番外編2俺が香月の料理をしない理由を知った件について
今回は香月が料理をしない理由について触れました。
正直、香月の料理は本編では最初の方にチラッとしか触れてないので覚えている方がいるか不安ですが・・・
では、どうぞ
俺が未来に飛ばされてから24歳になった遊華と再会し、義母の羽月さん、義姉の香月と美月と出会ったある日の事だ。自分が未来に飛ばされるなんて事を一体誰が予想できる?そんな事誰にも予想できない。人生何が起こるかわからないものだ。なんて考えは置いといて、俺はとある事が気になっていた。それは────
「なぁ、遊華」
「何?お兄ちゃん」
「俺が遊華と再会した日に香月がキッチンに立つ事を拒んだ理由って何だ?」
俺がこの世界に来て遊華と再会し、羽月さんや香月、美月と出会ったあの日の事を思いだす。疲れ果てた俺の側にいてくれた香月。だが、晩飯の用意には参加していなかった事だ
「…………」
なぜか冷や汗を流し、無言で目を反らす遊華。何だ?俺に言えない理由でもあるのか?例えば、香月の料理は極端に辛いとか?
「どうした?」
「な、何でもないよ!」
先程の冷や汗はただ事ではない気がした。だが、その理由を聞いても答えてくれない。どうしてだ?普通は答えてくれてもいいと思う。仕方ない、美月に聞くか
「遊華が答えてくれないなら美月に聞くわ」
答えてくれない相手にこれ以上何を聞いても無駄だ。ならば答えてくれる人間に答えてもらおう
「……別にいいけど、多分美月お義姉ちゃんも同じ反応すると思うよ?」
「別に答えてくれないなら答えてくれないで香月本人に何か作ってもらって理由を探るからいい」
遊華は美月も答えてくれない。そう言うが、それならそれで俺の身体で人体実験をするまでだ。何も問題ない
「そ、それは止めといたほうがいいんじゃないかな?」
「何で?今、遊華に聞いてダメだったから美月に聞く。それでもダメなら香月本人に料理を作ってもらって俺の身体を使って人体実験するしかないだろ?」
「…………」
遊華から反論の言葉が出てこない。これ以上遊華と話すのは無駄だな
「反論がないなら美月の部屋へ行くから」
俺はリビングを出て美月の部屋へと向かう。誤解のないように言っておくが、遊華と喧嘩したわけではないぞ
「美月、いるか?」
『遊ちゃん?どうしたの?』
ノックをしてから5分と掛からないうちに中から美月の声が聞こえてきた
「いや、香月の事で聞きたい事があって来たんだが、入っていいか?」
『うん、いいよ~』
許可が出たので部屋の中へ入る。美月は本を読んでいたのだろうけど、それをササッと隠した
「ごめん、作業中だったか?」
「ううん、ちょうど一休みしてたところだから。それに、遊ちゃんが私を頼ってくれることなんてないから嬉しいよ~」
わざわざ自分の作業を中断してまで俺の相手をしてくれる美月だが、安心しろ。そんなに時間は取らせん。すぐ終わる
「そっか、じゃあ、早速で悪いが、どうして香月は料理をしないんだ?」
「…………」
遊華同様、無言で冷や汗を流す美月。美月ならすぐに答えてくれると思ったが、当てが外れたか……
「どうした?実の姉妹の美月ならすぐに答えてくれると思ったんだが……」
「遊ちゃん、香月ちゃんの料理についてはあまり触れない方がいいんじゃないかな?」
美月もか……遊華が答えてくれなかった時点で半分諦めていた。はぁ、仕方ない……人体実験するか
「そうか……美月も答えてくれないか」
「ごめんね、遊ちゃん」
はい、人体実験決定……ま、仮に2人が止めても俺には関係ないけどな!
「いいよ、別に。香月に料理を作ってもらって自分で確かめる」
「ゆ、遊ちゃん!やめた方がいいよ!」
「遊華にも止められたが、美月同様にどうしてやめた方がいいか、どうして香月がキッチンに立ってはいけないかを何1つ教えてくれなかったし、俺が自分の身体で確かめるしかないだろ?」
「…………」
俺の言葉に反論しない美月。香月の料理にトラウマでもあるのか?それとも、香月自身が料理にトラウマでもあるのか?包丁が怖いとか、火が怖いとか
「時間取らせてごめんな」
無言の美月を残し俺は美月の部屋から出る。ハッキリ言って遊華と美月が無言で冷や汗を流すって事は相当なものがあるんだろ
「香月が料理をしない……いや、香月がキッチンに立たないわけか」
考えても仕方ない。香月本人に聞いた方が早いが、何て聞く?どうして料理しないの?なんて聞けるか?調理器具にトラウマを持っていたら大変だ。まずはそこから攻めていくか
「香月、いるか?」
『うん、遊?どうしたの?』
美月と同様にノックして5分もかからずに返事が返ってきた。美月といい香月といいどうしてこうも返事が早いかね?
