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娘は自慢のスタイルを誇示したい

……………………


 ──娘は自慢のスタイルを誇示したい



「これより最終競技。水着コンテストが行われます。皆さんプールサイドにご注目ください。まずは男子部門から審査が始まります。この勝負で両校の決着がつくわけですが、いったいどのような結果になるでしょう。では、まずは聖ルシファー学園の代表選手たちに出てきてもらいましょう」


 アナウンスが流れ、聖ルシファー学園の男子控室から男子生徒たちが現れる。


 水着はそれぞれ個性的なものだ。ハーフパンツ型の水着もあるし、スパッツ型の水着もあるし、ワイルドなブーメランパンツ型の水着もある。


 着ている人間も多種多様で、絵にかいたようなマッチョな体型の厳つい男子から、小柄で女顔の男子まで様々だ。幅広い支持を得るためだろう。クラリッサは自陣営を筋肉質な男子で固めたことを少しばかり後悔した。


「ブレント・バレット選手に注目が集まっているようです。若き天才魔術師にして、女子生徒に庇護欲を湧かせるその容貌に女子生徒たちの目が釘付けです。審査員たちは何やら話し合っているようですが、どのような結果がでるでしょうか?」


 アナウンスが流れる中、審査員たちが審議を終えたという合図を出す。


「結果は──」


「5点、3点、3点の計11点! なかなかの高成績を収めました」


 審査は6名の審査員が行い、選手ひとり当たりに5点満点の点数をつける。


 生徒会副会長でもあるブレント・バレットは5点満点の点数を獲得した。


「ブレント・バレット選手が5点満点ですね」


「あの細い体がたまらないとか。逆に大柄な選手はあまり点数が獲得できていません」


「どうやら審査員には特殊な性癖の人物がいるようです」


 この審査員たち、大丈夫だろうか。


「続いて王立ティアマト学園、どうぞ」


 そのアナウンスで王立ティアマト学園の男子代表が入場する。


「なんと王立ティアマト学園側は生徒会副会長のジョン王太子が出場しています。王太子に注目が集まる中、他の選手たちにも目を向けてみましょう」


 黄色い歓声が響く中、スパッツ型の水着──南国風のデザインが施されているを纏ったジョン王太子が堅い笑みを浮かべて観客席に手を振る。


「フェリちゃーん! 愛してるわー!」


 フェリクスはハーフパンツ型の水着に同じく南国風のデザインが施されたラッシュガードを前を開いて纏っている。彼は一際大きな声を上げるトゥルーデをジロリと睨むと、やれやれという具合に不良のようなたたずまいで審査員たちの前に立った。


 美少女とも美少年ともいえる顔立ちにしっかりと鍛えられた肉体がラッシュガードの間から覗く。そのギャップによる色気はなかなかのものだ。


「エロ……」


「凄いわ……」


 思わず観客席では女子生徒たちが息を飲んでいた。


「フェリクス君! 必ず優勝するですよ!」


 クリスティンも彼女候補として応援を頑張っている。


「ここで高等部3年から代表選手です。フィリップ・パーカー選手。陸上部の所属で、大会での優勝成績もあります。志望校はオクサンフォード大学。まさに文武両道です」


 フィリップは短パン型の水着を纏い、観客席にぎこちない笑みを浮かべていた。


「フィリップせんぱーい!」


「フィリップ先輩! 頑張って!」


 ウィレミナや他のファンがフィリップに向けて黄色い声援を浴びせる。


 それでフィリップの笑みはやや柔らかくなった。


「審査が開始されました。審査員席では話し合い行われています」


 審査員席ではあーだこーだと意見が交わされている。


「あ。得点が発表されるようです」


 審査員たちが話し合いを終えて点数札を手に取る。


「3点、5点、3点と計11点! フェリクス・フォン・パーペン選手が5点満点を獲得です。やはりという結果ですね」


「はい。あの色気は凄いです。審査員席では特例として10点を出そうとしたとか」


「エロですね」


「エロです」


 そういうアナウンスが流れるのにフェリクスが思いっきりつまらなそうな顔をしていた。気持ちはわからなくもない。


「さて、ここまでで両者の得点は同点です。女子部門に勝負がかかってくるかと思われます。それでは聖ルシファー学園、どうぞ」


 男子生徒たちが退場すると、聖ルシファー学園の女子生徒が入場する。


「聖ルシファー学園の代表にはなんと生徒会長にしてこの水着コンテストの出資者であるアガサ・アットウェル選手が出場しています。大手アパレルメーカー会長の娘にして、中等部、高等部で生徒会長を務めた彼女の美貌はいかに?」


