番外編1遊華が俺の部屋に侵入してた件について
今回から番外編になります。番外編1は感想で指摘があったので遊華が遊の小遣いの存在を知っていたわけの話です
年頃の兄妹の部屋には用事がない限りは入らないと思うんですけど・・・・
では、どうぞ
これは俺がまだ未来に来たばかりの話である。正直、小説やマンガ、ドラマだけの話で自分が実際に未来に飛ばされるなんて想像もつかなかった。どんなに冷静に振る舞っていても心のどこかでは焦っていたのかもしれない。だから、妹に再会し、小遣いを貯めていた事がバレていた。というところにばかり気を取られていて、部屋のどこに隠してあるかを具体的に聞いてなかった。
「遊華、俺が部屋に小遣いを隠しているのは当たり前の事だ。だが、部屋のどこに隠していたかを具体的に聞いていないぞ」
家への道中、女性らしく成長した遊華に小遣いの隠し場所が部屋のどこなのか、どうやってそれを知ったのかを聞き出そうとしていた。
「あ~、そう言えばそうだったね。お兄ちゃんに再会した喜びで忘れてたよ」
本当に忘れていたのか?本当はただ知らないだけなんじゃないのか?まぁ、それはどっちでもいい。話しているうちにわかる事だ
「へえ、じゃあ、今は言えるよな?」
遊華にわかるわけがない。だって、俺の小遣いの隠し場所はそう簡単にわかるような場所ではないからだ。
「言えるけど?」
どうせハッタリだ。大体、遊華が俺の部屋に入ること自体があり得ないからな。俺を騙そうとしても無駄だぞ?
「じゃあ、言ってみ?遠慮はいらないぞ」
バレてない。俺はそう確信していた。いや、バレるわけがないんだ。だって、俺の小遣いの場所は1か所じゃないからな
「うん、じゃあ、遠慮なく言うけど、1か所目はベッドの裏面、2か所目は本棚の裏、3か所目はお兄ちゃんが勉強で使ってた机の引き出しの裏、4か所目は天井」
ぜ、全部当たってやがる…………だが、それだけではまだ正解とは言い切れない!
「か、隠し場所がわかっても────」
「4か所とも同じ茶封筒に入れてたらわかるよ……」
割り込むようにして遊華は俺がどんなものに入れていたかを言い当ててきた。俺は隠し場所がわかっても入れ物を当てないと正解とは言えないと言おうと思っていたが、言う前に当てられてしまった……
「…………完敗だ」
入れ物まで当てられたら負けを認めるしかない。こんな事なら同じ茶封筒じゃなくて銀行とかで無料でもらえる封筒も混ぜとくんだった……今更後悔しても遅いが
「今誰がお兄ちゃんの……まぁ、それは後でわかる事だからいっか」
「誰が今、俺の何?」
「ううん、何でもない」
「何だよ、気になるな」
「家に着けばわかる事だから気にしない気にしない」
遠回しに忘れろって言ってないか?それは置いといて、俺が貯めてた小遣いの場所がバレてるのはいい。だが、俺が気になったのはその使い道だ。今の遊華からしてみれば俺は10年前に失踪した事になっている。つまり、俺が最後に家族と会話したのが10年前の今日だから法律上は多分、アウトだ。
「俺の私物ってどうなってるんだろう……」
俺の私物……ベッドや机とあとはゲーム機か……ベッドや机は処分したと仮定して、ゲーム機はどうだろう?まだあるのかな?あったとして動くかどうかが問題だが……
「ん?お兄ちゃんは私物の所在が気になるの?」
独り言のつもりが聞こえていたか……でも、ちょうどいいや。ここで聞いておくのも悪くない
「まぁな。俺の部屋がどうなっているかも含めて気になる」
俺の部屋は俺が遊びに行く前のまま……この世界からしてみれば10年前のままの状態で残っているのかは気になる
「う~ん、お兄ちゃんの部屋の事を詳しくは言えないけど、お兄ちゃんのベッドや机は処分しちゃった」
「そ、そうか。ゲーム機とかは?」
「それは私が持ってるから安心して」
「わかった」
ベッドや机といった大きな物は仕方ない。あれはあっても邪魔になるだけだ。幸いなのがゲーム機類は遊華が持っていてくれた事だ。ん?私物はスペースを取るものは処分し、ゲーム機等の小物類は遊華が持っている。うん、私物はこれでいい。だが、俺が貯めてた金は?
「どうしたの?」
「俺の貯めてた小遣いはどうした?」
物は処分と遊華が所持する事で解決した。だが、金をどうしたかが気になる。気になってしょうがない
「…………」
「…………」
その場に立ち止まり、見つめ合う俺と遊華。ここは家の近所の路地とはいえ、道の真ん中だ。本来ここで立ち止まる事は車や自転車、バイクの交通妨害になるから、するべきではない。
「おい、俺の金はどうした?まさか、使った?」
「……えへっ☆」
おいぃぃぃぃぃ!!使ったんか!?俺がコツコツ貯金した金を!マジで!?
