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さっさと水路を作ろう。

 今立ってる場所から、グレア目標で、俺んちの洗い場に向けて水路代わりの塹壕を掘る。

 歩きで二時間、時速四キロメートル計算で約八キロメートの水路を作らないといけないわけだ。

 直線で距離を稼げそうな所はできるだけ間をとって回数を減らせるように努力した。

 まあ、温泉を作るときに水路は作ったので、結構手際がいい。

 数時間もすれば、水路の大半が出来上がった。

 まあ、日も暮れたんであとは明日かな。

 今回も堰板は走龍の肩甲骨で仕切った。あとは、村の既設の水路と繋ぐだけである。



 次の日の朝になり、俺達は起きた。

 寝なくてもいい体らしいのだが、やっぱり寝てしまう。

 身に付いた習慣は抜けないものだ。


「アリヨシよ今日も人の姿の方が良いかの?」

 そう言って黒のゴスロリ的な衣装になる。

 俺はノワルに顔を近づけじっと見て

「俺的には人化した巫女さんのノワルもいいけどなあ。

 真っ白な顔に赤い唇、端正な顔、白と黒で良く目立つよ。

 一応巨人とは言え『人』だからな人型が可愛いく見える」

「えっ、いや、なっ何を言う……」

 ノワルの顔が真っ赤だ。


 人化しても恥ずかしいと顔が赤くなるんだな。


 ワタワタして表情豊かなノワルが余計可愛く見えた。

「ずるいです!」


 あれ?


 もっとモフモフになってさらに大きくなったグレアが居た。

 毛の色は銀から白銀に変わっている。

「グレア、お前大きくなってない?

 太った?」

 今は体高で俺の腰ぐらいある。


 昨日はもっと小さかったはずなんだが……。


「違います!」

 グレアの全力の否定のあと、

「大きさの調整ができるようになったんです。

 今までの大きさのほうがいいかと思って最近はあの大きさにしてたんです。

 私だって人化できるようになったんです!」

 と言ってグレアが小さくなる。

 ノワルに負けない白い顔、白いゴスロリのような服を着た清潔感が漂う若い女性が立っていた。


 狼の鋭い目、耳,そして尻尾は残っているのな。


「グレア?」

 俺はその少女に顔を近づけた。

「はいグレアです!」

「だよな。

 それにしても何でいろいろできるようになったんだ?」

「ご主人様と入った温泉のせいです。

 あのお湯はご主人様の魔力が溶け込んでいるから、私はそれを吸収したんです。

 前言ったでしょ?

 取り込んだ魔力量でフェンリルになると」

「おっおお、そう言えばそんなことを言っていたなぁ」


 すまん忘れてた。


「私は進化してフェンリルになったんです。

 その後、体の大きさの調整ができるようになったのは気づいたんですが、人化はノワル様がやっているのを見て、『可愛い』って言われているのを見て、ちょっと悔しくて……昨日、皆が寝てからやってみたらできたんです」

「ほう……グレアは可愛いよりも綺麗って言う言葉が合うね。

 年齢はノワルより下だが落ち着いたお姉さんって感じか」

 グレアは百歳は行っていないそうだ。

 正確な数字はわからない。

 数を数えることも無かったのだろう。

「綺麗なお姉さん……」

 グレアも顔を赤くして誰の居ない方向を見てポーッとしている。

「俺も人化できないかね……」

「アリヨシよお主の魔力量なら簡単じゃと思うのじゃが……」

「まあ、今日は水路を作ることを優先しよう。グレア、ノワル後で人化の仕方を教えてくれるか?」

「ハイです!」

 尻尾フリフリのグレアと

「わかったのじゃ」

 ちょっとモジモジのノワルだった。



「さて、今日はグレアが銀狼で、ノワルは巫女さんな。

 さっさと水路を繋ぐぞ!」

 俺とグレアは歩きで、ノワルはグレアに乗って移動を始めた。

 水路の末端に着くと、すでに昨日の五人(男衆四人と爺さん一人)が待っていた。

「ノワル、下流はどうすればいいか聞いてもらえるか?」

 ノワルがグレアに乗ったまま五人に近づき話を始めた。

「繋ぐところまでついて来いと言う事じゃ」

 俺達は五人に付き従い歩いた。

 遠目でしか見ていないのでわからなかったが、実際に近づいてみると大分作物がやられている。

 水路から水が入ってきても地面に吸い取られて全部の田畑には回らないか。

 溜池のようなところに着くと爺さんがノワルに説明を始める。ため池を見ると底の方に泥のような使えなさそうな水が残っているだけだった。

「ここに繋いでほしいと言う事じゃ」

「おう、わかった。

 グレアちょっと手伝ってくれ。

 ノワルはどうする?

 俺の肩に乗るかここで待つか」

 そう言うと、

「当然、アリヨシの肩じゃな」

 即答してきた。

 再びグレア目標で水路を作っていく。ほぼほぼ昨日には出来上がっていたので繋ぐのはすぐだった。

「さて、一度帰るか。

 グレアはココで待ってて、戻ってくるから」

「了解です!」

「えっ、何でじゃ?」

「ん?このまま水を流してもあの溜池に水が溜まるまでに時間がかかる。だったら湧水の玉を直接ここにもってきて、まずは魔力で溜池に水を入れたほうが早いだろ?

 だから玉を取りに戻る」

「アリヨシは考えておるのじゃな」

「まあ、頼まれた事だからね」

「…………」

 なにかボソリと声がきこえた。


 ん?なんでモジモジモード?


「じゃあ行くか」

「聞いておらんかったのか?」

「何か言った?」

「まあ良い!」


 ん?機嫌が悪くなったぞ?


 俺は湧水の玉を取り村の溜め池に戻る。

「魔力はちゃんと調整するのじゃぞ?

 でないと洪水になるからの」


 この前の事を心配しているのだろう。


「ありがとな。じゃあやってみるか」

 俺が玉に魔力を流すと湧水の玉からいつもの量より多くの水が流れ出しため池に溜まっていく。

「よし、こんなもんかな?」

 そこにはなみなみと水をたたえる溜池があった。

「ノワル、『後は洗い場から流れる水だけになるから使い方を考えてね』っていうのと『水が要らなくなったら言ってくれれば止めるから』って言っておいて」

「わかったのじゃ」

 俺はノワルを掌に載せ村人五人の前に降ろした。

 爺さんはペコペコと頭を下げている。


「ありがとうございます、お陰で何とかなりそうです」ってところかな?


 話が終わりノワルが返ってくる。

「助かったと言っておったぞ。

 捧げものは何が良いかと言っておったが、断った。

 しかし、ちゃんと聞いておるかどうか……」

「まあ、いいよ。

 ありがとな助かった」

「褒美はあるか?」

 おっと、ちょっとモジモジのノワル。

「んー体を洗うって事で手を打ってくれるか?」

「それでいいのじゃ!」

「じゃあ、帰るか。

 グレアも洗ってやるから帰るぞ」

「私もですか?

 早く帰るのです!」

 ノワルはグレアに乗り、さっさと家に帰っていった。

 ただ、俺を置いていくのはやめて欲しい。


読んでいただきありがとうございます。

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