 そうアナウンスが流れ、アガサが姿を見せる。


 アガサはクラシックな白黒のビキニを着用していた。


 布面積はなかなか攻めてきており、さらにはそのスレンダーながら出るところは出ている体型に水着が張り付き、なんとも言えない色気を醸し出している。流石は自分のところの作った水着を着用しているだけはあると言えた。


「アガサ・アットウェル選手。なかなか攻めてきました。氷の女王の名も有するクールビューティーとの評判も絶えない彼女ですが、今回の水着大会では大胆に攻めてきました。女子男子問わず人気のアガサ・アットウェル選手に歓声が沸き起こっています」


 男子も女子も両方いけると断言したアガサは男子と女子の両方に人気があり、『会長素敵です!』とか『お姉さま』とかいう声がこだましている。


「他の選手もプロのモデルのようです。着こなしは完璧なように思われます」


 実際のところ、アガサは水着のモデルになってくれるような学生モデルに出場を頼んでいた。彼女たちは女性らしさを存分に持った魅力ある女性たちで、プロのモデルも顔負けという評判に誤りはない。


「あ。点数が発表されるようです」


 審査委員席が慌ただしくなり、得点札が掲げられる。


「5点、4点、4点と計13点。アガサ・アットウェル選手、5点満点です」


 アガサは見事に5点を勝ち取った。他の選手も4点と高成績だ。


「やはりアガサ・アットウェル選手が高評価でしたね」


「文武両道にして、スタイルもよく、美貌をも備えた彼女は、神が微笑んだような存在だと言えるでしょう。高成績なのも頷けます」


「では、次は王立ティアマト学園、どうぞ」


 アナウンスが流れ、クラリッサたちのところに響く。


「ど、ど、どうしよう!? 相手はほぼ満点だよ! 勝ち目ないよ!」


「大丈夫。私たちも全然負けてないから」


「その自信はどこから来たの!?」


 クラリッサの自信は謎であった。


「でも、やるしかありませんわ。ここは頑張って相手よりいい点を取らないと」


「そうだよ、フィオナ。私たちならそれが可能だ」


 フィオナは覚悟を決めた。


「それじゃあ、行くよ。ファイト・ティアマト」


「ええい。ファイト・ティアマト!」


 そして、サンドラも気合を入れるとプールサイドに進んだ。


「王立ティアマト学園。一番手はフィオナ・フィッツロイ選手です。公爵令嬢の彼女ですが、今日はなかなかに攻めてきています。抜群のスタイルに、成績も抜群の才女の彼女ですが──今、観客席の方で何かが倒れる音がしましたが大丈夫でしょうか?」


 フィオナの父は卒倒しかかっていた。


「続いて、サンドラ・ストーナー選手。宮廷魔術師志望のこれまた才女です。今日は可愛らしい水着に身を包み、勝負に挑みました。果たしてどのような結果が出るのか。少しばかりの恥じらいが足を引っ張ってしまうかもしれません」


 先ほどのアガサの連れていた女子たちはプロのモデルとしての心構えを持ち、一切恥じることなく、モデル歩きで歩いていた。対するサンドラたちは普通に歩くのが精いっぱいというところで、自分の体を見せつけるなどできはしなかった。


 これが審査に影響を与えるのか否か。


「最後は王立ティアマト学園生徒会長クラリッサ・リベラトーレ選手です。今回の合同水泳大会に向けて職務に務められた立役者です。水着はかなりきわどいですが、アガサ・アットウェル選手と同じ志向でしょうか」


 そして、クラリッサが堂々と入場。


「勝つぞ、諸君」


 クラリッサはそう告げて観客席にVサインを送った。


「クラリッサ先輩ー!」


「きゃー! クラリッサ先輩頑張ってー!」


 観客席からは男女問わず声援が鳴り響く。クラリッサもアガサ同様に男子からも女子からも好かれるタイプなのだ。まあ、クラリッサは両方食べてしまうような人間ではないが。恋愛をするなら男の子とである。


「先ほどのプロの集団と比べるとアマチュア感は否めませんが、女子としての魅力は抜群の3名です。しかし、公爵家がこういうものに出るのは予想外でしたね」


「はい。公爵家も学園においては生徒のひとりというわけです。こういう行事に積極的に王室や公爵家がかかわってくれると盛り上がりが違ってなおいいですね」


「続いてサンドラ・ストーナー選手ですが、彼女はかなりの恥ずかしがり屋なようです。どう思われますか?」


「あまりよくはありませんね。自分に自信のない人間は他人から見ても魅力的に映らないものです。ここはその美貌に自信をもって、堂々としてほしいところです」


 サンドラが自分の話がアナウンスで堂々と流れるのに、さらに恥ずかしくなっていた。だが、指摘されたからには堂々としておくべきである。サンドラはなるべく胸を張って堂々とした態度を取った。


