神に祭り上げられました。
俺が培養槽から出たのが春頃だったようで、雨多き梅雨のような季節もあった。
今は夏? らしい……。
ぐんぐんと気温が上がり日差しがきつくなっている。
周りの木々も青々と葉を茂らせていたが最近は雨が降らず元気がない様子。
まあ、俺んちには湧水の玉が有るので問題はない。
俺とグレアとノワルで風呂に入っていると、俺のレーダーに光点が数個映る。
そしてそのまま俺たちの方へ近寄ってきた。男四人と爺さん一人だ。
「なんぞ来たぞ?我が行こうか?」
そう言ってノワルが交渉に行ってくれた。
風呂を出たノワルが小っちゃくなる。
そして、黒のゴスロリ服を着た美少女になった。
「ん?お前誰?」
俺は美少女に声をかける。
「わからんか?ノワルじゃ。
我は人化の術も使えるでの、人に会うときはこの格好じゃ」
美少女は巨人の俺に向かって恐れもせず文句を言ってくる。
人化の術ってあったんだねぇ。
爺さんとノワルが話を始めた。
拝んでいるので巫女か何かと勘違いされているのかな?
話が終わったのかノワルが俺に近づいてきた。
「アリヨシが神でグレアが神獣と言っておったぞ」
ほう、勘違いも甚だしい。
「お前は巫女?」
「そうじゃ、巫女らしい」
予想通り。
「まあ、神とかと思われていた方が人が近寄らぬから良いのじゃ」
話を続けるノワル。
「そうかもしれんね。で、何て?」
「アリヨシよ、最近雨が降らんであろう?」
「そうだなぁ、木々も元気が無い」
「ここだけ水があるじゃろ?」
「湧水の玉があるからな」
「あのものたちの村が水不足に陥っているらしい」
ああ、水源が枯れたのか。
「で、どうしろと?」
「水を分けて欲しいと言う事じゃ」
「いいよ?どうせ垂れ流しだ。
何なら水路も作ろうか?
温泉の排水とも混ざった奴じゃ枯れちゃう可能性もあるからね」
「わかったちょっと聞いてこよう」
巫女っぽく堂々とした様子で、と言うかいつも堂々としたノワルが村人たちと話を始めた。
男たちと爺さんが土下座をしている。
あっ、俺動くの確定ね。
戻ってきたノワルに、
「『どうぞよろしくお願い致します』って言ってた?」
「ようわかったのう。『どうぞ』と言うておった」
「わかった、一応村の場所が知りたいな。
グレア、ノワルを乗せてもらえるか?
巫女設定のままのほうが何かと交渉がしやすいだろう。
後、ノワルはあいつらに言って案内してもらってくれ」
ノワルが交渉している間にグレアと俺は体を拭いて下着を着る。
さすがに出したままじゃ問題が有るだろう。
まあ俺が恥ずかしいのもある。
「連れて行ってくれるそうじゃ。ここから歩いて二時間程度らしい」
歩いて二時間なら八キロぐらい先か。俺の行動範囲なら見つけてそうな気もするが、気付いてなかっただけかな?
人の速さに合わせ村まで向う。
大体下りだな、一直線に水路を引いても問題なさそうだ。
そうこう考えていると、本当に二時間かかって遠目に村が見えてきた。
俺が歩いたら十分か十五分で着きそうだ。
俺の手のひらにでも乗せりゃよかったかも……なんて思ってしまう。
よく見れば田畑が広がるが、そこにある作物は枯れかけてこうべを垂れていた。村人がノワルに話しかけしきりに頭を下げている。
「アリヨシよ、あの田畑までのまでの水路が欲しいらしいぞ?
元々使っていた水路が有るらしいからそこに繋いでもらいたいって話じゃ」
「そうだなこの辺に池を作って一度溜めるようにしようか?
いや、時間が無いからまずは水路だけだな。
イメージもできたから明日中に作るって言っておいて」
「わかったのじゃ」
ノワルは手を上げると村人たちに説明に行った。
ノワルに村人たちが跪き拝まれている。
「ありがとうございます。これも巫女様のお陰です」ってところかな?
ノワルが戻ってくると、
「しきりに感謝しておったぞ。
何か捧げものをしなければとかも言っておった」
「捧げものは要らんと今度言っておいてくれ。
それじゃ帰り道でチャチャっと水路を作るかな?
ノワル、またジャンプしてくれよな」
「はいです!」
ノワルは目標になるためにホールの方へ走っていった。
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