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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第12章 グランドスラム編
293/500

293杯目「抜け落ちた重い翼」

 10月中旬、葉月珈琲は1人のバリスタを欠いたまま店の営業を続けた。


 カフェはコーヒーの魅力を伝える最前線だ。早く復帰してほしいと思ってはいるが、なかなか千尋からの連絡が来ないまま時間だけが過ぎていった。


 メールも返してはくれなかった。返す余裕がないんだ。次に来る日すら未定。


 ある営業日の午前11時、ドアベルがカランコロンと店内に鳴り響くと、やや落ち込み気味の千尋が顔を見せてくれた。後ろからは子供を抱きかかえている明日香が入ってくる。


「あっ、千尋君。どれだけ心配したと思ってるんですか?」

「あはは……ごめんね。色々あって連絡する暇もなかったんだよねー」

「あの、この度はうちのちーちゃんがお騒がせして、申し訳ありませんでした」

「いいんだ。葬式なら仕方ねえよ」

「そうだよー。明日香ってば、いちいち謝らなくても――ひいっ!」


 調子に乗った千尋が台詞を言い終える前に、明日香の獣のような眼光に気づく。


 彼のアホ毛がアンテナの如く、本能的な危機を感じ取った。


「あんたも謝って」

「……はい……ごめんなさい」


 いつもより低く威圧的な声を前に、流石の千尋も成す術なく服従させられている。


 完全に明日香の方が上位の関係性だな。家でも家事育児をさせられているとメールで度々愚痴ってはいたが、こういうことだったか。唯の場合は笑顔で怒ってくる。こっちの方がずっと怖い。


 僕が他の女性と仲良しそうにしているのを見ると、その日は積極的に体を欲してくる。人生の半分程度つき合ったが、未だに乙女心というものが理解できずにいる。永遠の謎と言っていいカテゴリーだ。


「千尋君? ……大丈夫ですか?」

「うん……大丈夫」


 心配する美羽に力なく返事をする千尋。その表情からは覇気が完全に抜けていた。


「やっと立ち直ったか」

「あれから色々あってさー、葬式の喪主から手続きまで全部やんないといけないし、周りからはバリスタを辞めて会社を継ぐように言われたり、もう散々だったよ」

「えっ、じゃあ落ち込んでたんじゃねえの?」

「それもあるけど、慣れない行事で体調崩しちゃったし、親戚とのつき合いもあったし、村瀬グループの役員たちとの飲み会もあったし、冠婚葬祭なんてもうたくさんだよ。明日香が親戚からプレッシャーをかけられてて、見るのが不憫だった」

「なんか言われてたのか?」

「2人目の子供の顔が見たいとか、ちーちゃんを説得するように言われたりとか、ホント無茶振りばっかで全く懲りないんですよ」


 変わらない親戚の言葉にタジタジになるのはお互い様だ。RPGに出てくる村人のように、いつも同じ台詞ばかりだ。飽きないんだろうか。まるで同じ時間をグルグルと回っているような気分になる。


 あれから千尋と明日香はますます仲良しになった。数多くの挫折を乗り越え、お互いにシンパシーを感じている。親戚とのやり取りが新たなシンパシーを引き出した。この2人は長続きするだろう。


 千尋には年上の女が似合うようだ。可愛がるよりも可愛がられる方がいいらしい。明日香はしっかり者である上に、こいつの伴侶を務めるだけのプレッシャーへの強さを持っている。彼女が何故千尋とつき合うようになったのかがよく分かった気がする。以前会った時よりもたくましくなっていた。明日香は小夜子を助けるために働いていたし、人を助ける役割に喜びを感じるタイプなのかもしれん。


