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社会不適合者が凄腕のバリスタになっていた件  作者: エスティ
第6章 成長するバリスタ編
121/500

121杯目「愛しの恋人」

お待たせしました。

第6章の始まりです。

ここからさらにあず君の飛躍が始まります。

お楽しみください。

 2013年の正月を迎え、僕と璃子は親戚の集会に参加する。


 久しぶりに外に出てみたが、とても空気が美味しかった。


 祖父母の家に着くと、いつものように部屋の端っこに陣取り、のんびりと料理を咀嚼する。有名になってから話題にされないことがない。おじいちゃんがいつも焙煎やコーヒー作りに使っていたコーヒー部屋はすっかり片づけられていた。驚くべきことに、この時親戚の間ではサイフォンが流行っていた。


 親父は自費で僕から買い取ったゲイシャのコーヒーをサイフォンで淹れると、親戚一同に振る舞っていたのだ。ようやくみんなが飲めるようになったと思うと、どこか救われた気持ちになる。


 僕が社長に就任してからは、大会でしたことが必ず時間差で親戚や商店街の中で再現されるという現象が起きていた。まるで僕に肖っているようだ。以前はシグネチャーが流行っていた。金華珈琲のマスターは客からシグネチャーを強請られて大変だったらしい。


 シグネチャーを作るために、わざわざ親父を通してレシピを聞いてくるほどだ。


「へぇ~、これが噂のゲイシャなんだ~。これ1杯いくらするの?」

「3000円だ」

「3000円っ!」


 京子おばちゃんはこの値段に驚いていた。


 まあ無理もないか。インスタントコーヒーばかりを飲んできた人には応えるだろうな。


「もっと安く売ってもいいんじゃないかって言っても、あず君が全然許可を出してくれないんだ。でも理由を聞いたら納得した。希少価値が高いことに加えて、毎日汗水垂らしてコーヒーを採取してる連中に申し訳ないなんて言われたら、値下げ交渉なんてとてもできねえよ」

「案外しっかりしてるとこあるんだねー」

「実際にコーヒー農園まで行ってるくらいだからね」

「コーヒー農園って、どれくらい行ったの?」

「もう何箇所も行ってる。パナマ、ハワイ、エチオピア、コロンビア。僕が出会った連中は、やり方も考え方もコーヒーの精製方法も全く違っていた。でもコーヒーを愛する気持ちは……みんな同じだった」


 どこの農園もその数だけ個性があるが、より美味いコーヒー豆を作りたい想いはどこも変わらない。まるで子供を育てているような感じがして、こっちまで嬉しくなる。


「あず君ってエチオピアも行ってたんだ」

「確かWLAC(ワラック)が終わって、しばらくしてからサマーシーズンに行ってたよね。大会以外でも海外遠征は欠かせないみたいだったし。WCTC(ワックトック)の後は選考会のために、ダブリンまでコーヒーカクテルの修行をしに行ってたよね」

「まるで冒険家だね」


 親戚とはいつもコーヒーの話ばかりだった。ついさっきまでは就職の話ばっかりだったのに。


 ようやく僕の信念が認められた証だった。


 大輔はどうにか就職できたが、またしても非正規であることに不満を覚えていた。


「あず君、全身打撲って聞いたけど、大丈夫なの?」


 心配そうに優太が声をかけると、僕の隣に座ってくる。どうやら仕事上の難を乗り切った様子。


「大丈夫だ。安静にしていればすぐ完治する」

「もう誰も……文句言えなくなっちゃったね」

「あの連中もこの件で懲りただろうな」


 犯人は虎沢グループの元社員だった。


 インターネットニュースで公表されると、以前僕の選考会参加を阻止した経緯もあり、虎沢グループに批判の声が殺到する事態となった。まさか元部下に足をすくわれるとは思ってもみなかっただろう。