「ちょっと聞きたい事があるんだが、入っていいか?」
『うん、どうぞ』
「お邪魔します」
前回も入ったが、香月の部屋は余計な物がない。香月が女の子らしい趣味に没頭できなかったっていうのもあるだろうけど
「いらっしゃい、遊」
香月はすぐにクッションを出してくれた。さすがにクッションは女の子らしく柄が付いているものにしてあるようだ
「お、おう」
俺が来ただけで笑顔になるとか、こちらまで気恥ずかしいものを感じるぞ
「で、どうしたの?」
俺はここで用件を言うのを躊躇う。何て聞く?包丁にトラウマでもあるのか?いや、違うか……火が怖いのか?これも違うか……それじゃあ───
「調理器具か何かにトラウマってあるか?」
俺ができる最大限の遠回しな聞き方だ。包丁にトラウマがあるのか?とも、火にトラウマがあるのか?とも聞いていない。ただ、調理器具のどれかにトラウマがあるのかとしか聞いていない
「え?いや、特にないけど?」
不思議そうな表情で答える香月。まぁ、調理器具って曖昧な表現をしたら当たり前か
「ならよかった」
本当によかったと思う。これが原因でトラウマを抉っていたら俺のせいだし、その後のケアをするのも俺って事になる。そうなればひと手間じゃ済まない
「どうしたの?いきなり調理器具にトラウマがあるか?なんて聞いてきて」
「いや、香月が作った────」
香月が作った何て言えばいい?料理が食べたい?遊華と美月の反応からして香月に料理させたくないわけがあるはずだ。となると、迂闊に香月にその日の朝飯、昼飯、晩飯のどれかを全て任せるのは危険じゃないだろうか?だったら────
「私が作った何?」
「味噌汁が飲みたい」
一品だけ作ってもらおう。しかも、簡単で誰がやっても成功しそうな料理を。これなら大丈夫なはずだ
「あ、うん、いいよ」
「ありがとう」
よっし!半分諦めていたが、引き受けてくれたようでよかった!あ、でも量を指定するの忘れるとこだった!
「さすがに全員分作るのは面倒だと思うから俺の分だけでいいぞ」
「う、うん、わかった」
これで全ての準備が整った!香月には部屋を出る時に何もないなら今作ってくれないか?って無茶なお願いしてしまったが、快く引き受けてくれた。あとは遊華と美月を止めとけばいいだけだ
「遊華と美月に頼みがある」
リビングに戻った俺は残っていた遊華とそこに居合わせた美月に声をかけた
「何?お兄ちゃん」
「私たちに頼みって何かな?遊ちゃん」
「いや、これから香月に味噌汁を作ってもらうんだが、止めるのと邪魔しないでほしいから何もしないでくれ。味噌汁は俺の分だけでいいって香月には言ってあるから」
「「…………」」
急に涙目で無言になる遊華と美月。俺が言った事のどこに涙目になる要素がある?
