結局ドリスんちに行きました。
誤字脱字の指摘、ありがとうございます。
剥いだ鹿の皮を処理していると、ノワルがパスを通してドリスとの会話を聞かせてきた。
「一つ聞いていいかの?
なぜアリヨシを倒さねばならんかったのじゃ?」
「私はそんなに裕福ではない騎士の娘として産まれました。
跡継ぎが私しかいなかったせいで騎士の道を歩むことになったのです」
「ふむ」
「人が言うには、私は綺麗な部類なんだそうです」
「そういえばアリヨシもそんなことを言うておったのう」
ノワルめ、よく聞いてらっしゃる。
「その容姿が気に入ったと言うことで、力ある貴族の次男が求婚してきました。
さらに父上の借金も見つかり、知らない間に肩代わりされていました。 そして証文を盾に結婚を迫って……きたのです」
ドリスは泣きだしたようだ。
すすり泣く声が聞こえる。
「泣くではない、続きじゃ」
ノワルが促す。
「何度も断る私に条件が出されました。
『この先の村に巨人は出たという。
その巨人を倒してきたのなら、結婚の話と借金の件は帳消しにしてやろう』と。
ただ、私が女と言う事もあって実際に倒しに行くとは思わなかったようです」
「そういう奴等なら、我が言っても聞かんかもしれんのう。まあ、そのときはアリヨシが何とかするじゃろう」
「アリヨシ様にはもう色々していただいてますし……」
ドリスは黙ったのか声が聞こえなくなる。
「と言うことらしいぞ?アリヨシ」
ノワルが言う。
「はいはい、俺も行けばいいんだろ?ここは任せたぞグレア」
「はいお任せくださいご主人様」
「ちょっと行ってくる」
そう言って、熊スーツを着てノワルが飛んでいった方へ走った。
「遅いぞアリヨシ」
口角を上げ笑いながらノワルが言った。
「空を飛べる奴には言われたくないな。俺は地を這っているんだ」
ノワルを見ながら俺は言い返す。
「ドリスよ、一度降りるぞ」
そう言ってノワルがふわりと降りてきた。
ドリスは俺が来たことに驚いたようだ。
「なぜアリヨシ様が?」
「悪い、ノワルとドリスの会話を聞いたんだ。
ノワルがパスを使って俺に聞かせたってのが正解かな。
それ聞いて俺が行くほうが良さそうと思ったんでね」
俺とドリスが話していると。
「はよう降りろ、人化するでな」
ノワルはドリスを急かした。
ドリスが降りるといつもの黒いゴスロリ服を着た少女に変わる。
「アリヨシよ我とドリスを乗せてもらえるかの?」
「ハイハイ……って、お前も一緒に行くのか?」
「当たり前であろう?
ドリスはアリヨシの友達じゃろう?
だったら我も友達じゃ」
んー、違うけど良しとしておくかな。
「ドリスとノワルは俺の手のひらに乗れ!」
そう言うと、ドリスは恐る恐る、ノワルはピョンと俺の左の手のひらに乗る。
そのまま二人を右肩に乗せた。
「走るぞ! ノワル、ドリスが落ちそうになったら頼む」
「心得たのじゃ!」
ノワルの声が聞こえるとすぐ俺は走りだした。
「ドリス大丈夫か?」
「ギガントベアの毛で守られていますから大丈夫です。
意外と快適ですよ」
ドリスの楽しそうな声が聞こえる。
「だったらいいんだ。
で、この道で間違いないか?」
「はい、アリヨシ様問題ありません」
「我は?
心配してもらえんのか?」
口を尖らせ拗ねているノワル。
「ハイハイ、ノワル大丈夫か?」
「何じゃ、そのやっつけ的な『大丈夫か?』は!」
おっと、ちょっと怒ったかな?
「わかった、このあとドリスん所で頑張ってくれたら、撫でてやる」
「わかった、頑張る!」
どんだけ撫でてほしいんだお前……。
ドリスの誘導の元、暫く走ると小さな村が見える。
そのころには日が傾きだしていた。
「ここが私の村」
ドリスが教えてくれる。
お世辞にも活気があるようには見えないな。
「あそこに居るのが私に求婚している貴族の次男、アントン様です」
ドリスの指差す先には小さな館があり、そこには十人程の騎士と丸々と太った青年が居た。
おお、小太りで首にヒラヒラがついた高そうな黄色い服……貴族の坊ちゃんてあんな感じなんだ。
手には食べ物……鶏モモ肉?
を持ち食べかすが口の周りについている。甘やかされてそうだねえ。それが強そうなお付きを連れてドリスの家に居ると言う感じかな?
「肉だるまじゃな。食べても油が多くて不味そうじゃ」
「いや、ノワル食べないでいいから」
俺も食べる気はないが確かに不味そうだ。
「私が帰るまで待つと言ってましたから。待っていたのでしょうね」
「段取りは、俺は入口手前で止まるから、そこからはノワルと一緒に行ってくれ。
何かあってもノワルが何とかしてくれる。
頼んだぞノワル」
「仕方ないのう、わかったのじゃ。
アリヨシよ、どこまでやって良いのかの?
殺しちゃいかんのじゃろ?」
「ふむ、確かに……どの程度で良いんだろ。
殺さなきゃいいかな」
「承知したのじゃ!」
俺は館の入口の前で止まりドリスとノワルを降ろした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