 虎沢グループはこの事件の責任を取る格好となり、例年赤字を記録するようになった。


 学生の時はやられたらやり返すのが正解だったけど、社会では先出し後出し関係なく、手を出した方が負けだ。学生以来の打撲に周囲は心配そうにしていた。幸い日本人恐怖症以外には後遺症もなかったから良かったが、これでまた日本人規制法撤廃が遠のいてしまった。連帯責任なんて大嫌いだが、病気が治らない内は、あいつらに我慢してもらうしかない。


 ふと、唯の勇気ある行動を思い出す――。


 暴行を受けている最中にも拘らず、危険を顧みずに僕を庇おうとしてくれた。それからというもの、ずっと唯のことばかり考えるようになっていた。常に唯の顔が脳裏に浮かぶ。いつでも会えるのだから考える必要なんてないはず……なのに唯のことを考える度に興奮が収まらなくなり、胸が張り裂けそうになる。時々僕に的を射た指摘をしてくれて、結果的に僕の優勝に大きく貢献してくれたり、僕が挫けそうな時にいつも励ましてくれたりと、ここまで献身的な人は初めてだった。


 彼女が持つバリスタとしての才能の中で、特にずば抜けていたのがホスピタリティだ。そしてあの課題発見能力。つまり彼女は最初からバリスタとしての適性よりも、サポーターとしての適性の持ち主だったのだ。ずっとそばにいたのに……全く気づけなかった。


 きっと……これが恋なんだろうな。恋は盲目って言うし。


 誰でも主役になれると思っていたけど、唯の適性を考えれば、脇役の方が活躍できる人間もいるという仮説が成り立つ。彼女はそれを本能的に分かっていたんだ。


 それなのに僕は……第2第3の自分を勝手に作ろうとして……僕も人を見る目ないな。


「おかえりなさい。親戚の集会はどうでしたか?」

「いつも通りだ」

「目立ちたくないのに目立ったんですね」

「璃子はずっと男を紹介されてたな」

「結婚する気ないって言ってるのに。未婚者リストを渡された時はこの世の終わりかと思った」


 璃子が気持ち悪そうな表情で嘆くように話している。


「未婚者リスト?」

「うちの伯母、つまり柚子と吉樹のお母さんがまとめた、未婚の人たちの顔写真とプロフィールが載ったブラックリストでね、多くの人の基本情報が載ってるの」

「良い相手がいなかったんですか?」

「そういう問題じゃない。横から見てたけど、あれは未婚者リストっていうより、結婚不適合者リストだな。結婚相手に専業主婦を希望するわ、煙草を吸うわ、清潔感がないわで、本当に結婚する気あんのかって思うような人たちがズラッと並んでた。多分あの連中は時代の変化に気づいてないな。あのままじゃみんな定年を迎える前に大量失業して生活保護だ。あれを見て確信した。今後の日本は間違いなく飯を食えない大人が課題になる」

「誰も選ばなくて良かったぁ~」

「納得するんですかっ!?」


 唯が僕の言い分をあっさり信じた璃子にツッコミを入れる。


「唯ちゃん、お兄ちゃんの観察眼を甘く見ない方がいいよ。お兄ちゃんは人を見ただけで、その人のおおよその一生が分かっちゃうから」

「なんか怖いですねそれ」

「根拠に基づいた推測なんだけど」

「うっ……思い出したらまた気持ち悪くなってきた」


 璃子はそのまま自分の部屋へと戻っていく。


 男だったら誰でもいいってわけじゃないんだけどな。僕だって女だったら誰でもいいわけじゃない。


「唯、ちょっといいか?」

「はい、何ですか?」

「唯がいなかったら、ここまでうまくいかなかった。ありがとう」


 目線を逸らしながらも、顔を赤らめるのを隠しながら礼を言った。


「お役に立てて何よりです」

「何かお礼をしないとな。僕にお願いしたいこととかある?」

「じゃあ……私と恋人になってくれませんか?」

「えっ!? ……僕なんかで……いいの?」

「はい。私は今でもあず君が好きです。私と……つき合ってください」

「ぼ、僕でいいなら……喜んで」


 赤面したまま目を逸らし、唯の告白を快く受け入れた。


 唯の方から交際を申し込んでくるとは思わなかった。


「それと……僕も唯のこと……好きだよ」


 唯は顔を赤らめ、目線を少し横へと向ける。僕を直視するのが恥ずかしいのか、しばらくはまともに目を合わせようとはしなかった。普段は人と目を合わせるのが嫌なのに、何故かこの時は僕と向き合ってほしいと思ってしまう。この想いだけが僕の心を突き動かすのだ。