「最後にクラリッサ・リベラトーレ選手ですが、かなり攻めてきていますね」


「確かに。しかし、こういうイベントではイベントの発案者である生徒会こそが率先して加わるべきです。その点でクラリッサ・リベラトーレ選手もアガサ・アットウェル選手もよくやっているでしょう。それに彼女のあの自信に満ちた佇まい。こちらまで自信にあふれてくるかのようです」


「クラリッサ・リベラトーレ選手も人気が高いですね」


「はい。男子女子問わず人気です。時にクールで、時に熱血。そういう二面性が彼女の人気を際立たせているのだと思われます」


 クラリッサは自分が褒められているのにグッとサムズアップした。


「あ。点数が発表されるようです」


 審査員席が慌ただしくなると、得点の札が掲げられた。


「5点、4点、5点、計14点! 王立ティアマト学園の勝利です!」


 1点差というギリギリの得点ながらクラリッサたちは勝利した!


「それでは統合優勝も王立ティアマト学園ですね」


「はい。王立ティアマト学園の勝利です。見事な勝利を勝ち取った王立ティアマト学園の選手たちとそれに負けずと頑張った聖ルシファー学園の選手たちを褒めたたえ、拍手を送りましょう」


 会場が拍手に包まれる。


「勝った! 勝ったよ、クラリッサちゃん!」


「おう。見事な大勝利だ」


 サンドラが飛び跳ねてクラリッサに抱き着くのにクラリッサが頷く。


「やったな、クラリッサ」


「おお。エロクス」


「次にそう呼んだら女でもぶっ飛ばすからな?」


 フェリクスも勝利を祝いにやってきた。


「おめでとう、フィオナ嬢。満点じゃないか!」


「ありがとうございます、殿下」


「し、しかし、その水着は早く着替えた方がいいのではないだろうか? あまり他の人間にじろじろと君のことを見られたくないのだ……」


「まあ、殿下……」


 ジョン王太子の言葉にフィオナが頬を赤らめる。


「殿下。夏休みにはプライベートビーチに行きましょう。そこで殿下にだけこの水着をお見せしますわ。この水着も魅力的でしょう?」


「ああ。とても魅力的だ。だが、一番魅力的なのは君だよ、フィオナ」


 すっかりふたりだけの空間に入ったジョン王太子とフィオナであった。


「おめでとうございます、クラリッサさん」


「アガサ。惜しかったね」


「いいのです、いいのです。ゲームが盛り上がったことは間違いないですから」


 アガサは敗北したことは別に構わないと思っているようだ。


「それに私、王立ティアマト学園に賭けてましたからね」


「おおう。なんという売国奴」


「賭けは自由ですよ?」


 クラリッサが渋い顔をし、アガサはクスクスと笑う。


「それにしてもその水着、とてもお似合いですよ。よかったらうちでモデルしませんか? バイトとしてはかなり稼げますよ」


「むむ。興味深いけどパパが絶対に許してくれないだろうからなー」


 そう告げてクラリッサは観客席の方に視線を向けた。


 観客席ではリーチオが両手で顔を覆ってうつむいており、それをパールが励ましていた。クラリッサの水着に好印象を抱かなかったことは明白だ。


「そうですか。それでは、そちらのフェリクスさん」


「なんだよ」


 アガサはフェリクスに話しかけるのにフェリクスがぶっきらぼうにそう告げる。


「私と付き合いません? あなた、なかなか私の好みなんですよ」


「……はあ?」


 アガサがワクワクして告げたが、フェリクスは首を傾げたのみだった。


「私は正直に言って男の子も女の子も好きなタイプです。そして、フェリクスさんはその両方の魅力を持っている。これを口説かずにいられますか! クリスティンさんよりあなたを幸せにして見せますよ!」


「帰れ」


 フェリクスは冷たかった。


「残念。振られてしまいました。クリスティンさんへの愛はそこまで深いのですね」


「おいこら。勝手に俺の心情を捏造するな」


 よよよとウソ泣きするアガサにフェリクスが突っ込む。


「何はともあれ、いい試合でした。またこんなビッグゲームが開催できるといいですね、クラリッサさん」


「おうとも。次は体育祭で勝負だ」


「受けて立ちますよ」


 そんなこんなで合同水泳大会は王立ティアマト学園の勝利で終わり、クラリッサたちはたんまりと儲けたそうな。


……………………

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