が壊れた……。一台は俺、残りはグレアとノワルか。
「マスターすみません。
でも冒険者登録の業務なんてこの村では月に一度あるかないかでしょ? それまでに代替機を取り寄せてください」
実情を知っているのかニヤニヤしながらギルドマスターへ言った。
「まあ、そうですけど……」
ギルドマスターは言い返せないようだ。
「登録はどうなった?」
「マスター、どうなったの?」
俺とドリスに詰め寄られたが自信があるのか、
「登録はできていると思いますよ。
機械が犠牲になって登録する感じですね」
と説明してくれた。
その後、ショボい装備の俺に敬語を使うドリスが気になったのか
「というか、この人は何物です?」
ギルドマスターは聞いてきた。
「この人はベアトリス様の夫になるかもしれない方です」
自分ってことは言わないんだ。
「ベアトリス様とは、あのクルーム伯爵の?」
「そういうことになります。
確定ではありませんから他言は無用ですよ」
「はっ、はい、わかりました。
しかし凄い魔力です。今までで一番の壊れ具合」
形を留めていない登録機。
「それでは、アリヨシ様のカードができましたので、ご確認ください」
急に態度が変わるギルドマスター。
俺の前にクレジットカード程度の大きさのカードが置かれる。
「どれどれ、名前は「アリヨシ」、種族「人」、職業「巨人」……。
巨人て職業なんだ……」
俺のカードを見て苦笑いするドリス。
「まあ、アリヨシ様をよく表しているカードですね」
「まあ、仕方ないか」
「はい、アリヨシ様は規格外ですから」
あっ、流された。
「これが依頼の掲示板?」
おれは依頼表が張られた場所に向かいドリスに聞く。
「そうなりますね」
「傭兵の依頼とかもあるんだな」
「はい、兵を揃えるための傭兵だったり、商人の護衛だったりします。
これは戦、兵を揃えるためみたいですね。
クルーム伯爵からは出ていないようです。
戦があるなら私も出なければいけませんから」
辛そうな目をするドリス。
「その時は俺とノワルかグレアで従者になって守ってやるよ」
俺の話を聞いたドリスが、
「はい、お願いします」
と言って嬉しそうに抱きついてきた。
ギルドマスターがそれを見て驚いている。
ドリスが女を見せることは少ないのかもしれない。
「今のところ討伐とかの依頼は無いなあ。ドリス的に何かある?」
モジモジモードに入るドリス。
「うっ、馬が欲しいです」
「そういや、俺んちに討伐に来た時、途中で逃げたんだよな。
だったら買ったほうがいいんじゃない?
出すけど」
「移動速度が速い馬は高くなってしまいます。
アリヨシ様の家に行くにはグレアさんかノワルさんに乗せていってもらわなければいけません。
できれば自分でも行けるようにしたいのです。
ですから空を飛べるような……」
おお、一気にハードルが上がる。
「空を飛べる馬ってどういう種類」
俺が聞くと、
「羽で飛ぶのがペガサス。
魔力を足場にして空を走るのがスレイプニルですね」
とドリスが答えた。
ペガサスもスレイプニルも居るのね。
「どっちが欲しい?」
「速さを求めるのならスレイプニルがいいと思いますが、この世界のどこに居るのか……」
スレイプニルかぁ……。
確かにどこに居るのでしょう。
ノワル辺りに聞いてみるかな。
「ふむ、オセレ村の領主様の依頼だ。
何とか探してみるよ。
期待せずに待っていてくれるかな?」
「はい」
冒険者ギルドを出ると空を見ると夕闇が迫っていた。
「それじゃ、俺、家に帰るな」
俺が言うとドリスの手が俺の手に重なる。
「寂しいですね」
そして体を預けてくるドリス。
しばらくすると、
「またのお越しをお待ちしております」
と言って言うとドリスは体を離した。
「ああ、またな」
俺はドリスに手を振ったあと全速で家に帰るのだった。
小説を読んでいただきありがとうございました。




