ドラゴンは結構いろいろ持っているのです。
しばらく温泉水で洗濯したせいか俺の下着が黄ばんできた。
洗濯は温泉水、乾燥は炎魔法を使った温風乾燥、繊維には結構負担をかけていると思う。
「んー、せめて真水で洗わないと痛むかなぁ。
俺サイズの下着なんて無いし。
できれば長々と使いたいんだがなぁ」
現在絶賛居候中のノワルが、
「真水が欲しいのか?
水を作る魔石が我の家にあったのう。
まあ、我は水を飲むことも少ないので使っておらんのじゃが……」
と言った。
そして、俺をチラチラ見ながら、
「水を作る魔石が有ったら嬉しいか?」
と聞いてくる。
俺の役に立ちたいのだろうか?
「ん?ああ嬉しいぞ?」
と俺は言う。
「ここで水は洗濯ぐらいにしか使わない。
ただ温泉水だからな。
グレアが冷たい水を飲みたい時は川まで飲みに行っているようだ。
もし水があって、家の前で全て済ませられるのなら俺もグレアも助かる」
「そうか、助かるのか……」
ノワルは少し考えると、
「ちょっと行ってくる」
と言うとどこかへ飛んで行った。
途中でドンと言う音と衝撃波が来る。
音速以上で飛べるらしい……すげえなあいつ。
グレアが俺を見て尻尾を振り、俺は風呂の掃除をしていると、
「お待たせなのじゃあ!」
と言う声とともに台風並みの風を纏い、ノワルが温泉の手前に降りてきた。
俺の拳大だから直径で一メートル五十センチぐらいだろうか、蒼い色の玉を両手で持っていた。
「お待たせじゃない!
お前、こんなに風が舞ったら、せっかく掃除した風呂に砂や土が入るだろ!
もっと考えろ!」
怒られてシュンとすると思ったが、
「すまぬのじゃ。
でもいいモノを持ってきたのじゃ!」
と逆に褒めて欲しそうに玉を差し出す。
「いいモノ?」
「湧水の玉じゃ!
水龍と言われるブルードラゴンが何百年もの間、魔石に魔力を通していると出来ると言われている。
アリヨシは『真水が欲しい』と言っておったじゃろ?
我の巣に湧水の玉があったのを覚えておっての、持ってきたのじゃ」
「湧水の玉?」
「魔力を通すと真水が流れ出す玉じゃ。
アリヨシ、使ってみるのじゃ」
ノワルが俺に玉を渡した。
「どの程度魔力を流せばいいんだ?」
「我が魔力を通したぐらいではチョロチョロぐらいしか出なかったからの。
強めでも大丈夫じゃろう」
ふーん強めね……。
玉を握り強めに魔力を流す。
すると玉から滝のように水が噴き出した。
すぐに魔力供給を止める。
周囲が水浸しになっていた。
「誰だよ強めでいいって言ったのは?」
俺はノワルを睨み付けた。
「言ったのは我じゃが、あんなに水が出るとは思わなんだ。
アリヨシは我よりも格段に魔力が上じゃのう」
「俺はお前より魔力が上?
実際俺の魔力がどの程度なのかは俺も知らないんだ。
まあ、ちょっと何度か練習してみるかな」
程々の水が出るように何度か魔力を通す量を調整する。
こんなもんかな?
「丁度良いんじゃないでしょうか、さっきのように多すぎるのも考えものです」
グレアが水量を見て言った。
「グレア、了解だ!
ノワル?
これは俺の家においても良いのか?」
「我は使わんと言ったであろう?
じゃからアリヨシが使えばよい」
「ありがとうな」
「嬉しいか?」
チラチラと俺を見ながら聞くノワル。
「ああ、嬉しい」
俺がそう言うと、口角が上がりノワルも嬉しそうだ。
「じゃ、じゃったら、ご褒美が欲しいのう」
そしてノワルのモジモジモード発動。
「ご褒美?」
「グレアはよく撫でられておる」
「ご褒美が欲しいのか?」
俺が聞くと、
「いっいや、そうなのじゃが、無理にとは言わん」
と、一見必要なさそう。
「嫌ならしないが?」
「そうではなく、アリヨシがどうしてもしたいの言うのなら、我もな」
要はして欲しいらしい。
「俺がしたいんだ、ノワルおいで」
と言うとノワルが頭を差し出してきた。
俺はノワルの顎をころころとくすぐると、
「アリヨシ気持ちいいぞ」
そう言って目を細める。
そして頭を撫でると、
「グレアが言っておったとおり、アリヨシの撫では気持ちいいのう」
「はい」
ノワルとグレアは頷き合っていた。
さて、いいモノを貰ったので固定して使おうと思う。
飲み水は上で下が洗濯と物洗いみたいな感じだよな。
最終は排水路につなげれば問題ないだろう。
穴を掘るならメイピで問題ないが、一段高くするのはどうするか?
メイウルって魔法が有るらしい、壁を作る魔法?
分厚く作って穴掘って洗面台って感じかな?
イメージを固め、それぞれの魔法を使って洗面台を作成。
その脇に小さな洗い場を作りメイスで固めた。
懐かしい一昔前のセメント作りの洗い場っぽくなった。
「ノワル、この玉って常時水が出るようにできんの?」
「出来るぞ?ちょっと貸してみるのじゃ」
玉を色々いじり何かをするノワル。
「これで良かろう、この玉に魔力を溜められるようにしたぞ。
水が出る量はさっきぐらいが良いのじゃろ?
それぐらいに調整してあるのじゃ」
「便利仕様にしてくれたのか、ありがとな」
そう言って再びノワルの頭を撫でると、ノワルはニコリと笑った。
早速玉に魔力を溜めると玉が光りだした。
「アリヨシ!
ダメじゃ!
魔力を止めろそれ以上はいかん」
「へ?」
言われるがまま魔力供給を止めた。
「アリヨシ、ほんとうにお主は魔力が底なしじゃな!
この玉の魔力の許容量を超えてしまう所じゃった。
許容量を超えると、この辺が吹っ飛んでしまうぞ!」
「おっ、悪い」
頭ポリポリだな。
「まあ、お陰でこの玉から出る水は百年ぐらい問題ないぞ?
もっとかもしれんな」
「おぉ、便利じゃん」
俺は蛇口っぽく玉を洗面台の上に置くと水が流れ出す。
おぉ、湧水の洗い場っぽくなったねぇ。
「これで、グレアの水飲み場兼、洗濯場完成!
ありがとうなノワル、助かった」
「何てことないのじゃ」
わざわざ、俺の前に頭を持ってくるノワル。
「はいはい」
ご褒美に頭を撫でてやると、少しうれしそうにするノワルが居た。
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