災い転じて服となりました。
暑い夏も終わり涼しげな風が吹くようになってきた。
実りの秋だ。
涼しくなってきたと言っても、今のところ下着だけで何とか過ごせている。
それでも温かい服は欲しい。
グレアの体を撫でながらそんなことを考えていた。
珍しくノワルは家に帰っている。
『巣の結界の点検』とか言っていたな。
最近、グレアが白の巫女、ノワルが黒の巫女って村人に慕われているようだ。
一部二人に惚れて押し倒そうとした男が居たが半殺しになった。
二人に手を出す勇気が凄いよな。
お陰で二人にちょっかい出す者は居ない。
あの後だが干ばつの影響もなく作物は順調に育っているらしい。
「秋が楽しみだ」と爺さん(村長らしいのだが)が二人に言ったそうだ。
まあ手を貸して結果が出るって言うのは嬉しいことだ。
あと気づいた事はレーダーのレンジが変えられるようになったことだ。
お陰で索敵範囲が広がったので来客や魔物の接近に気付くのが早くなった。
村のある場所も光点が集まっているのでわかる。
俺は兵器なんだなぁとちょっと思った。
おっ?赤い光点……村に向かっているが大丈夫かね?
「何か村に向かっているみたいだがちょっと様子を見に行くか?」
「はい、付き合います」
俺は鞘に入ったナイフを持ち村へ向かうと、入口付近で体高でグレアぐらいの大きさの黒いクマが村人を追いかけていた。
逃げる村人の姿も見える。
「あれ、ヤバい奴?」
グレアに聞くと、
「確かギガントベアと言う名だったと思います。
クマでは最大級になるものですがご主人様の力なら瞬殺です」
確かに気配からするとグレアに遠く及ばない。
「ちなみに人なら?」
「まあ人では勝てないですね。
村が襲われたら全滅になると思います」
って事らしい。
村人には災害なのね。
おっと、村に入る直前に俺の気配に気づいたクマがこちらに走ってきた。
自分が出せると思われる一番の力で足を踏ん張って加速すると一瞬で熊の背後に回ることができる。
俺を見失ったクマは立ち上がり周囲を見回す。
背後にに俺が居ることに気付いたようだがもう遅い。
振り返るより早く首にナイフを突き立て一気に引く。
誰が作ったナイフかは知らないが相変わらずの切れ味だ。
半分を残し首が切れ、切り口から血が舞う。
そして、崩れるようにクマは倒れた。
戦いを見ていた村人から歓声が上がる。
「やはり瞬殺です」
グレアが当たり前のように言った。
「グレアの言う通りになってしまったな」
体に記憶させられた動き何だろうが意のままに動く体に驚いた。
「さて、このクマどうする?」
「服が欲しいんでしょう?
ちょうどいいではありませんか、鞣して毛皮として使えば服代わりに使えると思います」
「おお、いい考えだ。
ただ、皮を剥げても鞣すのは無理だぞ?」
俺には皮を鞣す知識は無い。
その時ワイワイ言いながら村人が近づいてくきた。代表は村長の爺さんか。
「グレア、相手してもらえるか?」
「はいです」
そう言うとグレアが白い巫女姿になり村人の方へ向かって行った。
「この度は、危ないところを助けていただきありがとうございます。何かお礼をしたいのですが何か有りますかの?」
グレアがパスを使って会話を流してくれるので内容が筒抜けだ。
「お礼ねえ……。
毛皮の鞣し方を教えてもらえないか村人に聞いてもらえないか?
服として使うって事も言っておいて」
グレアが再度村人と話を始める。
「いえいえとんでもない、我々が巨神様の毛皮の服を作りますのでお任せ下さい」
服が調達できたのは助かる。
「グレア、お願いしておいてくれ。
丁寧にな。皮は剥いで置いていくって事も」
村長との会話が続く。
「なにぶん大きいので時間がかかりますが、できるだけ早く鞣して服にして祠へお持ちします」
村では俺んちを祠と呼んでいるらしい。
「よろしくと言っておいて」
グレアが村長に伝える。
「話が纏まりましたね」
「グレアありがとう」
俺が礼を言うと嬉しそうに笑った。
早速皮を剥ぐ。
俺の頭には解体の知識もあるようで切れ味のいい俺のナイフを使えばあっという間だった。剥いだ皮を村人に指定された場所に置き、肉と内臓は持って帰る。
帰りはグレアを俺の手の上に乗せ、肩に熊肉を担いで帰ったのだが、グレアのギガントベアの肉を見る目線が鋭い。
人化状態のグレアはスッゲー綺麗な女性なんだけど、そんな女性ががよだれを垂らす姿……違和感が凄かった。
「帰ったら食べさせるからちょっと待て。
ちなみに焼きと生どっちがいい?」
「焼きでお願いします」
最近はグレアもノワルも肉は焼く方がいいと言う。
俺はここ数ヶ月食べてはいないが、肉を食うならタレが欲しい。
原料があるなら作ってみるかな。
焼き肉にタレをつけハフハフと食べて喜ぶグレアとノワルの顔が目に浮かんだ。




