ならば①
※『ならば』の主人公は、ノエリアになります。
「お前が、ノエリアか。まあ、顔つきは悪くないか……」
私の目の前に現れたのは、どう見たってお貴族様だった。
だけど、私の名前を呼ぶ理由がわからなかった。
何で、顔? 確かに、そんなに悪い顔ではないと思ってるけど。……まさか。母さん、お金に困ってとうとう私を売りはらうことにしたの?! 自分も身を持ち崩しているからって、私まで引きずり込まないでほしい!
「な、何よ!」
「口の利き方もなってないな。この娘の母親も、所詮、平民だからな。期待するだけ無駄か」
「だから、何なの!?」
「丁度、お前の年頃の子供が欲しかったんだ。行くぞ」
私の腕が、がしりとつかまれる。
どういうこと?
私は、貴族の令嬢だったってこと?!
「私、貴族の令嬢だったの? 庶子ってこと?」
そんなシンデレラみたいな物語が、本当に存在するってこと?
「お前が私の子供だと? そんなくだらない質問など、二度と口にするんじゃない。だが、お前は私の子供になるんだ」
……え? どういうこと? 私はこの人の子供じゃないの? なのに、子供になるの?
「養子ってこと?」
「質問するなと言っただろう! 私がどうしようと、口答えをするんじゃない。ただ、素直に従えばいいんだ!」
威圧的なお貴族様に、私は口をつぐんだ。
……でも、今までの生活より悪くなることはないだろう。
だって、言いなりになっていさえすれば、きっと大丈夫。
食べるものに困るような生活からは、これから抜け出せるんだ。
一体何が起こっているのか、私にはさっぱりわからなかった。
だけど、このチャンス、絶対生かしてみせる。
だって、もう底辺の生活になんて、戻りたくないもの!
ならば、求められている姿に、なってみせる!




