だから⑥
なぜ、父上がバール王国の第二王子であるレナルド殿に頭を下げているんだ?
バール王国より小さいとは言え、国王である父上の方が格は上のハズなのに。
「レナルド殿下、数々のご無礼、申し訳ありません。ファビアンたちの処分は、私に任せていただいてもよろしいでしょうか?」
父上!?
私の処分?
私たちの処分?
私は頭が混乱して、言葉を失う。
これは……現実、か?
「それ相応の処分があれば、私もことを荒立てたくはないのだけれど、クリスティアーヌ嬢は、それでいいのかな?」
レナルド殿はなぜ、クリスティアーヌに問いかけてるんだ!?
わけがわからない!
「な、なぜ、そんな女に伺いを立てるのです! レナルド殿!」
「ファビアン! 辞めないか!」
憤慨する私を、父上が慌ててたしなめる。レナルド殿が、私を冷たく見据える。その視線に、ぶるりと震える。
「私は、クリスティアーヌ嬢に尋ねているのです。黙ることが難しければ、私が今処分を決めてもいい。ただ、私を愚弄し、私の愛するクリスティアーヌ嬢を侮辱する発言の数々に対する処分は、とても軽くはないと思いますがね」
レナルド殿の圧に、私はうつむくしかなかった。
……一体、何を言われているんだ?
私の何が悪いって言うんだ!?
「国王陛下に、お伝えしたいことがありますの。よろしいかしら?」
忌々しいクリスティアーヌの声に、私は顔を上げた。
「クリスティアーヌ嬢、何だ?」
表情を陰らせる父上に、クリスティアーヌが微笑んでいる。本当に、忌々しい。
「長年、ファビアン殿下の妃となるために、ファビアン殿下を拝見してきましたけれど、ファビアン殿下は、次期国王の器としてふさわしくないですわ。ですから、私は、ファビアン殿下の廃嫡を希望いたしますわ」
会場がどよめく。
父上は言葉を失っている。
ノエリアは慌てふためいている。
私はわけがわからなくて、クリスティアーヌを見つめる。
「はい……ちゃく?」
私の声がかすれた。
一体、どういうことだ?
「ええ。ファビアン殿下。廃嫡ですわ」
「はいちゃく……とは、どういうことだ?」
クリスティアーヌは意味の分からない言葉をよく使って、私を愚弄するのだ。
だから、きっと今も、私を愚弄するためだけに難しい言葉を選んだに違いない!