 さっきから黙ったままの伊織が千尋の正面に立った。


 彼の手を力強く握ると、情熱的な目で千尋の顔を見つめた。


「ど……どうしたの?」

「千尋君、自分だけで抱え込まないでください。何かあったら私たちが相談に乗ります……もう……黙っていなくならないでください」


 涙声のまま千尋の手をギュッと握り続ける伊織。何も言わずとも分かる。千尋のことを1番心配していたのは、他の誰でもない伊織だった。最初こそライバルのような関係だったが、同じ職場で働く内に親近感が湧いてきたようで、その信頼関係はただの同僚の関係を超えていた。


 伊織は妙に仲間想いで、依存するところがある。


「大袈裟だなー。僕がいなくなるわけないだろ。来年にはチーム戦もあるんだし」

「てっきり忘れたのかと思ってました」


 心配する伊織を他所に千尋は窓に指を触れ、景色を一望し、沈んだ顔で物思いに耽っている。


「親父は口ではあんなこと言ってたけど、心底では諦めてなかったんだよ。僕が後継者になることを。だから役員たちは必死に僕を担ぎ上げようとしてた。みんな僕がいないとグループが駄目になるって思い込んでる。1年前の令和恐慌のせいで」

「昭和恐慌から大体90年ぶりくらいだよな。ちゃんと不況対策してて良かった」

「ちーちゃんがこんなに遅れてしまったのは、あず君たちと一緒に仕事をして生きていくために役員の皆さんの家に赴いて、丁寧に1人ずつ頭を下げて回っていたからなんです」

「ええっ!? そうだったんですかぁ!?」


 思わずのけ反ってしまうほどの驚きを見せる伊織。


 彼女はプライドの高い千尋が頭を下げるとは微塵も思っていなかった。もし頭を下げなければ、千尋を奪う格好となってしまったうちを村瀬グループが攻撃する可能性があったのだ。彼はIQが高いが故に愚者が犯す次の行動が筒抜けだ。自分が入ったことで足を引っ張る可能性を消し去りたかった。


 村瀬グループは令和恐慌により、事実上とどめを刺される格好となった。国内市場が縮小しきる前に海外進出を果たすのが唯一生き延びる道であったが、もはや海外進出どころではない。いかんせん舵を切るのが遅すぎた。千尋は先見の明がない彼らと綺麗さっぱり縁を切るつもりでうちにやってきた。


「明日香ぁ~。何もここで言わなくていいじゃん」


 明日香の豊満な胸に泣きつくように擦り寄る千尋。


「こうでも言わないと、ちゃんと分かってもらえないでしょ」

「頭を下げたことなんか知られたくなかったのにぃ~」

「私はちっともダサいとは思わないですよ。ふふっ」

「今僕が頭を下げるところ想像したよね?」

「ふふふふふっ……ごめんなさい。なんかおかしくなって」

「はぁ~。そういう反応するところまで読めてたのに」

「何言ってんの。頭を下げられるのは才能だぞ。僕なんか死んでもやりたくないって思ってる。業務提携を結ぶ時は、腰の低い奴に行かせる」

「あず君はもっと頭を下げた方がいいと思います」


 半ば呆れ顔で伊織が言った。千尋がここ2週間ずっと不在だったのは、村瀬グループの一員として最後の仕事を遂行するためであったことを聞いた僕らは安心を覚えた。


 彼は名実共に村瀬グループを卒業したのだ。同時に葉月珈琲との業務提携も、次期社長に懇願して打ち切ることに。残酷ではあるが、これは実に賢い選択だ。老い先短いことが分かっている企業と取引やら業務提携やらを行うのは足を引っ張られる予感しかしない。


 最も期待していたはずの御曹司に見捨てられるとは、こりゃ死んでも死にきれんな。


「ちーちゃん、本当にいいの?」

「いいんだよ。保守派を追い出すのがいかんせん遅すぎた。多分日本も100年以内に村瀬グループとおんなじ末路を辿るかもねー」

「リアルすぎて笑えないんだけど」

「そんなことよりさ、早いとこ来年以降のことを考えたらどう?」

「それ、どういう意味ですか?」

「葉月珈琲は実力主義だよ。僕も伊織ちゃんも結果を出さないままだったら、この店から蹴り出されるんだよ。他の店にはやる気も才能もあるような人たちが葉月珈琲のスタッフの座を狙ってる。うかうかしてる場合じゃないと思うけど」

