おしい
さて、予鈴が鳴って昼休みがもうすぐ終わることを知らせてくる。
何人かの子はもう次の授業の準備ができてる。
私も、教科書とノートを出して準備をする。
すると、諏藤先生が入ってきた。
そして、私の方に近づいてきて、
「美霊院。お前、大丈夫か?顔色悪いぞ。」
と声をかけてきた。それとともに、何か覗かれているような気がしてくる。多分、諏藤先生が特殊な方法で私を見てるんだろうね。ばれるかな?まあ、ばれたらばれたで問題ないけどね。だから特に隠すこともしない。と言うか、これでばれた方がおもしろいかも。私がどうゆう状態かわかったら、先生達がどう動くか興味あるし。むしろ、積極的にばらしにいこうかな?
「はい。全然へいきですよ。朝からよく言われるんですけど、特に頭が痛いとか、だるいとかもないですね。熱もないみたいですし、問題ないと思いますよ。」
不自然じゃない程度に、少し長めの返答をしてみた。
そのかいあってか、諏藤先生は私の状態をある程度は把握できたみたい。ようく見ないとわからないけど、少し顔が強ばってる。
なんとなくだけど、先生がわかってるのは私の体が死体だってことと、何かが取り付いて体を操ってるってことだけかな?直感的にそう思っただけだけど、この体の直感だから侮れない。実際、凜導先生が霊能者だって見破ったわけだしね。
「そうなのか?保健室には行ったのか?別に無理しなくてもいいんだぞ。」
お?これは、私の力を測ってる感じかな?多分、諏藤先生は私が悪霊か何かに殺されて体を乗っ取られたとか思ってるのかな?
まあ別に構わないけど、誤解を解くのは少し難しいかな?
もし敵対することになったら、めんどくさいな。戦いはやったこと無いけど、あんまり好きじゃない。
でも、たとえ敵対することになっても、私が先生二人に消される可能性は低いと思う。死んだ直後ならわからなかったけど、色々吸収した今、私の力は数倍に膨れあがっている。さっき相談してたときに言ってたみたいに、応援を呼ばれない限り大丈夫なはず。念のため、放課後にもいくつか吸収しておこうか。
「いえ、保健室には行ってないです。必要ないとおもいましたから。ほんとに無理してないので、大丈夫ですよ。」
「そうか。それならいいが、もし何かあったら言えよ。それぐらいお前の顔色は悪いからな。」
「心配してくれてありがとうございます。それじゃあ、そのときはお願いします。」
「ああ。」
そう言って、諏藤先生は教卓に向かった。そのすぐ後、チャイムが鳴って、授業が始まった。
さて、放課後が楽しみだなぁ。
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諏藤 遊牙
(まずいな。)
授業が終り、職員室に戻りながら考える。
仕事仲間の凜導に言われて“視”てみたが、全く予想外の事態だ。
まず、美霊院を一目見て、かなり顔色が悪いと思った。凜導も言っていたが、予想以上だった。青白いを通り越して、今にも死にそうなほどだ。そこで俺は、突然覚醒した膨大な霊力で体が不調をきたしているのかと思った。だが違った。
まず“視て”わかったのは、美霊院の体には何かしらの呪いがかけられているということだった。どうやらそれは、体の保護をするような呪いらしい。ただ、その呪いが霊力や呪力などによるものとは、少し異質な感じがした。だがその時点では、気にはなってもあまり重要に受け止めなかった。知らない事など、よくあるものだ。
もう少しよく視てみると、心臓が跳ねた。はっきり言って、心情を表に出さなかったことを褒めてもらいたい。何せ、心臓が動いていなかったのだから。美霊院は死んでいた。そして、何かが、美霊院の死体に憑依してなりすましているということがわかった。
これだけなら、まだ良かった。美霊院には悪いが、この仕事をやっていたら死人はよく目にする。可哀想だとは思うし、守ってやりたかったとも思う。しかし死人は蘇らない。だから割り切るしかない。俺にできるのは、被害が広がらないよう化生の類を倒すだけ。しかし、今回ばかりはそうもいかない。美霊院の死体に憑依している存在が問題だった。悪霊でも、妖怪でもない。あれはそう、神霊に近いモノを感じた。正確な力の程はわからなかったが、俺や凜導が逆立ちしても勝てない相手だということは確かだ。なんでそんな存在が、普通の女子高生の死体に憑依してなりすましているのかはわからないが、厄介なことになっているのは間違いない。早く凜導と情報共有して、上司に報告といきたいが、あいにく午後はずっと授業がある。放課後に話すことになるだろう。
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凜導 縁
諏藤君から報告を聞いて、絶句する。
美麗院さんが死んでいたことにもそうけれど、何より神霊がその死体に取りついていることに驚いた。
美霊院さんのことは残念だけれど、この仕事をやっていたら、どうしても人死にを経験する。なれることはないけれど、割りきらなければやっていられない。
「それで、どうするの?」
「どうするもこうするも、俺達の手には余る。上の判断をあおぐしかない。」
「そうね。」
悔しいけど、私達ではどうにもできない。ここは素直に上司を頼ろう。
諏藤君が携帯を取り出して、私達の上司に連絡をし……ようとして動きを止める。
「どうしたの?」
何か気になることでもあったのだろうか。
そう思って問うてみる。
「圏外になっている。」
「え、嘘でしょ?」
そう言いながら、私も携帯を取り出して見てみる。すると、右上にある圏外の文字が見える。
「嘘、なんで?」
はっきり言って、この学校は電波が悪いとかは無い。都会という訳でも無いが、物凄い田舎というわけでもない。近くには電波塔もあるし、ここは屋上だ。電波が悪いどころか、圏外なんてあり得ない。どうゆうこと?そう思っていると…
「それは私が結界を張ったからですね。」
突然声をかけられた。声が聞こえた方に顔を向けると、そこには、今しがた話題にのぼっていた、美霊院さんの体に憑依した何かがいた。
「美霊院、さん。」




