ノワル、大活躍です。
誤字脱字の指摘、助かっております。
ノワルとドリスが貴族の坊っちゃんのところへ進む。そしてドリスが報告を始めた。
「アントン様、お約束通り巨人を討伐して参りました。そこに居りますのが討伐した巨人です。従属したため一度連れてきました。報告の後に帰らせます」
「倒してないなら、約束を守ったことにはならん」
あー、自分の思い通りにならないから、駄々をこねたかな?
「アントン様がおっしゃったのは『巨人を討伐してこい』ということ。殺せとは聞いておりません!」
反論するドリス。
坊ちゃんはドリスの隣にいるノワルを見た。
「この者は?」
「巨人の巫女です。あの巨人を慕い仕える者です」
ノワルの周りを歩き舐めるように見る坊ちゃん。
「なかなかの美形だな。この歳から鍛えれば……」
坊ちゃんはニヤリと笑った。
「この者をお前の代わりに差し出せば今回のことは無かったことにしてやろう」
坊ちゃんはドリスに言った。
「それはやめてください! あなたがどうなろうと心配はしませんが、この村が破壊されるのは困ります」
村の事を心配するドリス。
まあ、ノワルの実力を少しでも見てたらそうなるよな。
「このような娘に、村が破壊できるはずがあるまい? どうじゃ、娘、私の所へ来ぬか?」
坊ちゃんがノワルに近づき、手を取ろうとしたとき、
「嫌じゃ! なぜ、お主のような肉ダルマと一緒に行かねばならんのじゃ?」
そう言うとノワルの手が霞む。「チッ」と何かに掠るような音がした。
坊ちゃんが膝から崩れ前のめりに倒れそのまま動かない。
ドリスに見えたかな? ノワルは坊ちゃんの顎に拳を掠らせ意識を刈り取ったのだ。
器用だねぇ……。
おっと、ノワルが俺の方を向きドヤ顔である。
唖然とする騎士たち。
数瞬の後、
「アントン様、大丈夫ですか?」
騎士の隊長らしき男が坊っちゃんに駆け寄る。
気絶していることに気付き、坊っちゃんを揺するが坊っちゃんは起きない。
呼吸と心音を確かめ生きていることを知り安堵する。
「娘! アントン様に対してなんということを!」
「その肉ダルマが我を連れて行こうとしたからじゃ」
「アントン様の事を肉ダルマとは……。皆の者その娘を捕らえよ!」
ノワルに騎士たちが群がるが、
「チッチッチッチッ」と音がすると騎士たちが崩れ落ちる。そしてさほど時間も経たずに騎士たちも意識を失うことになった。
「殺さないにしろ結構やらかしたんじゃないか?」
「我は殺してはおらんぞ?」
「そこは偉いと思うぞ、お前の力であの程度を殺さなくするのは大変だろ? 偉い偉い」
俺がそう言うと、
「そうなのじゃ、我は偉いのじゃ。じゃからのうアリヨシ……」
「ああ、わかってるよ。家に帰ったら撫でてやるからな」
ノワルが「にー」っと俺の方を向いて嬉しそうに笑う。
「アリヨシ様、どのようにしましょうか?」
ドリスが不安げに俺を見上げた。
「恐怖で心を折ってしまうのが良いんじゃない? そうだなあ、俺とドラゴン化したノワルの間で目を覚ましてもらうとか……」
俺は腕を組んで考える。
「んーでもそれじゃドリスに矛先が向きそうだから……ノワルは人化したままでいいか? ノワルに坊ちゃんを起こしてもって、俺の攻撃の寸止めとノワルの攻撃……ノワルの攻撃はキン〇マをぎりぎり外す程度でお願いします。で、強引に『もうドリスにちょっかい出しません』的な書類を書いてもらうって流れでどう?」
「アリヨシ様、でしたら公式な契約書を作成しましょう。そうすれば『そんな記憶がない』と言われても効力を発揮しますから。契約書用の皮羊紙もこちらにありますので」
「さすが、ドリス。よく知ってる」
「いえ、それほどでも……」
ドリスは赤くなって俯いた。
ドリスが書類を作り終わると、俺は坊ちゃんをつまみ館の外へ運ぶ。これで起きないのもなかなかだと思うが……
俺の前に坊ちゃんを寝かせる。そしてノワルが木の棒で突っつくようにして坊ちゃん起こした。
「ん? なんだ? なぜこのようなところで寝ている?」
「肉ダルマ、やっと起きたのか?」
ノワルが坊ちゃんに話しかけた。
「肉ダルマとは誰だ?」
「お前の事じゃ。見事な肉ダルマじゃろ?」
みるみる坊ちゃんの顔が赤くなる。
怒ったかな?
「バカにするなぁ!」
「バカにはしとらんのじゃが……。それでお主に頼みがある。この書類には『今後一切、ドリス・ベックマンに手出ししません」って書いてあるのじゃ。サインをしてもらえんかの?」
ノワルが書類を差し出した。
「嫌だと言ったらどうなる? 俺は伯爵家の次男だぞ? こんな小さな村をどうにかするぐらい容易いんだ」
典型的なバカ息子のようだ。親の威光を笠に着てる。
「そうじゃのう、嫌だと言ったら……」
俺は大きく振り被って拳を打ち下ろし坊ちゃんの顔の直前で止めた。拳圧だけで坊ちゃんがごろごろ転がる。
「あの拳でミンチにされる。あとは……」
ノワルが大の字に転がる坊ちゃんの股間を狙い踏み抜いた。ちゃんとキン〇マはぎりぎり踏まない程度で……。
「ベコン」という音がすると、ノワルの足が地面に埋まった。
「我のこの足でお前のキン〇マを踏み抜く……というのもある。で、どうする?」
ふと見ると坊ちゃんの顔は青ざめていた。
「書く! 書くから……許して!」
心が折れたかな?
ドリスが羽ペンにインクをつけ坊ちゃんに渡す。
坊ちゃんは震える手で自分の名をサインしていた。
「もう、ここにおる必要は無かろう? 騎士たちを起こしてさっさと帰るがよい!」
ノワルがそう言うと、坊ちゃんは急いで騎士たちを起こし始めた。
しばらくすると全員起きたようだ。
「肉ダルマよ、我とドリスは繋がっておるでの、すぐにここに来るぞ。親に縋って軍で来ようが、我とこの巨人が殲滅する。遠慮せずに復讐に来るが良い」
ノワルがそう言うと、
「こんなところに二度と来るか!」
そいう言って村を離れていった。
「さて、終わったね」
「終わったのう」
「終わりましたね」
「じゃあ、帰るな」
「えっ、もう?」
ドリスが驚く。
「ドリスの求婚話は無くなっただろ? それに、ここに居ても寝られないからね」
「そうですか……」
「まあ、念じれば話できるし……」
寂しげなドリス。
「我も友達じゃから、たまには来るぞ? それともアリヨシのほうが良いか?」
ノワルがニヤリと笑う、
「それは……」
真っ赤になるドリス。
「まあ何かあったら来るよ、相談でもなんでも受けるから遠慮するな」
「はい」
ノワルを俺の肩に乗せると家へ帰る。
ドリスは俺が見えなくなるまでずっと見送っていた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




