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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第19章 逆襲編
474/500

474杯目「気に入らない勝ち方」

 強化合宿が終わると、僕らは帰路に就いた。


 皐月が運転する車で帰宅する。僕、唯、伊織、皐月が乗るが、今回からは凜の希望で、彼女も同じ車で行きと帰りを共にすることとなった。怪しむ者は誰もいない。


 周囲からはただの女子会にしか見えない。


 僕らはきっと変わっている。だがそれと同じくらい、僕らも常識人を変わり者として見ている。


 みんな凜のことを昔から知っている。皐月とは彼女が葉月創製にいた頃からの仲だ。隣接するメジャー店舗にいるバリスタは知り合い以上の関係であることが多い。理由は定期的な交流会だ。バリスタたちは勉強も兼ねて、他のメジャー店舗を評価することがクエストに組み込まれている。


 手が空いた人のために『クエスト制度』が設けられており、暇な社員が現れることを防いでいる。


 店舗毎にクエストが決められており、本来別の店舗が行うはずだった仕事を別の店舗にいるスタッフが代行するクエストもある。ユーティリティー社員でなくとも部分的に活動に参加することができるのだ。様々な仕事をこなす内に、自らの得手不得手が分かってくるのも魅力だ。


 山を下りた場所から建物が目立つ。


 車は渋滞に巻き込まれることなく、信号以外で止まらないのが地方都市の魅力と改めて認識する。かつてしくじり都市と呼ばれたこの場所も、多くのバリスタがプロを夢見て集まる登竜門になりつつあるが、杉山グループの店舗が撤退したこともあり、物静かな場所も増えた。


「凜ちゃん、せっかくあず君の恋人になったんですから、これから一緒に住みませんか?」

「それは願ってもないことだけど、今一緒に住んだらバレるよ……間違いなく」

「その時はその時だ。葉月ローストの2階には誰も来ないし、いつでも出入りしてくれよ」


 凜の目の前に家の鍵を差し出した。思わず手に取ると、凜は大きな目を輝かせた。


「ありがとう。今はまだ仕事に集中したいから無理だけど、いつか必ず引っ越すから」

「そう……気長に待ってるから、いつでも言ってくれよな」

「ふふっ、そんなに私としたいんだー。たまに泊まりにいくから、また一発お願いするねっ」


 ウインクをしながら鍵をカバンにしまう凜。可愛い。


 今すぐ襲ってしまいたい欲求を抑え、葉月商店街の前に着くと、伊織と凜は颯爽と降りていき、手を振りながら僕らを見送った。すぐそばに家があるのに、何故だか遠く感じてしまう。


 伊織は葉月珈琲塾に預けている子供たちを引き取りに向かった。事実上の保育所となったが、子供たちが成長するには十分な場所となっている。近所の子供たちとも自然に触れ合う機会もあり、年齢毎にクラス分けをしていないため、年上や年下とも分け隔てなく接する人間性が育っている。子供たちが大人になる頃には、年上というだけで無条件に敬服する文化は消滅しているだろう。


 無条件に従わせるやり方では、会社依存の社畜しか育たない。


 僕らが育てるべきは、自分の足で堂々と闊歩できる人間だ。


 家の前には、璃子が今や遅しと佇んでいる。


「あれっ、璃子さんがいるぞ」

「確かにいますね。何か用があるんじゃないでしょうか」

「皐月は車庫に向かってくれ。唯は夕食の準備だ」

「分かりました」


 車から降りると、何かを察したように唯が離れていき、皐月は運転しながら車庫へと向かった。


 僕1人だけが残され、璃子が歩み寄ってくる。世を忍ぶ仮の姿は事実上消滅している。


 少なくとも、璃子が堂々と自分らしくいられる社会にはなった。あれだけ内気で小心者だった璃子の姿が昨日のことのように思える。僕と2人きりになると、葉月グループ系列でない町外れのカフェへと案内された。どうやら身内にさえ知られたくない話があるらしい。