「そんな言い方しなくても!」


 挑発と受け取った伊織は千尋に言い返そうとするが、ここで涙ぐむ千尋の姿に気づいた。


「……もう大事な人たちと……離れ離れになりたくない。あず君も伊織ちゃんも、みんな僕にとっては掛け替えのない仲間だよ。ただでさえ1人去っていくだけでも寂しいのに3人も入れ替わるんだよ。去年だって璃子さんと優子さんと真理愛さんがここを去って、どれだけ寂しい思いをしたか……」

「千尋君……そんな風に思ってたんですね」

「ちーちゃんは人一倍寂しがりだからねー。人と死別したり、異動でいなくなったりする光景に、最初は全然耐えられなかったもんね」


 明日香が後ろから千尋を抱き寄せ、彼の頭をポンポンと軽く叩き、幼い子供をあやすように宥めた。


 駄目だ。笑いをこらえるのが精一杯だ。童顔も相まって赤ちゃんをあやしているように見える。


「千尋、安心しろって。伊織も千尋もポテンシャル採用だし、今やうちの主力だ。そう簡単に手放すことはない。また結果を出すまでは辛抱するよ。それに今度うちに来る3人は、全員凄腕のバリスタだ。良いライバルになると思うぞ」

「どんなバリスタなんですか?」

「まだ内緒だ。あっ、そうだ。2人共日曜日空いてるか?」

「一応空いてますけど」

「僕も大丈夫だけど」

「決まりだ。今度の日曜日、僕が本格的にバリスタを目指すきっかけになった店に連れていく。調べてみたら、まだあるみたいだからさ」

「あず君がバリスタを目指したきっかけのお店ですか。楽しみですね」


 好奇心を剥き出しにしながら伊織が言った。


 遊園地に行く前の子供のような笑顔から、ワクワクする気持ちが伝わってくる。


 千尋も興味は持ってくれているようだ。


 日曜日、僕は伊織と千尋を同行させ、以前林間学舎で行ったことのある高山市へと赴いた。


 名目上は出張ということになっているが、どちらかといえばピクニックという感覚だ。川下りを楽しんでからはうろ覚えのまま高山市内を彷徨っている。


「ねえ、本当にこっちの方向で合ってるの?」

「多分な。確かこっちだったはず」

「もう30分近くも歩いてるんですけど」

「ていうか何で唯までついてくるわけ?」

「あず君が本格的にバリスタを目指すきっかけのお店と聞いたら、私としては放っておけません。あず君がバリスタにならなかったら出会わなかったかもしれないんですから」

「ていうかどんな店なの?」

「『朝日奈珈琲』っていうカフェだ」

「カフェなんですね」


 僕、唯、伊織、千尋の4人は既にヘトヘトだ。


 この辺で休んでジュースでも飲もうものなら、せっかくのカフェ巡りが台無しだ。ここにあったはずなんだが、以前来た時は後ろに女子の列が並んでいたのが気になって道筋を把握してなかった。