「あず君――」


 唯が僕のそばに寄ってきて唇を重ねてくる。


 流れのまま唯とキスをし続けた。去年までは唯からのキスだったが、同時にしたのは初めてだ。気づいてみれば、唯の豊満な胸をもふもふと掴んでいた。


 こうして、僕らは……晴れて恋人同士になった。


 この時、僕は22歳、唯は17歳、彼女はまだ未成年である。当分は周囲に交際を伏せよう。未成年との交際は色々と問題がある。できれば面倒事に巻き込みたくはない。彼女を苦しめてまでつき合おうとは思わないし、何より唯が幸せになってくれればそれでいい。


 自分に嘘なんて吐きたくなかったけど、2人きり以外の時はただの同僚を演じる必要がある。これなら関係を疑われることはないと思ったが、僕は嘘を吐くのが下手だからそれが心配だ。


 僕にとっては人生初の恋人だ。ずっと大事にしていきたい。今まで周りと違う生き方をしていたこともあって、恋人なんてできなかったけど、彼女は僕がどんな人間かを知った上でつき合ってくれるのだから、これ以上の相手はいないんじゃないかと思っている。


「前々から思ってたんですけど、あず君ってバイオリンもできるんですね」

「ドレミの音階さえ覚えればこっちのもんだ。似合ってるだろ」

「余計に女子っぽく見えちゃいますね」

「鈴鹿の勧めで始めた」

「練習大変だったんでしょうね」

「してないけど」

「えっ!?」


 この時からはバイオリンの演奏も投稿するようになっていた。自営業時代にピアノ以外はできないのかと鈴鹿に聞かれ、ピアノ以外はしていない旨と告げると、だったら他の楽器も試すよう言われた。


 口で吹くタイプの楽器はマルチタスクが苦手な弱点の都合上除外し、それ以外から選んで弾いていたバイオリンがすぐできるようになったため、法人化してから投稿を始めた。これも目を瞑っていないと弾けない。明るいイメージの高い音も、暗いイメージの低い音も自由自在に弾けるようになっていた。何故か募集してないのに曲の指定をされることが度々あったが、僕の気分でやらせてほしい。


