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焼き肉パーティをしました。

誤字脱字の指摘、助かっております。

 次の日の朝になり、焼き肉の準備を始める。

 グレアはドリスを、ノワルはベアトリスを迎えに行った。

 伯爵の領都にドラゴンが現れたら結構混乱しそうだがどうなるのかな? 一応、途中からは人化して門の前に行けとは言っておいたが……。

 まあ、俺はウルと肉の準備だね。

 肉の下処理をして、一口大に切る。お嬢様方の口に合うように小さめで……。

 ワイバーンの肉質は鳥っぽい部分と牛っぽい部分があり結構色々楽しめそうだった。

 ワイバーンのタンも手に入れていたので皮をそぎ薄くスライスする。

 尻尾は石で寸胴を作り、肉を取った骨で出汁を取りテールスープにする。味付けは塩しかないんだけどね。

 ウルに灰汁取りを頼み、弱火でコトコト煮込んだ。

 女性陣ってどのくらい食べるんだろ……。

 余ったらグレアとノワルが食べるから大丈夫か。

 前の日に地の精霊と苦心して作った七輪。

 鉄網は無いので、石を薄くスライスして油抜きの穴を開けた石網だ。

 七輪を五つ円卓にセット、それぞれの種類の肉を盛った皿を七輪の横に置いておく。

 後はお嬢様方が何を持ってくるか……。

 グレアとノワル待ちになった。


 しばらくすると、グレアが戻ってくる。

「ご主人様、ただいま帰りました」

 ドリスを下ろし人化したグレアが現れる。

「アリヨシ様、この度はお呼びいただきありがとうございます」

 ドリスも来た。


 おっとスカートを履いている。

 騎士姿ばかりだから新鮮。


「たまには女の子らしい姿をしてみようかと……」

「ドリス、スカートが似合ってるぞ」

 俺がそう言うと、ドリスは真っ赤になってモジモジしていた。

「多くはないのですが、パンと野菜です。

 焼いても美味しいものを持ってきました」

 そう言ってドリスは新鮮そうな野菜が入った箱を出す。

 イモと、キャベツ?

 これなら肉を巻いて食べられそうだ。

 ウルに野菜を適当に切って、皿に盛っておくように言う。

 ウルは手早く野菜を切り始めた。


 俺は七輪に火を入れる。

 火の精霊に依頼するだけである。

 炭を使わない代わりに俺の魔力を使うわけだが、この程度なら自然回復の方が多いので魔力が減ることもない。

 火の準備をしている間に、ベアトリスがノワルに乗って現れた。


 ん?

 首に樽。

 両手に樽。


「何だその格好」

「ベアトリスがワインを持っていくと言うて煩くてのう、仕方ないので、言われるがまま三樽じゃ」

 ベアトリスが滑り降りてくる。

「アリヨシ様、お呼びいただきありがとうございます。

 ドリス殿は無難なものを持ってきているでしょうから。

 私はワインにしました」


 こいつ飲む気満々じゃないか。

 ノワルも人化して俺の方へ来る。


「領都では大変だったのじゃぞ!