 まあでも、どこにどんな出会いがあるか分からないし、成人後の修学旅行なら全然ありかもしれん。


「あれじゃない?」

「あっ、あれだぁ!」


 目の前に見えた木造の店は、紛れもなく以前見た建物と同じだ。


 早速中へと入ってみる。コーヒーカップを拭いていたお姉さんらしき人に迎えられた。


 どうやらこの人だけらしい。


「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ」


 意気揚々と笑顔で挨拶されると、カウンター席に腰かけた。


 ミディアムヘアーで赤みを帯びた茶髪が特徴の大人しそうな女性だ。端正な小顔でバリスタらしい制服を着こなしており、動きがとても丁寧だ。そして何より……でかい。


 スタイルも良くて豊満な胸だ。形も良いし、スタイルが分かる制服なのも僕的にポイント高い。看板娘としては十分すぎるほど可愛らしい外見に思わず見惚れてしまった。


 メニューは以前と変わりのないもので、素朴ながらシンプルだった。


 エスプレッソを4人分注文する。すると、マスターと思われる女性がポルタフィルターにコーヒーの粉を入れると、それを近くに置いていたパレットナイフで丁寧に詰めている。


 ――あの動き、どこかで見た気が。


「すみません。どうしてパレットナイフを使っているんですか?」


 作業の様子を見ていた伊織が聞いた。


「これですか? コーヒーの粉を詰める時に指を触れないようにするためなんです。バリスタは衛生面に気をつけないといけませんから」


 ――! 思い出した。ここで出会ったあの人にそっくりだ。


 ここは思い切って聞いてみることに。


「以前ここに来たことがあるんだけどさ、その時ここに白い髭を生やして、眼鏡をかけたおじいちゃんみたいな人がマスターを務めていたはずなんだけど、心当たりないかな?」

「恐らく先代ですね。ここは私の祖父の兄である、大伯父が始めたお店なんです」

「僕、その人がきっかけでバリスタを始めたんだけど、もし良かったら、会わせてもらえないかな?」

「……申し訳ありませんが……先代は5年前、病気で亡くなりました」


 さっきまで明るかった女性の表情が曇り空のような陰りを見せた。


 あの人――5年前まで生きてたのか……ん? 待てよ。確か5年前って。


「あっ……ごめん」

「いえ、いいんです。私は朝日奈桜子(あさひなさくらこ)です。桜子と呼んでください。先代はコーヒーの淹れ方にとても拘っていました。私がここで修業を始めた時も何度も注意されてはやり直しになっていたんです。あの時が懐かしいですね」

「あそこにあるピアノは?」

「あれも先代との思い出の品です。先代ったら、ある日やってきた小学生くらいの子供がトルコ行進曲を1回聞いただけで目を瞑ったまま再現してみせたって自慢げに言ってたんです。私はそんなの御伽話でしょって言ったんですけど、先代はその子供がまたやってくるのをずっと待っていたそうなんです。でも5年前、バリスタオリンピック東京大会が終わってから数日後に倒れて、帰らぬ人になってしまいました……まるで肩の荷が下りたような顔でした」


「……覚えてくれてたんだ」

「えっ?」

「ちょっとピアノ弾いてもいいかな?」

「は、はい。構いませんけど」


 伊織が首を傾げたが、僕は構わずピアノの席に座った。


 そして……あの時に戻ったかのように、目を瞑りながらトルコ行進曲を弾き始めた。店内には小夜子たちが思わず舌を巻いた音色が流れている。あの時ピアノを弾きながら聞いた音と全く同じだった。


 かなり古いが、とても大切にされていたのが分かる。


 演奏が終わると同時に、拍手の音が聞こえてくる。


「もしかして、先代が見た子供って――」

「ああ、僕だ。先代に一目会いたかったけど、代わりに桜子に言わせてほしい。僕をバリスタの道へと導いてくれて……ありがとう」

「いえいえ、きっと先代も喜んでいると思います……ずっと誇張表現とばかり思ってましたけど、あなたの演奏を聞いて確信しました。先代は嘘吐きじゃなかったんです」

「覚えててくれたんだ。あの日からずっとな。これからもたまーに遊びに来る」

「お気持ちは嬉しいのですが、このお店は、今年いっぱいで閉店することになっていまして」

「「「「ええっ!?」」」」


 僕らは一斉に目を大きく見開いた。


 おいおいおいおい、金華珈琲だけじゃなく、ここも潰れんのかよ。


 ここんとこ閉店ラッシュだな。しかも僕のお気に入りの店ばっかじゃねえか。うちが段々と大きくなる一方で、他の店は段々と衰退していく。栄光の裏側でこんなにも多大な犠牲が出ていたとは思わなかった。コーヒー業界を押し上げるはずが、大切なものを代償として失っているように思える。