 1月上旬、僕らは恋人になって初めてのデートをした。


 デートは他の女ともしたことがあるため、他の人に一緒に歩いているところを見られても関係に気づかれることはそうそうないだろう。周囲からはただの仮交際にしか見えない。


 実家の真向かいにある金華珈琲へと入っていく――。


「おっ、あず君に唯ちゃん、久しぶりだねー」

「お久しぶりでーす」

「あっ、あず君、久しぶりー。私のこと覚えてます?」


 記憶を確かめてきたのは椿だった。どうしてるかと思ってたらここにいたのか。


 不意の再会だったからつい驚いちゃったけど、無事で何よりだ。


「あず君と知り合いなの?」

「はい。かなり昔に出会ってます。あず君がまだ有名じゃなかった頃に」

「椿はここに就職したのか?」

「バイトなので就職とは言えないんですけど、去年からここで働かせてもらっています」

「桃色喫茶が潰れたって聞いたから、どうしてるかなって思ったよ」

「! それ、誰から聞いたんですか?」


 目の色が変わった。これは恐らく悟られたくない事情を抱えている。


 とは言っても、この前花音に教えてもらってるんだけどな。


「花音だけど」

「はぁ~、あず君にだけは言ってほしくなかったなぁ~」

「何かあったんですか?」

「うーん、どこから話せばいいかな。あっ、そういえば自己紹介を忘れてましたね。私は船坂椿です。椿って呼んでください」

「阿栗唯です。普段はあず君の同僚です。唯って呼んでください」


 唯と椿が自己紹介を済ませる。


 今まで歩んできた人生はともかく、この2人は至ってまともな性格だし、気が合いそうだ。


 僕と唯はエスプレッソを注文し、飲みながら椿からも事情を聞くことに。


「それで? 何があったの?」

「おおよその事情は花音ちゃんから聞いてると思うんですけど、桃色喫茶は私が銀行からの融資で建てた店だったんです。最初は売れていたんですけど、リーマンショックの影響で、お客さんが全然来なくなってしまって、それで銀行の人と交渉しているところだったんですけど――」

「花音がコーヒーをドジっ子プレイで銀行員にぶっかけてしまったと」

「……はい」

「もしかして、それで融資を断られちゃったの?」

「いえ、実を言うと、融資は受けられないって言われてたんです。あの人たちは頑固なので、恐らく何を言っても受け付けてくれなかったと思います」


 なるほどな、花音がコーヒーを淹れている最中に融資を断る話をされていたなら、花音は話をよく聞いていなかったはずだ。つまり桃色喫茶の倒産は銀行員がやってきた時点で既に確定していたわけだ。


 スマホのメールで花音を呼び出した。考える前に手が動いていた。


『花音、今すぐ金華珈琲に来てくれ。もしかしたら人生やり直せるかも』

『人生やり直せるって、どういうことですか?』

『来てみれば分かる。いいから早く!』

『分かりました。今から行きます!』


 数分後――。


 何も知らない花音が金華珈琲へとやってくる。


「いらっしゃいませ」

「「!」」


 椿と花音の目が合い、お互いに驚きの表情を見せている。


 まるで昔の同級生同士が久しぶりに再会したかのようだった。


「椿さん、ここにいたんですか?」

「花音ちゃん、あなたこそどうしてここに?」

「私はあず君から、ここに来れば人生をやり直せると聞いていたので」

「えっ! ……あず君、これどういうことなんですか?」

「花音、今までの自分の状況を椿に説明してやれ」

「えっ、もしかしてそのために?」

「いいから早くっ!」

「はっ、はいっ!」


 花音は桃色喫茶が倒産してから、自分がどんな風に過ごしてきたのかを説明する。


 椿の顔は段々と罪悪感に満ちた表情になっていく。まさか自分のために家に引き籠ってるなんて思ってもみなかっただろう。全ては花音の勘違いだった。彼女はドジっ子の割に自罰的なところがある。


 しかも相手の気持ちを一切確認しないという徹底ぶりだ。


「花音ちゃん、私のために心配してくれる気持ちは嬉しいけど、だからって自分の人生を棒に振るようなことをされても、私は全然嬉しくない」

「でも私、椿さんの店を倒産する原因になったんですよ。あんなことをしておいて、とても仕事をしようという気にはなれません。また誰かの足を引っ張ることになったら、私もう耐えられないです」

「なってないの! もうあの時には融資が止まることが確定してたの! だから花音ちゃんが何もしなかったとしても状況は全く変わらなかったの! ……その時の私はイラついてたから、つい花音ちゃんに意地悪を言っちゃったの! でもまさか……本当にそれを真に受けて引き籠りになるなんて、思ってもみなかったから……ううっ……うっ……」


 椿は済まないことをしたと言わんばかりに涙を流す。


 僕は飲食店が倒産する光景を嫌というほど見てきた。どんなに良い接客をしても、どんなに良い商品を作っても、客が来て繁盛してくれなきゃ、潰れるのが自然の摂理だ。そこらの大手よりもずっと質の高い店であったにもかかわらず、有名になる前に消えていった個人店の何と多いことか。