 夕食のことを考え、注文はコーヒー1杯で済ませた。


 他の客とは距離を置いた。出入口やキッチンから離れたテーブル席に着き、注文したコーヒーがテーブルに置かれると、璃子はスタッフが離れたところで、僕と視線が一致する。


「で? 何か話があるんだろ?」

「お兄ちゃんが得た情報が正しければ、鍛冶議員が殺した槍崎さんの死体は、恐らくバリスタランドの中にあると思うの。でも洪水で流されたって話もあるから、多分下流の近くかな」

「言っとくけど、宝探しなんて二度と御免だからな。鍛冶議員は用心深くて用意周到な性格だ。洪水の前にまず警報があったはず。僕だったら流されないよう別の場所に移すけどな。絶対に見つかっちゃいけない遺体の隠し場所なんて限られてる。最初は地下にでも隠したんだろうが、洪水警報の前に掘り返していても不思議じゃない」

「じゃあバリスタランドの外にあるってこと?」

「その可能性は限りなく低い。園内の方が安全だ。バリスタランドにはいくつかの進入禁止区域があることが分かった。建築が進んでいない場所、既にオープンされている施設の関係者以外立ち入り禁止区域、まだ改築中の工事現場、アトラクション施設内の地下室、スタッフでもそうそう入れない場所をいくつかピックアップしてみた。でも場所が多すぎて、僕1人で調べていたら、あっという間に選挙期間が過ぎちまうのが難点だな」

「だったらみんなで探せばいいじゃん」

「あのなー、こっちの狙いがバレたらお陀仏なんだぞ」

「心配ないよ。確実にバレない方法があるから。お兄ちゃんは雁来木染に変装してもらって、バリスタランド支配人として潜り込むの。支配人は現場の全てのアルバイトに指示を出す権限があるのは知ってるでしょ。4月にバリスタランドを乗っ取ってから就任した支配人の1人を異動させたから、雁来木染には次の支配人が決まるまでの代行という名目で支配人をやるの」

「で? そのめんどくせえ役はいつからやるわけ?」

「明日から。手配は済ませてるよ」


 にっこりとした顔で璃子が言った。またしてもしばらくは夜型の生活が続くことを覚悟した。詳細を聞いてみれば、支配人の仕事は午前9時から午後5時までの前半支配人、午後5時から午前2時までの後半支配人に別れており、後半支配人を異動させ、しばらくは空きができてしまったとのこと。


 璃子は副総帥としての仕事の傍ら、バリスタランドの改革にも乗り出し、コーヒーブームに乗っかる魂胆であることはもちろんだが、プロバリスタを目指す者たちが目標にする場所にしようとしている。今年からはバリスタ甲子園の開催場所がバリスタランドに変更され、中央エリアの各都道府県代表店舗が取り囲む格好となっている噴水は廃止となり、大会用のステージが中央エリアに設置される。


 杉山グループの監視の目は既に取り払われた。今や葉月グループが好き放題に建設を繰り返しているという噂を民衆が勝手に広めてくれているお陰で警戒されない。一度は疑われたとしても、通り過ぎれば二度と疑われないし、鍛冶議員は選挙期間中、バリスタランドを監視している余裕がない。この時が唯一のチャンスだ。当選すれば東京に引っ越すとはいえ、まだ息子の監視がある。バリスタランドには鍛冶議員の手下が監視の目を光らせている。下手に荒らせば狙いを感づかれ、命の危険さえある。乗っ取りに成功したことで、大幅な構造改革は中止となり、特に荒らされることもないと高を括っている。コーヒーイベントが近づけば、僕もまた忙しくなる。


 璃子は目を光らせながら席を立ち、僕を見下ろすように眼球をゆっくりと動かした。


「この機を逃せば、鍛冶議員を捕まえる機会はもう訪れないだろうし、杉山グループとはコーヒーイベントで決着をつけないといけなくなる。もう1敗も許されないこの状況でうちが勝つには、コーヒーイベントまでに杉山グループと決着をつける必要があるの」