「今年の上半期は令和恐慌の影響で、うちの近所のお店も次々と潰れていったんです。それで仲良くしていた常連の方たちがみんな引っ越してしまって、うちもその余波を受けることになったんです。今度知り合いの紹介でコーヒー会社に転職することになったんです」

「ここって、いつまで営業しているんですか?」

「12月までです。閉店したらすぐに来年から転職先で働くことになるので、この地域ともお別れになります……このお店も……売りに出す予定なんです」

「こんなに素敵なお店なのに、売りに出しちゃうんですか?」

「固定資産税が高くて、もうこれ以上は払いきれないんです。うちにはかつてたくさんのお客さんがいらっしゃったのですが、今はほとんど来なくなってしまったので」


 桜子が黄昏を感じるような目で、僕らの後ろにある古びたテーブル席を眺めている。


 僕ら以外は誰もいない。それだけ地方の過疎化が進んでいるという証だ。


 これが多くの個人事業主の実態だ。人生経験豊富な先代であれば、この令和恐慌を生き延びることもできただろうが、後を継いだばかりの桜子には難しかったようだ。


「来年から転職ですか。引っ越し先はもう決まってるんですか?」

「いえ、岐阜県内であることは間違いないんですけど、まだどこになるかは決まってません。以前バリスタ競技会に出場した時、そこで知り合った人が職場を手配してくれる予定で、12月頃に引っ越し先と職場が決まる予定なんです」

「結構先送りされてるね」

「12月の時点で手が空いている企業に私を紹介していただけるみたいなので、それまではここで最後の仕事をしているんです。もうこんな時間ですけど、今日来ていただいたお客さんも、あなた方が初めてなんです。ここ数日、お客さんが数えるほどしか来ていただけなかったので」

「宣伝はしたの?」

「これから閉まるお店を宣伝しても、意味はないと思いますが」

「何言ってんの。有終の美っていう言葉があるだろ。僕が最初にここに来たのは、林間学舎でここまでやってきた時だ。あれからもう20年経つけど、この店のことを忘れたことはない。僕にとっても思い出深い場所だ。だから宣伝させてくれ。ここが閉まるまでは忙しくしてやる」


 この店を宣伝して、あわよくばこの令和恐慌を乗り越え、長く続く店になってほしい。


 そうすれば彼女だって、ここを離れずに済むはずだ。


 これ以上は潰させたくない。僕の大好きな店を。これが栄光の代償というのなら栄光なんて真っ平御免だ。自分1人だけが幸せな世界って……寂しいものだな。僕は心の底から思った。自分だけじゃなく、仲間とみんなで笑い合える世界の方がずっといいと……桜子が御伽話と笑ったことが事実だったように、僕が想像している御伽話も事実として世の中に広めていきたい。


 そんなことを考えながら、僕は桜子の目を正面から見つめた。


 何やら戸惑いを見せながら首を傾げる桜子。


「それは願ってもないことですけど、本当にできるんですか?」

「何とかする。明日もう一度ここに来て撮影する。動画にして宣伝すれば以前よりマシになる。多分その知り合いが最後の最後まで転職先を言わないのは店が潰れないことを信じているからじゃねえかな」

「だと嬉しいですけど」

「今日はまだ昼飯食べてないから、ここで昼飯にするか」

「そうですね」


 終焉間近のカフェで、僕らは昼食を取ることに。


 桜子は笑顔を見せながらも、調理中は後ろ向きのまま度々鼻水を啜るような仕草を見せた。料理はかなりできるようだ。スイーツも美味い。この子ならきっと……どこに行ってもやっていけると確信した。というかそもそもここの店に居続けてほしいんだけどな。


 20年も来ない内に終焉を迎えようとしている朝日奈珈琲は、全く変わらなかった。


 マスターと売り上げを除いては。

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読んでいただきありがとうございます。

朝日奈桜子(CV:下地紫野)

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