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騎士が目を覚ましました。

誤字脱字の指摘、助かっております。

 結局女騎士はフェンリルであるグレアの腹の上に寝かせた。

 グレアの毛並みが良く気持ちいいのか、女騎士はなかなか起きなかった。

「起きんのう……」

 ノワルはブラックドラゴンに戻り、俺と一緒に女騎士を上から覗いている。

「いろいろ気が張っていたのかもしれない。

『女騎士で家を』って言ってたからな。

 ここまで来るのにも疲れているだろうし、今は寝かせてやれば良いんじゃないかな?」

「私は問題ありません。寝かせてやりましょう」

 グレアも俺に同意した。

 こうして女騎士が起きるのを待っている間に、次の朝になった。


「ご主人様起きましたよ」

 グレアの声が届いたので。

 グレアの居るホールの中に入ると、女騎士は怯えた顔で俺を見る。

 熊スーツのせい?

「おう、起きたか?

 体調悪いとかないか?」

「私を助けてどうする!」

「どうするもこうするも、何もしないさ……」


「くぅ」と可愛い音が聞こえた。

 真っ赤になる女騎士。


「まずは腹を満たさないとだな。何か食べ物あったっけ?」

「ご主人様、私が狩った鹿があります」

 そう言うとグレアはホールを出て鹿を引きずってきた。

 

 結構でかいねえ


 鹿はグレアの半分ぐらいの大きさがある。

 体長で六メートル位だろうか。

 俺はナイフで皮を剥ぎ鹿を捌くと、魔法で火を起こし肉を焼く。

 暫くすると肉が焼ける香ばしい匂いがし始めた。

 グレアとノワルが人化した時用の器に肉を切ってのせた。残りは、大体半分にしてグレアとノワルに渡した。バリバリと音をたててグレアとノワルは鹿を食べる。

 それを見た女騎士は引いていた。

 そりゃデカイ犬とドラゴンが目の前で食事をしているのだ。

 引きもするだろう。


「ほい、食え。ナイフもフォークもあるから肉を食べられるだろう?

 俺が動かすと器を壊してしまうから、自分で取ってくれ」

 俺がそう言うと、女騎士は不思議そうな顔をして聞いてきた。

「なぜ?

 なぜ私を助ける?」

「別にお前と争う気もないしな。

 困っているようだから助けた。

 察するにお前は結果を残さないと困るんだろ?」

 女騎士は黙り込む。


 図星なんだろう……。


「俺を『倒す』という結果が必要なのか?」

 女騎士はコクリと頷く。

「俺も死ぬのは嫌だなあ。

 で……妥協案だが、俺がお前に負けて従属したってのはどうだ?

 気を失ったから覚えてないかもしれないが、フェンリルとブラックドラゴンも付けるが?」

「それでいいのか?

 いや、良いのですか?」


 丁寧語になってきたか。


「んー、別にいいぞ?

 今んとこ暇だしな。

 パスが繋がっているから困ったらいつでも呼べ!

 助けてやる。

 ただ俺らを戦争に使うとかは無しな」

 女騎士はしばらく考えると

「わかりました」

 と言った。

「くう」また腹が鳴る。

「悪い、冷めないうちに食べてくれ」

 女騎士は恥ずかしそうにしながら肉を食べ始めた。


 食事が終わり、女騎士が落ち着いたようだったので

「お前、馬は?」

 と聞いてみた。騎士に馬が無いなんてのは聞いたことがない。

 女騎士は俯くと、

「途中で死にました」

 そう言った。

「どうやって帰る?」

「歩いて帰ることになります」

「えっ、この寒い中をか?」

「そういう事になります」


 ああっ、もう……。


「ここからどの位だ?」

「どの位とは?」

「家までの距離だよ」

「歩いて一週間ぐらい……です」

「宿は?」

「野宿ですね、途中の宿場町では泊まるでしょうけど」

「はあ、仕方ない。

 家まで連れて行ってやろう」


「巨人様のお名前は?」

 女騎士は俺を見上げて聞いてくる。

「アリヨシって言うんだ。

 適当に呼んでくれ。

 あとフェンリルがグレア、ブラックドラゴンがノワルと言う名だ」

 女騎士は頷くと、

「では私はアリヨシ様と呼びます。

 アリヨシ様は私をドリスとお呼びください」

 と言う。

 ただ、

「人前に出るときは逆だからな。

 俺がドリス様でドリスがアリヨシって呼ぶこと。

 疑われても困るからね。

 グレアとノワルも人の前では呼び捨てでな」

「わかりました、アリヨシ様」

 そう言ってドリスは頭を下げた。


「俺は離れてるからこれに着替えてくれ。

 洗濯しておいた」

 俺はドリスが鎧の下に着ていたものを出す。

 小さすぎて洗うのが難しくはあったが問題ないだろう。

「ありがとうございます。

 ところでアリヨシ様は私の裸を見たのですか?」

 服を着替えながらドリスが言った。

「ああ洗うときに見たぞ。

 身長は人の女性にしては高そうだが、良く鍛えられて引き締まった綺麗な体だった。

 村でもらった服の胸ボタンが三つも飛ぶとはすごい胸だなと思ったがね」

 俺はドリスに背を向け頭を掻きながら言う。

「大きな胸は嫌いですか?」

「いいや、大好きだぞ?

 俺が人の大きさなら触りたいところだが、この体じゃな……」

「私もあなたが人じゃないのが悔やまれる……」


 ん?


 俺が振り向くとドリスが潤んだ目で俺を見ていた。

「あっ私は何と言うことを……。忘れてください」

 真っ赤になるドリス。

「おう、忘れとく」

 話をする間に鎧も着け終わる。


「じゃあ、ノワルに送ってもらうからな。

 おーいノワル、こいつの家まで連れて行ってやってくれ」

「えー、面倒じゃ」

 人の顔をしていないが嫌そうなのはよくわかる。

「どうせ暇なんだろ?

 帰ってきたら頭撫でてやるから」

「やる」

 即決。

 ノワルがやる気になった。

「出来たらこいつの領内で飛んでやってくれ。

 ドラゴンに乗って騎士が帰ってくるんだ、目立つことこの上ないだろう。

 ついでに『巨人はドリス様に従属した、ドリス様に何かあれば巨人と(われ)とフェンリルが助けに来るであろう』って感じでアピールしておいて」

「依頼が増えておるが、まあいいじゃろう。

 そこの女騎士、我が背に乗れ」

 ドリスは怯えているのかノワルの背に乗らない。

「大丈夫じゃ、背にさえ乗っておれば風の影響はないからの」

 そうノワルが言うと渋々と言う感じでドリスはノワルの背に乗った。

「ドリスと俺は繋がっているから、何かあったら念じればいい。

 助けにいくからな」

「わかりました」

「じゃあ行ってくれ」

 俺がそうノワルに言うと、

「わかったのじゃ!」

 と言って飛び上がり飛んでいった。


読んでいただき、ありがとうございました。

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