 この言葉には噴出寸前にまで血が上った。コーヒーイベントを捨てている目だ。


「……何が言いたい?」

「私は杉山グループ本部株を過半数買収する。コーヒーイベント前に買収してしまえば契約書の内容も全部無効にできる。優勝回数勝負はどっちのグループも存続している場合のみ有効って契約書に書いてた。これがどういう意味か分かる?」

「勝ち越せなかったら乗っ取ればいいっていう抜け道だろ?」

「そゆこと。分かってるなら反対する理由はないでしょ。元々は杉山グループ側の最終手段だった。それをこっちが利用するってだけ。ちょっと強引な手段にはなるけど、これから杉山グループの役員たちを寝返らせて、本部株を渡してもらう」


 璃子は本気だ。人の心を動かす手段を知り尽くしている。


 寝返らせようと思えばできるだろうが、最悪体を売るかもしれない。


 組織のために個人を捨てられる優しい人間だ。手段を選ばないとは、できることを一通り全部やることを意味している。たとえそれが邪道であろうと、最終的に勝てればそれでいいという発想が世の中を腐らせてきたのは歴然とした事実。何よりそんな道に妹を巻き込みたくはない。


 不利なのは確かだが、正攻法で勝てないなら、それも運命と思う自分がいる。


「璃子、僕にだって気に入る勝ち方と気に入らねえ勝ち方ってもんがある」

「そうやって何の根拠もない意地ばっかり張ってきた結果が今でしょ。少しは尻拭いする側の身にもなってよ。お兄ちゃんだけのグループじゃないんだよ」

「あのなー、そもそも向こうが不正をしなければ、今頃は勝ち越してたんだぞ」

「それは結果論でしょ。勝つためなら何でもするのが、杉山グループの恐ろしいところなのは分かってたはずだよ。こっちもそのつもりで臨まないと、最悪旧虎沢グループみたいに乗っ取られて、お兄ちゃんの愛する社員たちがみんな首切りの嵐に巻き込まれて、挑戦どころかやり直しの機会すら奪われる。手段を選んでいたら勝てない相手だってこと、忘れたわけじゃないでしょ?」

「相手が不正をしているからと言っても、こっちまで汚い手段を使っていい理由にはならねえよ。それともうちのバリスタがそんなに信用できねえのか?」


 発言した途端、璃子の涙腺に液体が溜まっていく。


「お兄ちゃんなら……分かってくれると思ってたのに」


 たまらず背を向ける璃子の後頭部からは哀愁が漂っている。


 泣き落としのつもりなんだろうが、そうはいかない。他の人なら譲歩していただろうが、僕とて璃子のことを何も把握していないわけじゃないと思いながら席を立つ。


 空を雲が多い尽くし、辺りが暗くなっていき、マンションのライトが徐々に明かりを灯し始めた。


 分かってんだよ……そんなことは。手段を選んでいたら勝てないことくらい。でも勝ちを確信できる勝負さえ信用しなくなったら……正々堂々とした自分でいられなくなったら……人としても組織としても末期である。ましてや汚い手段を用いるなど、杉山グループがしてきたことと何ら変わりない。


 歴史は繰り返すとは……よく言ったものだ。


「――璃子の言い分が分からないとは言わねえよ。本部株を買収したいならそうしろ。でもな、仮にそんなやり方で勝ったとしても、アマチュアチームとの決着にさえ背を向けるようなグループが、この先世界を相手に通用するバリスタを育てられると思うか?」

「……」


 最後に言葉を残すと、僕はその場に立ち尽くす璃子を置いて会計を済ませ、店の外に出た。


 僕の分だけを払い、ポツポツと雨が降り注ぐ中、地面に溜まった水を足で跳ねさせた――。


 その後、璃子からの連絡はなかった。僕は僕で、璃子は璃子で、それぞれがバラバラに行動することが決定したのだ。久しぶりに璃子と喧嘩した。あの時も璃子のことを知ったつもりでいた。何なら優子の方が璃子の心境を見透かしていたくらいだ。乙女心は簡単じゃない。世の中と同じくらいに複雑怪奇なもので、ある意味では世の流れそのものかもしれない。