「どうした2人とも?」
「お兄ちゃん」
「遊ちゃん」
「ん?何だ?」
「「死なないでね」」
2人揃って縁起でもないなぁ、普通の料理で人が死ぬわけないだろ?薬品を入れたり、レシピを渡して目を離した隙に独自のアレンジを加えたりするわけじゃないんだから
「人が普通の料理で死ぬわけないだろ」
俺は過去の世界に帰らなければならないんだ。簡単に死ぬわけにはいかない
「お待たせ遊」
香月がリビングへやって来た。タイミング的にバッチリだし、作ってもらう以上、俺だって食材を切るくらいの手伝いはするつもりだ
「いや、そんなに待ってない」
実際、遊華と美月と話をしていたからそんなに待ってはいない
「うん、じゃあ、作り始めるね」
香月は遊華と美月を全力でスル―しキッチンへ入っていった
「俺も手伝う」
「え?いいよ……遊は座ってて」
「作ってもらうんだ。せめて食材を切るくらいはさせてくれ」
ただ作ってもらうってのは悪い。だから、手伝いで食材を切るくらいはする。味付けは好きにしてくれ
「うん。ところで遊はお味噌汁の具材で好きなのは?」
「ネギとワカメ」
「じゃあ、ネギとワカメのお味噌汁にしようか」
「そうだな」
実食するのは俺だが、作るのは香月だ。それに実際、好きな具材は何か?と聞かれたから俺の中での定番を答えただけで1番好きなわけじゃない
「さて、やりますか」
俺は野菜室からネギを取り出し、切り始める。こんな事で手伝いと呼べるものになるのかは知らんが、何もしないよりはマシだろう
「こんなもんかな」
思った以上に早くできた。繋がっててもいない。完璧だ!後は香月に任せますか
「ネギ切り終わったぞ」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、俺はちょっとトイレに……」
「う、うん……」
トイレという単語を聞いただけで恥ずかしがる香月。女性の前でトイレって言ってしまう俺も俺だが、それだけで恥ずかしがる香月の事が心配になる。純粋過ぎませんか?
「じゃあ、後はよろしく!」
「うん、任せて!」
香月に一声掛け、リビングで死んだような表情をして動かない遊華と美月をスル―し、トイレに向かう
「やっぱダメか……」
トイレに入った俺は今、自分が持っている携帯の電波状況を確かめてみたが、圏外と表示されていた。考えてみれば最初に確認するべき事だったが、未来か過去に来てしまったという事で頭が追い付いていなく、そこまで確かめている余裕がなかった。まぁ、ここが未来なんだろうなぁと確信したのは遊華と会ってからだが……
「当たり前だよな……俺は遊華たちからしてみれば失踪し、死んだ人間だ。そんな人間の携帯なんてとっくに解約してるか」
解ってはいたが、確かめずにはいられないのが人間だ。だが、改めて携帯が使えないと解った。うん、不便な事この上ないな
「早めに何とかしないとな」
時間見つけて携帯買うか……携帯を買うって言っても俺は身分を証明できるもの今持ってないんだった……
「それまでは家から出ないか遊華たちの誰かと行動を共にするしかないよなぁ……」
金魚のフンみたいで嫌だが、仕方ないか……
「さて、そろそろできたかな?」
トイレから出たところで味噌汁の香りが漂ってきた。うん、美味そうな香りだ。遊華も美月もどうして香月に料理させないんだろう?
「あ、遊、おかえり。今できたよ」
「ああ、廊下まで美味そうな香りが漂ってきたから知ってる」
「そ、そう……」
こうしていると新婚夫婦だな。さて、早速頂きますか
「香月、早速頂いてもいいか?」
「うん!召し上がれ!」
自分の席に座った俺は手を合わせ、そして────
「いただきます!」
「うん!」
味噌汁にありついた。啜ればダシと味噌の風味が口いっぱいに広がる……はずだった
「ん?」
「どうしたの?遊?美味しくなかった?」
「あ、いや、美味いぞ。ちょっと忘れてた事を思いだしただけだ」
「そう、よかった」
咄嗟に香月を泣かせまいと誤魔化したが、この味噌汁は何て言うか……しょっぱい。少ししょっぱいなんてもんじゃない。海水を飲んでいる気分だ
「つかぬ事を聞くが、香月ってしょっぱめの味が好きなのか?」
「うん、しょっぱいものやしょっぱい味は好きだけど?どうしたの?」
「いや、何でもない」
「そう?あ、作業あるから私はお部屋に戻るね」
「あ、ああ、味噌汁ありがとな」
「うん!」
香月はご機嫌で部屋へ戻っていった。そして、遊華と美月が香月に料理をさせないわけが今頃になって理解できた。香月の好みに合わせるとその日の料理がしょっぱくなるからだ。だが、俺は出された物は全部食べる主義だ
「南無三!」
俺は味噌汁を一気に飲み干した。そして、当分はしょっぱいものは控えよう。そう思った。この日を境にこの家の家事は俺がやると決めた。遊華たちに負担がかからない為と俺の健康の為に
今回は香月が料理をしない理由について触れてみました。
本編では最初の方にチラッとしか触れてなかったので、覚えている方がいるか・・・・
多分いるはず!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