「意地悪でなんて言ったの?」

「花音ちゃんのせいで店が潰れることになったんだから責任を取ってちょうだいって言っちゃったの。私……どうかしてた。責任なんて取らせる必要なかったのにっ!」


 倒産はほとんどの場合、経営者の無能が招いた結果だ。だが椿は受け入れられなかった。


 頭では分かっていても感情が失敗を頑なに拒絶するのだ。強くなるより、弱さを受け入れる方が難しいことがよく分かる。潰れるかどうかを決めるのは世間だ。それは自分の落ち度以外の何物でもない。だが彼女は己の弱さ故に、誰かのせいにしなければ気が済まなかった。情緒不安定な時に花音のドジっ子カノンが炸裂したことで、椿の堪忍袋の緒が切れた。それが事の真相であった。


「椿さん……」

「ごめんなさいっ! 私のせいでっ! ……花音ちゃんの人生滅茶苦茶にして……」

「いいんです。私はドジっ子ですから、私なんかが働いても、社会の足を引っ張るだけです。そうなるくらいなら、引き籠りでいいんです」

「そんなことありませんっ!」

「「「「「!」」」」」


 唯が花音の言い分を全力で拒否しようと、喉の奥から声を張り上げた。


「あっ、ごめんなさい……実を言うと、私も昔、いじめで引き籠りになってました。でもこのまま一生を終えていくのが怖いって思う自分もいたんです。そんな時、同じく引き籠りのあず君の動画を見て気づいたんです。やりたいことも言えず、自分の熱意を燃焼しきれずに死んでいくことほど、不幸な生き方はないって。花音さんはまさにそんな人生を歩もうとしています。余計なお世話なのは承知の上で言わせてください。このまま何もせず引き籠りのままだったら、間違いなく死ぬ時後悔しますよ」

「……」


 花音はしばらく黙ったままだった。どうやら図星だったようだ。だがあの様子だと、花音には何かやりたいことがあるようにも思えない。根の明るさを考えれば引き籠りに向いているとも思わないが。


「花音ちゃん、そういうわけだから、謝るべきは私の方なの。だから花音ちゃんは自分の思うままに生きてほしいの。あなたが一歩前に踏み出す勇気がないなら、私が背中を押してあげる」

「椿さん……私……私っ!」


 2人は泣きながらお互いに歩み寄り、言葉ではなく優しい抱擁で和解をする。今までの辛さがここに解き放たれていた。もう彼女を縛るものは何もない。強いて言えばブランクだけである。


「あのさ、言いにくいんだけど、ずっとニートだった奴が就職するのは容易じゃねえぞ」

「……ですよね」


 ブランクのある彼女が人生をやり直すのは困難を極める。


 例外こそあるが、この国にはセカンドチャンスが事実上存在しない。彼女たちを見て思った。生き方改革が必要だと。今の社会の構造上、彼女たちのような競争社会の被害者が出ていることは明白だ。


 何度失敗してもいいし、そもそも競争に参加しなくても、最低限度の生活は保障するという方向へと変えていかなければ、飯を食えない大人が数多く出てきてしまう。人前でこんなことを言うと、そういう意見もあるとか、個人の感想ですとか、尖ってるねとか、私はそれを認めも否定もしないとか、面白味の欠片もない中立的でクソつまんねえ言葉で流そうとしてくるが、そんな光景を見る度に思う。


 流してる場合じゃねえだろ……。


 中立は黙認であり、黙認は事実上の肯定である。


 生き方改革をすべき根拠は潤沢なまでに揃っている。にもかかわらず改革を聞き流している時点で、あいつらもまた、理不尽を肯定する社会の一員であり、社会的加害者と断定されてしかるべきだ。


 あいつらは現実から目を背け続けた代償を未来永劫払うことになるだろう。


「それなんだけどさ、前にも言ったけど、ここの近くにある花屋がバイト募集中だから、まずはそこを受けてみたら? 僕の推薦って言えば、ほぼ確実に通ると思うぞ」

「……はいっ! 私、いつかあず君のような、みんなに希望を与えられる人になりたいです」

「そ、そうか……」


 希望を与えられる人か。僕はただ、我武者羅に頑張り続けていただけなんだが、みんなには僕の姿がまるで漫画のヒーローのように見えているらしい。


 自分の生き方が誰かの希望になるならと思い、大会の準備を進めるのであった。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

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