 良くも悪くも変化し続ける存在で、理解はできないが、知ることはできるものだ。


 翌日――。


 夕方を迎え、雁来木染に変装すると、タクシーでバリスタランドへと向かった。


 正体を知るのは僅かな人のみ。他の人はすぐ顔に出るのか、知らせることはNGである。敵を欺くならまず味方から。実に璃子らしい合理的な考え方だ。徹底した秘密主義で本当の自分を誰にも悟らせない。というか存在すら認識させない。まるで忍びのようだ。僕でさえ本当の璃子を知らない。影の世界を生きる者の習性が、その口を閉ざしているように思える。


 性格の根本は変わっていないのだと、景色が横に移動するタクシーの中で考えた。


 僕にとっては気に入らない勝ち方だ。本部株を奪い取るのは、あくまでも牽制のためで、決着の前に乗っ取るわけではない。アマチュアチームにさえ勝てないで、何がトップバリスタだ。うちのバリスタたちが強化合宿をしてきたのは、アマチュアチームを倒すためじゃねえのかよっ!?


 璃子にとって優勝回数勝負は、乗っ取れなかった場合の最終手段でしかないんだろう。


 不利ではあるが、不正がスコアに響いていたとなれば話は別だ。練度は確実に高まっている。去年は強化合宿に参加した全員がコーヒーイベントに進出した。なのに優勝回数勝負の前に決着をつけるなんて言われたら、まるでうちのバリスタが舐められているようにしか思えねえ。無論、不正をあるものとして考えてサポーターチームに警戒させなかった僕の責任でもある。璃子が信用していないのは、うちのバリスタじゃない。どちらかと言えば僕の方だ。璃子が僕に変わってグループの指揮を執るようになったのは、僕が勝手に優勝回数勝負を引き受けてしまってからだ。


 このままじゃグループはバラバラになる。


 真の参謀は現場指揮を執らない。


 それだけ焦っていることの裏返しでもある。乗っ取られた後のことまで考えている。最悪の事態まで想定するのが戦略の基本だ。僕のような戦術家には分からない。目先の戦いを制する方がずっと楽だ。しかしながら、大局を左右するには至らないと見なされている。バリスタランド乗っ取りも、大局的には少しばかり押し返したにすぎない。だとすれば、僕はきっと駒の1つだ。


 僕はコーヒー業界の玉ではない。葉月グループの歩なのだ。


 ならば最強の歩となり、大局さえ変えてみせよう。


 璃子からの信用を取り戻すには、杉山社長の()()をへし折るしかない。


 待ってろよ。必ず証拠を掴んでやる。


 改装されたバリスタランド・スタッフホテルに就く。外観は以前とは異なり、明治時代の建物を意識したレトロデザインだ。内装も平成や令和の雰囲気を排除している。流石は立花社長といったところ。僕は中継ぎの後半支配人、雁来木染としてバリスタランド・スタッフホテルの支配人配属となったわけだが、これだけ大勢のアルバイトを動かすのは決して楽じゃない。そのためか、ここのスタッフとしての経験者がいくつかの業務を代行することが決まっている。僕はほぼ見守るだけの仕事となった。支配人の仕事が僕に務まらないことは璃子に見抜かれていたようだ。


 僕は特に信頼関係の厚い人との再会を果たした。


「あっ、お前雁来じゃねえか。久しぶりだなー」


 田辺さんが戦友と語らうが如く、意気揚々と話しかけてくる。


 清掃員の仕事は店舗スタッフに役割分担をしたものの、改築したスタッフホテル、土産物店、アトラクション施設、園内歩道の掃除は相変わらず清掃員に任せている。半年前に比べてスタッフの数は大きく削られたが、僕が知り合ったスタッフの多くが生き延びていた。


