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ステータスが見えるようになったらハーレムできた  作者: マルコ
ただの日常・ザ・サード

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27/47

はえちゃった

 遠藤 沙織は最近機嫌が良い。

 先ずは彼氏ができた。恥ずかしいのとちょっとした秘密があるので、家族にはナイショにしようと思っていたが、速攻で兄にバレた。浮かれ過ぎていたのかと反省していたが、どうやらステータスを見られたらしい。

 ズルい。自分も見たい。と思うが、どうやら彼女にそのスキルは無いらしく、見ることはできない。

 アマレス人は15歳くらいまでは「スキルが生えてくる」らしいので、まだ期待できるのが救いか。沙織は4分の1はアマレス人なのだから。


 次に、長らく離れていた従姉とまた一緒に住めることになった。しかも、従姉は実はエルフだった。

 未来アイテムなポケットまで持っていた。なにそれカッコいい。と、沙織のテンションは上がったが、兄の達也は何かが不満だったようだ。

 今日はその兄と従姉がどこかに遊びに行っている。自分も付いて行こうとしたが、断られた。代わりに今度は自分と2人だけで遊びに行こうと約束する事でその場は矛を収めたが、よく考えたら男女が2人だけで遊びに行くのはデートというやつではないだろうか?


 そこまで考えた時、沙織は愕然とした。

 兄と従姉がデートしたことにではない。

 自分がまだデートをしたことがないからだ。彼氏がいるのに。


 いや、所謂「放課後デート」なら経験がある。

 あるが、ちょっと寄り道したりするのを、沙織はデートとは認めない。

 やはり、休日にどこかで待ち合わせをして出かけるのがデートだろう。

 そういう意味では、一緒に出かけた兄と従姉はデートをしていない。

 単に遊びに行っただけだ。


 でも、デートというのは、何をするのだろうか?

 ここは彼にリードしてもらうべきだろうか?

 いや、それにしても練習しておきたい。


 ちょうど従姉と遊ぶ約束をしている。

 いっそのこと、待ち合わせから練習させてもらおう。


 とりあえず、そこまで決めたところで沙織は意識を目の前の写真に向ける。


 彼女の前にはいくつかの風景写真がある。

 学校の廊下から見える風景だ。

 沙織は美術部だ。

 普段は石膏像や人物画ばかりを描いているが、「偶には風景画も描いてはどう?」と部長に勧められ、こうして題材となる風景を選んでいるのだ。


 風景画というと山や森を思い描くが、「廊下から見える街並みも立派な風景」らしい。

 よく分からない。

 分からないが、沙織もこの街は嫌いではないので、描くことに否はない。

 だから、こうしていくつかのポイントで写真を撮り、実際に描く場所を決めているのだ。


「やっぱり、1階よりは3階かな?」


 部長は落ち葉1枚を描いてコンクールで優勝したが、沙織はそこまでの才能は無い。描く対象の見栄えはある程度必要なのだ。

 3階から撮った写真から数枚の候補を選び取り、鞄に入れる。

 そうこうしているうちに兄と従姉が帰って来た。

 沙織はデートの件をアリシャに頼む為、リビングに降りて行った。


 ◆


 放課後。

 沙織は校舎の3階廊下で絵を描いていた。

 彼氏と一緒に居たい気持ちはあるが、彼も自分も部活がある。

 なので、今は1人で窓から見える風景を描いているのだ。

 他の美術部員も、各々の場所で描いているだろう。


「うん、風景も悪くないかも」


 窓から見える景色など、変化のないものと思っていたが、なかなか楽しいと沙織は感じていた。

 季節ごとに変化があるのは分かっていたが、描き始めてからこれまでの短い間ですら、太陽の位置や雲の位置で表情が変わる。

 写真は写した一瞬を1つだけ捉えるが、絵は描いているモノそれぞれの一瞬が混在している。

 日が変われば、また別の顔になるだろう。


「キレイな絵ね」


 不意に、そう声をかけられた。

 実をいうと、沙織の絵は美術部員としては並かそれより下だ。

 部長を筆頭にコンクールの賞を総ナメにする先輩たちを基準にすると、ド下手と言ってもいい。

 それでも沙織は絵を楽しんでいるし、それがよく伝わると先輩たちからも誉められる。立派な才能だと。


「題材が良いと、それだけで楽しく描けるからね」


 沙織はキャンバスに向けていた視線をあげて、窓に映る声の主を見る。


 ……見る。つもりだったが、姿は無かった。

 声をかけるだけかけて、さっさとどこかに行ったらしい。

 社交辞令でもなんでも、せっかく誉めてくれたのだから、もっと話をしたかったが、声の主はシャイなかもしれない。


「楽しい気持が伝わってくるから、キレイに見えるのね」


 どうやら、声の主はキャンバスの陰にでも隠れてしまっていたらしい。

 ちゃんと振り返って声を交わすのが礼儀であろうが、ちょうど筆が乗っているところだったので、沙織は今描いている部分が終わるまでは、前を向いたままでいることにした。


「技術的な事はまだまだなんだけどね」

「これだけキレイな絵なのに、まだまだなんだ?」

「先輩たちと比べるとね。……私の場合はそれ以前の段階だけど」

「先輩たちって、そんなに上手いんだ」

「うん。凄く」


 答えながら、沙織は「あれ?」と首を傾げた。

 美術部の先輩たちは何度も表彰されている。

 単にコンクールだけでなく、全校集会でも紹介されているのだ。

 4月からこれまでに3回……いや、4回受賞を通知されているので、1年生でも「美術部の3年生が凄いらしい」と有名らしいのだが、声の彼女は知らないのだろうか?


「結構、有名だと思ったんだけどな」

「アハハ、私は、特殊だから……」


 ちょっと哀しそうな声。

 休みがちで、そういった噂に疎いのかもしれない。


「ごめん、ちょっと身内びいきで自意識過剰だったかも」


 そう言いつつ、丁度キリの良いところまで描き上がったので、沙織は後ろを振り向いた。


「……あれ?」


 そこに声の主は居なかった。

 代わりに、沙織の彼である佐藤 健也が廊下をこちらに向かって歩いてくるのが見えた。


「遠藤さん、そろそろ下校の時間だよ」


 彼がそんな風に声をかけてくる。

 描くのに夢中になっていて、時間を忘れていた。


「ねえ、佐藤くん。ここに居た人、どんな子だった?」


 沙織には彼女の姿は見えなかったが、彼が歩いてきた方向からなら、どんなに早く身を隠しても見えたはずだ。


「え? 誰か居たの?」


 が、彼は誰も見ていないと言う。

 釈然としないまま、沙織は画材を片付け、家に帰った。


 ◇


「あれ? 沙織、いつの間に『霊感』なんて覚えたの?」


 家に帰り着いた沙織に、アリシャがそんな風に声をかけてきた。


「レイカン?」


 意味が分からずに、沙織は聞き返した。


「そう。『霊感』。霊と交信するスキル」


 霊と交信するスキル。


 なるほど。あの声は霊……幽霊だったわけだ。

 だが、不思議と沙織に恐怖は無かった。むしろ……


「ねえ、ソレってどうやって鍛えたら良いの?」


 『霊感』を鍛えれば、あの声の彼女ともっと話ができるかもしれない。

 時間はかかるかもしれないが。

 幽霊だろうがなんだろうが、関係ない。

 沙織の彼氏は獣人で、従姉はエルフで、彼女自身も4分の1は異世界人なのだ。大きな問題ではない。


 自分の絵を誉めてくれたのだ。友達になりたいと思った。

次回30日です。

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