 領都の入り口でベアトリスと合流して館に入り、庭から酒ダルを持ってベアトリスを乗せて飛んだのじゃ」

「あれ、絶対人さらいと間違えてますよ。

 帰ったらどうしましょ……」

 楽しいのだろう、ベアトリスがニコニコしていた。


 ワイバーンの脂身をのせると、「ジュッ」と音がする。

「もうそろそろ、肉を焼いても大丈夫。

 さあ、席に座ってみんなで楽しんで!」

「アリヨシ様は?」

 ウルが聞く。

「俺は食べなくてもいいから大丈夫。

 みんなが食べるのを見て楽しむよ。グレアとノワルは人化して食べること、わかった?」

「ご主人様、了解です」

「わかったのじゃ」

 そういうと、席につき食べ始めた。


「これ美味しいです。ワイバーンの舌がこんなに美味しいなんて」

「この肉も柔らかい。筋を切ってある」

「肉汁たっぷりなのじゃ」

「このスープも美味しいです」

「パンに挟んでもいいし塩を軽く振りかけてもいい。

 そこの葉っぱに巻いても美味しいかもね。

 あと、ベアトリス提供のワインもあるからね。

 せっかくだからワインを冷やしておきました。俺は注げないから自由に飲んで」

 それぞれの食べ方で食べる五人。

 グレアとノワルはガツガツ、ウルはちびちび。ドリスとベアトリスはパクパク。


 ワインが入り騒がしくなる。

「最近、ご主人様がドリスさんとベアトリスさんを相手して、私を相手してくれません」

「我もじゃぞ、あの二人に取られておる」

「でも、あなたたちはアリヨシ様と寝られる」

「いいわよね、人化してなかったら撫でてくれるんでしょ?」

「ご主人様の撫では最高なんです」

「そうじゃ、あれはいいのう」

「私なんて、おしっこ漏らしたの見られたんだから」

「えっ、私も……」

 共通性を見いだし、みつめあうドリスとベアトリス。

「アリヨシ様は私を肩に乗せてくれる。

 今日は一緒に料理しました。だから満足」

 何か勝った感があるウル。

 こういうとき、男は下手に関わらない方がいいと思う俺。

 我関せずである。


 そして、魔の時間が訪れる。

 グレアとノワルははじめてのワインで酔ったのか、早々にホールの奥に行って人化を解き寝始めた。

 これで、ドリスとベアトリスのお泊まり確定である。

 落ちると思う。

 ベアトリスの目が据わっている。

 乗せて帰らせれない。

 ドリスとウルも危機を感じたのか、同じくホールの奥へ行き、毛布にくるまって寝始めた。

 去り際に「がんばっ」じゃないと思う。


「アリヨシ様わぁ、私のことをぉ、どう思ってるのれすか?」

「可愛いと思ってるぞ?」

「可愛いと思ってるなら、何で手を出さないのれすか?」

「出せないだろうに?

 俺は大きすぎるよ」

「そんなことはわかっているのれす」


「だったら聞くな」と言いたい。でも言っちゃいかんのだろうな。


「エヘッ、これなーんだ」

 手には小さなスプーン。

「スプーンだろ?」

「それがぁただのスプーンではないのれす。

 その名も『おばさんのスプーン』」

「おばさんのスプーン?」


 例のアニメしか思い浮かばん。


「縮小化の魔法を開発した魔女ベルタ、通称『おばさん』。

 そのおばさんが手掛けた縮小化の魔法が使えるスプーンでしゅ。

 しかし必要魔力が多すぎて、人間はもとよりエルフでさえ使えなかったと言いましゅ……いったい誰のために作ったんれしょうね。

 縮小化の魔法は失伝され、誰も使う者が居ない。

 そして今では誰も使うことができないスプーンが残るだけなのれす」

 得意気に話すベアトリス。

「エルフがダメでも、アリヨシ様のような膨大な魔力を持つ巨人なら使えるのではないれしょうか?」

「ありがとな、探してくれていたんだ」

 ベアトリスはニコリとすると、

「手を出してくらはい」

 と言った。

 俺が手を出すと、ベアトリスが手のひらの上にスプーンを置く。

 俺はスプーンに魔力を流す。

 するとスプーンが見ていられないほど輝きだした。

 その光が消え目が慣れてくると、目の前に俺より少し小さなベアトリスがいた。

 ああ、小さくなったんだな。


「…………」

 ポカンとベアトリスが見俺を見ている。

 今の俺は、着ぐるみを着た人間状態。

「がおーっ」

 襲うふりをすると。

「アリヨシ様れす、抱き締められるのれす。

 すきなのれすぅーー」

 ベアトリスが抱きついて叫ぶ。

 そして、ひとしきり叫ぶと糸が切れたように俺にもたれて寝始めた。

「面倒な女……」

 俺は、お姫様だっこでベアトリスをホールの奥に連れていく。

 そして、毛布にくるんで寝かせた。


 空は赤くなっている。

 朝からだから、結構長い時間飲み食いしたんだな。

 俺は片付けを始めた。

 スープは残ってるな。パンも少々ある。肉は綺麗に無いね。

 ワインは残り二樽。まあそんなもんでしょう。

 出汁に使った骨や野菜くずは穴を掘って、火の精霊に焼却処分してもらう。

 食器は洗い場に持っていって水の精霊に洗ってもらった。

 綺麗に拭き取り、食器を片付ける。

 結構な量があった。

「ふう、終わった」

 そこそこ時間がかかったと思うのだが、誰も起きてこない。

 みんなで食べて話して疲れたかな? 

 時間潰しにウル用に作った風呂に入る。

「気持ちいいねぇ」

 空には星が瞬きはじめていた。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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