 まだ完全に改装が終わったわけではないが、今年中には終わる模様。スタッフホテルの改装が最優先事項だ。スタッフを幸せにできない企業が客を幸せにできるはずがないという企業方針を汲み取ってもらう格好となった。井岡さんに岡野さんまでもが僕に気づき、口を開けながら歩み寄ってくる。


「久しぶり。元気してた?」

「ああ、雁来はあれからどうしてたんだ?」

「おいおい、失礼だぞ。この人はここの支配人だ」


 塚田さんが田辺さんの横から割って入り、呆れ顔のまま注意を呼びかけた。


「支配人っ!?」

「気にしないで。肩書きが変わっただけで、偉くなったわけじゃないから」

「こーゆーてんねんからええやん。久しぶりやな」

「てっきりもう来ないものと思ってたけど、どういう風の吹き回し?」

「今日からここの支配人になったの。仕事の話があるから、ちょっと一緒に来てくれない?」

「「「「?」」」」


 きょとんとしながらも、田辺さんたちは僕についてきてくれた。


 人気のない場所に呼び出し、清掃業務の範囲を確認する。清掃が行き届いている範囲は把握した。特に清掃しない場所は僕が思った通りだが、範囲があまりにも広すぎる。僕1人で調べるのは限界があるし、かと言ってみんなで立ち入り禁止区域を清掃すれば、鍛冶議員に狙いを感づかれてしまう。そこで少数精鋭のチームを結成し、立ち入り禁止区域をこっそり捜索することを思いついたはいいが、誰をチームに引き入れるかだ。大勢で捜索すれば、間違いなくばれる。


 鍛冶議員に恨みを抱いている人が1人でもいれば、どうにかならんこともないが……。


 もっともらしい名目は、バリスタランド先代社長、鍛冶一茂の忘れ物を探すというものだ。


「やれやれ、何かと思えばなくし物かよ」

「詳細は私もよく知らないけど、バリスタランドのどこかに指輪を落としちゃったみたいなの。普段は立ち入り禁止区域になっている場所も偵察していたみたいだからそこも君たちに探してほしいの。期限は問わないけど、なるべく早く見つけ出してほしいの。君たちだけ立ち入り禁止区域に入る許可を出すから、くれぐれも誰かにバレないようにしてね。企業秘密とかもあったりするから」

「お、おう……でも何で俺たちに?」

「葉月グループ側の人間である私が捜索してるって知れたら、鍛冶一茂の面目が丸潰れでしょ。父親である鍛冶茂雄議員はプロ契約制度を廃止しようとしている人だし、下手に刺激したくないの。そこで秘密裏に先代社長だったどら息子に恩を売るってわけ。無理にとは言わないけど、どうする?」

「……いいぜ。雁来さんには恩があるからな」

「私も賛成。大事なことを教えてくれたもんね」

「うちらな、あれから一生懸命仕事するようになったんや。どんな仕事だろうと、働く以上は最大限にこなすくらいしないと、いつか引退する時にもっと頑張ればよかったって後悔すると思ってな」

「そうそう。雁来さんは私たちの人生を変えてくれたんだから、それくらい喜んで引き受けるよ」

「……ありがとう」


 さっきまで冷めきっていた胸の奥が温まり、消えかけていた自信に再び火を灯した。


 私たちの人生を変えてくれた……か。その私たちの中には、僕も含まれている。


 自分自身を奮い立たせる言葉でもあった。こいつらも人間捨てたもんじゃないってことを教えてくれた大事な仲間だ。今までは自分を変えてくれるような、魂が歓喜の叫びを上げたくなるような、そんな素晴らしい出会いがなかっただけで、こいつらはもっと評価されるべき存在だ。


 ただでさえ今の僕よりも不利な条件で戦い続けてきたのだ。谷底に落ちることが決まっている無理ゲーを乗り越え、ここまで生き延びてきた。


 この時、バリスタランドが運命を変える鍵を握っていることを……僕は知らなかった。

読んでいただきありがとうございます。

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