理由があって人化は無理でした。
村への水の目処が立ったので、湧水の玉を元に戻し垂れ流しの水のみが村へ流れるようにする。
これで元通りになった。
フェンリルのグレアとドラゴンに戻ったノワルの体を洗い、俺も風呂に入って一息つく。
すると、
「ご主人様、人化の練習をしてみましょう」
「そうじゃな、やってみんか?」
グレアとノワルに言われた。まあ、俺もグレアやノワルのように人の大きさになれるなら助かるので、
「で、どうやるの?」
やり方を聞いてみると。
「魔力を使って、人になりたいって思うのです。すると、自分に合った姿になれるのです」
「我もそんな感じじゃぞ?容姿の事は考えたことは無かったが人になると思ったら、あのの姿になっておった」
なんとも適当な説明だだったのだ。
まあ、やってみるしかないんだけどね。
「要は、魔力を使って人になりたいと思えばいいんだな?」
「そうです」
「そうじゃ」
二人がそう言ってるんだから間違いないだろう。
「まあ、やってみるか」
人になりたいと思いながら魔力を通す…………。
「何も変わらんぞ?」
「そんなはずはありません!」
「気合が足りんのじゃ!」
えっ、気合で何とかなるもんです?
「じゃあもう一度」
めっちゃ人になりたいと思いながら魔力を通す………………。
ぷっはーーーー!
「息を止めて気合入れて頑張ったけど、何も変わらんぞ?」
ピクリとも反応しない。
「風呂に魔力がダダ洩れですね。お陰でいいお湯です」
「我は魔力が濃いから気持ちいいぞ?」
ニコニコしながら風呂を楽しむ二人。
「お前ら……」
ノワルが考え込み、何かに気付いたようで「ポン」と手を打つ。
するとノワルが言った。
「そもそもアリヨシよ、お主は巨『人』じゃろ?
人化せずとも人の姿ではないのか?」
「そうです、ご主人様は人です。
大きな人です。
だから人化が使えないのではないでしょうか?」
グレアも同調する。
「だったら最初っから言ってくれ、これじゃ俺が魔力を流しただけじゃないか!」
根本的な問題に気付けない俺も問題が有るのだが……。
「まあまあ怒るな。濃厚な魔力の風呂は気持ちよかったぞ?
我も後々進化できるかもしれん」
「私もこの魔力で能力強化できたのではないでしょうか」
踏ん張って流した魔力が風呂に溶け込んだようだ。
「はあ……お前らだけ得してるじゃないか!」
ちと気が抜けてしまった。
しかし、俺はふと気づく。
「そう言えばグレアは体の大きさ変えられたよな?」
「はい、でもこれはフェンリルの固有能力で魔法ではありませんので、ご主人様は使えません」
グレアが申し訳なさそうに説明してくれた。
そうそう都合良くはないか……。
「そうなのか……残念。
なんとか人の大きさになる方法を考えないとな」
「そこは魔道具じゃろうな。
大きさを変えられる魔道具は聞いたことが無いが、作れる者も居るかもしれん」
そうノワルが教えてくれた。
「ノワル、ありがとうな」
俺が小さくなる事にこだわっているのが気になったのだろう、不思議な顔をしてノワルが聞いてきた。
「しかしアリヨシは何で小さくなりたいのじゃ?」
「最近下着の痛みが目立ってきてな、替えが欲しいんだが俺サイズの服なんて『なかなか』と言うか『全然』手に入らないだろ?
今は暖かいからいいけど冬が来たら大変そうだしな。
正直下着だけでなく服も欲しい。
だったら人サイズになるほうが手に入りやすいと思ったんだ」
体が大きい分、体内に溜め込んでいる熱量が大きいだろうが、やはり冬の寒い時期を下着だけで生活するのはなぁ……。
氷河期の恐竜のように、寒さにやられて死ぬのも嫌だ。
最終、魔法を使えばいいのかもしれないがね。
「それにお前らが大きいから見えないだろうけど、人の大きさぐらいになれば下から見上げる格好になるだろ? そうするとトランクスの隙間から俺のが見える」
俺が気になっていた部分だ。
トランクスタイプのため太ももと下着の隙間が結構あるのだ。
こっちの方が重要事項のような気がする。
「何がですか?」
「俺のチ〇コ、俗に言う横〇ン」
「ああ、ご主人様の生殖器ですね。
私はいつもご主人様とお風呂に入っていましたから気にはなりませんが……」
「我も見慣れておるぞ?」
もう見慣れているのね……。
つかノワルは見慣れるほど居候している訳か……たまには家に帰れ。
「いや、そうじゃなくてな、村人たちに見えてしまうだろ?」
「それはそれで村人にとって神のモノですから、拝む対象では無いでしょうか?」
秘宝館じゃないんだぞ。
俺のを拝まれてもな……。
「それは嫌だ、何で拝まれなきゃいかん……」
「それは祭り上げられたものの宿命じゃろう。諦めるしかないのう」
はあ、神も面倒な事だ。
「まあ、寒ければ私が温めてあげます。
フェンリルのフカフカの冬毛は最高ですから」
グレアが胸を張り言う。
「ふかふかの冬毛……グレアその時は頼む」
グレアは期待ができるな。
そこに更に一歩前に出て威張って言うドラゴンが一頭。
「我もブレスで温めてやるぞ?」
ブレスで温めるって……。
「それは温めているんじゃなくて焼いているんじゃないのか?
ただでさえ無い下着を焼いてどうするんだ」
「下着を焼かない程度にブレスは吐けるのじゃ!
でも焼けたら焼けた時なのじゃ!」
適当な事を言う……。
「『焼けたら焼けた時』って、そんなこと威張って言われてもなぁ」
「我を信用できんか?」
「はいはい、信用しています」
面倒臭いので適当な返事になってしまう。
「信用しているなら良いのじゃ」
でもノワルは納得はしてくれたようだ。
ノワルは「信用している」と言われたのが嬉しいのか、口角を上げニヤリと笑った。
読んでいただきありがとうございます。




