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某有名ゆるキャラみたいになってしまいました。

 秋も深まり風が肌寒くなってきた。クマ騒動から一か月待ち遠しい毛皮の服。

 そんな風に思っていた時、爺さん(村長)がやってきた。

 後ろには荷車が二台。

 そこには(なめ)されたと思われるクマの毛皮が載せられていた。

 上下一台づつか?

「巨神様、先日依頼を受けたギガントベアの毛皮で作った服ができあがりました。お納めいたします」

 頭を下げる一同。


 思ったより早い。


「早かったですね、大きさからして数か月かかると思っていました」

 グレアが訊ねると、

「巫女様、乾燥に魔法使いを使ったのでその分時間を縮めることができました。他の部分には十分に手をかけましたから着心地はよろしいかと……。今年の豊作とギガントベア退治のお礼としてお納めください」


 助かった。寒くなる前に温かい服が手に入るのは嬉しい。


「巨神も喜んでおるのじゃ!

 ありがたく受け取るぞ」

「喜んでいただいて幸いです。それではこれにて失礼します」

 爺さん(村長)は連れてきた男たちを連れ去っていった。


「ご主人様、服です。待望の服です」

 喜びひとしおなグレア。

「おう、服だな。待ちに待った服だ。

 これで温かい冬と常時横チ〇から解放される」

 テンションが上がる俺。

「さっさと着てみい!

 見てみたいのじゃ!」

 急かすノワル。

 俺は置いてあったクマの毛皮のズボンを履いた……。


 ん……。


「着ぐるみ?」

 ウエストは合っておらず、サスペンダーのような物で釣る感じ。

 さらにクマの着ぐるみそのものの上を着てみると……。

「「ぷっ」」

 グレアとノワルが吹き出し顔をそむけた。

「えっ何々?」

 クマが「ガー」っと口を開けた部分から俺の顔が覗く。

「はっきり言おう。

 クマじゃ、クマにしか見えん」

 笑いをこらえ肩を震わせながらノワルが言った。


 黒い毛並みのクマになっていたようだ。


「でも、可愛いですよ?ご主人様のクマは……」

 グレアがフォローしてくれる。

 そのフォローが心に刺さる。


「まあ、暖かいのは暖かいんだがな。例のクマ〇ンになっていたのかな?」

 苦笑いをする俺。

「ク〇モンとは何です?」

「クマモ〇とは何じゃ?」

 まあ、二人は知らないよな。

「ゆるキャラと言うみんなに好かれる魔物の事だ」

「魔物?

 人に好かれると言うのはご主人様のような魔物ですか?」

「いいや、可愛い魔物だ」

「今のアリヨシは可愛いのじゃ」

 ウンウンと頷くノワル。

「可愛い魔物だから、巨人な俺は関係ないぞ?」

「今のご主人様は可愛いです」

 グレアも頷いた。


 堂々巡りか……ちょっと面倒だ。


「わかった、俺は可愛い。

 どうか可愛がってくれよ」

 俺がそう言うと、

「可愛いのです」

「可愛いのじゃ」

グレアとノワルはフェンリルとブラックドラゴン状態で俺に飛びつき、フカフカの毛皮に顔を擦り付けてきた。

ゆるキャラ大人気。


ありゃ?二匹とも俺の胸に顔を埋める。そして動かない。

「甘えたいのか?」

「はい、いつも甘えたいです」

 素直なグレア。

「わっ(われ)はどうしてもと言うなら甘えるが?」

 素直じゃないノワル。

「甘えればいいと思うけど?

 とりあえずお前らぐらいは許容できそうだからね。

 嫌ならいいが……」

「いっいや、そういう訳ではないぞ?

 甘えたいと思う」

 ノワルは顔を背け恥ずかしそうに言う。

「なら、そう言えば良いんじゃない?

『甘えたい?』と聞いているんだから『甘えたい!』と言えばおしまいだ」

「じゃが、我はブラックドラゴンじゃ、そんなに甘える訳にはいかんのじゃ」

 いろいろ面倒そうだねぇ……ノワルさん。

「なぜ?」

 俺が聞くと、

「頂点に立つものが甘えるなど」

 プライド高いね。

「いや、でもな、ここの頂点は俺だよ?

 だから甘えればいい。本来なら俺が小っちゃくなって人化したノワルに甘えさせてやりたいんだけど、俺は小さくなれないからなぁ。

 申し訳ない」

 俺は頭を掻いた。

「それは良いのじゃ、ここに居れば楽しいし、アリヨシと話するとな……色々変になる」

 素直じゃないノワルに、

「私はいつでも甘えます」

 自分に素直なグレア。

「そうだな、グレアはいつも甘えてくる」

 俺は頷いた。

「嫌ですか?」

 首を傾げて聞いてくるグレア。

「いいや、だからお前らぐらいは何とかするさ、一応俺の手下みたいなもんみたいだしね」

 俺はグレアを見ながら言う。

「じゃったら甘えるぞ?」

 そう言って俺の肩にノワルは頭を置いてくる。グレアは足に纏わりつく。

 それぞれの頭を撫でていると、動きが鈍くなり静かになった。

「寝たか……。

 お前らが居るから助かるよ。

 居なければ一人でどうなったことか。ありがとうさん」

 ク〇モンな俺はグレアとノワルを撫でながら独り言を言った。


読んでいただきありがとうございます。

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