お嬢様を助けてしまいました。
俺はホールで横になっていた。
広くなったレーダーの端に数個の白の光点と十数個の赤い光点。
んー襲われている感じ?
フンと一息すると立ち上がり現場を目指した。
動き出した俺に気付いたノワルとグレアも俺についてくる。
「どうかなさいましたか?ご主人様」
「んー何かが襲われている。
魔物なのか盗賊なのかな知らないが敵対心のある者に……」
「アリヨシよ助けるのか?」
「まあ、一応ね」
「なら私も手伝いましょう」
「我も手伝うぞ?」
そう言って援軍に向かった。
馬車に護衛五人程度か、賊は馬に乗った十三人。
相手の発見と共にグレアとノワルは人化して向かう。
対人の時は二人には人化してもらうようにしている。
そのほうが交渉がしやすいからだ。
俺は縮小化が無理なのでそのまんま。
俺が近づき木立の上から頭が見えると、俺を発見した馬たち棒立ちになった。
そのせいで振り落とされる者も居るが、そこは「ごめんなさい」と言う事で……。
賊方の馬から落ちた者にはグレアとノワルが当て身を入れて気絶させた。
その後二人は残りの賊を殲滅する。すべてが一撃である。
人化しても能力には変わりはないようだ。
「助勢ありがとうございます」
って感じで二人に駆け寄る護衛達。
「ご主人様が助けろと言ったんです」
「アリヨシが助けろと言うたのじゃ」
「そのアリヨシと言う人はどこに?」
グレアとノワルの二人は俺を指差した。
「やあ」って感じで右手を上げる俺。
自分の十倍ぐらいある裸の大将な巨人に見られたら、普通、皆引くよね……。
「あれが……アリヨシ……様?」
唖然とした表情で護衛達が俺を見た。
「そうじゃ、あれでいて頭は良いのじゃぞ?
この近くの村もアリヨシのお陰で干害にならなかったのじゃ」
「そうなんですか?」
「まあ、知りたければ村人に聞けばよい」
「ところで、そこに転がした者たちは何者なんですか?」
グレアが護衛に尋ねる。
「多分、伯爵様の政敵が放った者ではないかと思われます」
「政敵」
あっ、グレア意味が分かっていない……。
まあ、俺が聞こえているから何とかなるでしょう。
「現在この国と帝国と戦争を行う、行わないで揉めております。
伯爵様は戦争に反対をしておりまして主戦派に疎まれているようです。
ですから伯爵様の娘であるベアトリス様を誘拐しようとしたのかもしれません」
「へー、そうなんですかー」
気のない返事。
グレア、やっぱり意味が分かってないだろ。
しかし俺らが伯爵の娘を助けたって事で後々なんか起こらなきゃいいんだけど。
そんなことを話ししていると馬車から縦巻きロールのお嬢さんが出てきた。
護衛の一人がお嬢さんに耳打ちをした。俺らのことを話しているんだろう。
「アリヨシ様、我々の危機を救っていただきありがとうございます」
俺の顔を見ながらお嬢さんが言った。
そしてもう一度じっと俺を見ると頬を染める。
「私は大きいのが好きです」
ん?
なんじゃそりゃ。
聞きようによってはすっげーエロいけど。
どういう事?
「意味が分からないですね」
グレアが言う。俺はそんなこと言っていないが、まあ確かに訳は分からないので助かる。
「あなた達はアリヨシ様とお話ができるのですか?」
不思議そうにに二人を見る縦巻きお嬢さん。
「私はご主人様に名を貰いましたから念話で話ができます」
「我も普通に話ができるぞ?」
二人は質問に答えた。
「それに我々はアリヨシに仕える神獣じゃ、人に対する時だけ人化しているだけなのじゃ」
ノワルは人化を解きブラックドラゴンの姿に戻ると、さすがに驚いたのか縦巻きお嬢さんは腰を抜かし座り込んだ。
「と言う事は、そちらの白い方も」
縦巻きお嬢さんはグレアのほうを見て言う。
「私はフェンリルです。耳と尻尾は名残ですね」
グレアは耳と尻尾を動かす。
「助けられたお礼はどのようにすれば」
お嬢さんが二人に聞いた。
「気にしなくていいそうです。
ご主人様の気まぐれですから」
念話で言った通りにグレアが話をしてくれる。
「それでも、伯爵の娘たる私が助けてもらって何もしない訳にはいきません」
「じゃったら、魔道具が作れるものを紹介してもらえないかのう?
小さくなる魔道具を作ってもらいたいのじゃ。
アリヨシが人の大きさになる程度の物をな」
俺をチラリとみてサムズアップするノワル。
グッジョブだ。
「魔道具ですか、難しいかもしれませんがお父様の伝手で探してみます。
他には?」
「『他にはない』と言っていますね。
元々礼を貰う気も無かったようなので」
グレアが伝えてくれた。
「わかりました、私の全力で魔道具を作れる者を探してみます」
イヤイヤ、そんなにがんばらなくていいから。
「『無理しなくてもいい』と言ってますので、じっくり探してください」
グレアが言った。
「それでは失礼しますね。
助けていただき本当にありがとうございました」
そう言うと縦巻きお嬢さん、多分ベアトリスさんは馬車に戻った。
俺達が話をしている間に賊たちは手首を縛られ数珠つなぎにされる。
そして、ゆっくりと馬車は動き出した。
馬車を見送ると
「魔道具を作れる人が見つかるといいのう」
「そうだなあ、そうなったら皆と旅してみたいねぇ」
「いいですね」
そんなふうに三人で取り留めのない話をしながら家に帰った。
読んでいただきありがとうございます。