「使ったのか?」
「…………」
無言で目を反らす遊華。この反応は黒と見て間違いない!使い道は何だ?食費か?それとも、交通費か?まぁ、学費はないな。あの時点で学費の足しになるほど貯まってなかったし
「使ったんだな」
「……ごめんなさい」
「素直でよろしい」
10年も家にいなければ使われていても無理はない。だが、肝心の使い道をまだ聞いていない
「怒らないの?」
不安そうに俺を見つめる遊華だが、失踪していつ帰ってくるかもわからない人間の金を一応は貯金しておこうとは思うが、だからと言っていつまでも貯金したままとは限らない。使ってしまったという事もありうるわけだ。
「使い道さえわかれば怒らないが?」
使い道が明確になれば怒らない。まぁ、場合によっては……
「私の塾の月謝……」
「はあぁぁぁぁぁぁ!?」
「ご、ごめんなさい!」
「あ、いや、怒ってるわけじゃないんだ。ただ、ビックリしただけだ。塾の月謝か……」
確かに俺が小遣いを貯め始めたのは中学2年の頃からだからまぁ、塾の月謝を払って払えない事はないと思うが……
「う、うん、お兄ちゃんの貯金で高校1年の時に行ってた塾の月謝は賄ってた」
俺の貯めてた小遣いを使われて本来なら怒るところなんだろうが、妹の勉学の為に使われたとなると怒るに怒れない
「そうか……でも、俺の小遣いっていくらもなかっただろ?それでよく塾の月謝払えたな」
俺の小遣いは1か月1万円でそのうちの半分の5000円を貯金していた。つまり、1年で60万円という計算になる。俺は5000円の貯金を中学2年から始め高校1年の始め……未来に飛ばされる今日までしてきた。よって俺の最高貯金額はえーっと……
「まぁ、61万もあったら塾の月謝くらいは払えるでしょ」
あ、そうか、61万だった。この世界じゃ今は多分、5月かそこらだ。3月と4月に5000円貯金していれば61万くらいにはなる。だが、待て。中学2年から始めから始めた5000円貯金だぞ?1年間で60万の計算だとしても、2年で120万になる。そして、高1の始めまで貯金していて未来に飛ばされる前まで貯金していたからおおよその計算では121万になっているはずだ。
「おい、他に何に使ったんだ?」
「…………」
再び無言になる遊華。さっきコイツは塾の月謝を払う為に使ったと言っていた。だが、俺が聞いていたのはあくまで高校1年の時の時の分だけだ。他は聞いてない
「どうして黙る?」
嫌な予感がする。遊華の塾の月謝だけじゃない気がする……例えば、父さんの飲み代に消えたりとか
「あ、あはは……他は私の教科書とか、参考書とかの勉強道具に使いました」
妹の勉学の助けになったのなら怒らない。自分の貯金が妹の役にたったのなら家族としては嬉しいだが……
「遊華の勉強道具に使ったのはわかったが、少しだけ父さんの飲み代とかに消えなかったか?」
「…………消えました」
嫌な予感的中。父さん……息子の貯金で酒なんか飲むなよ
「はぁ、俺の貯金はどれくらい遊華の勉強に消えたんだ?」
もう怒る気にもならん……そもそも、いくら遊華の為とはいえ息子の貯金に手を出すなよな
「私の勉強に100万ほどで残りはお父さんの飲み代」
偏り過ぎだとは思うが、俺の貯金の使い道はこうだ。遊華の塾や教科書、参考書等で100万、父さんの飲み代に1万ってところだろう。本当に合っているかは知らん。だが、おおよそこんな感じだろ
「100万も勉強に使ったんだ、遊華はさぞ頭のいい高校に進学したんだろうな」
半分嫌味で聞いてみた。これは俺のささやかな抵抗だ。貯金を使われたんだ、これくらいは許されてもいいだろう
「私?私はお兄ちゃんと同じ高校だよ?」
は?俺と同じ高校?俺の通ってる高校は偏差値50くらいの高校だぞ?
「だったらそんなに勉強する必要はないはずだから無理して塾に行かなくても……」
俺の高校の授業は塾に行くほど難しくはない。大体の事は自宅で勉強していればわかると思う。余程のバカでない限りは
「まぁ、授業は問題なかったけど、私にはやりたい事があったから」
それだけ言って遊華は再び歩き出した。やりたい事?それって何だ?遊華の年齢は現在24だ。働いていてもおかしくない。ひょっとしたらそのやりたい事っていうのは今の仕事に関わっているのかもしれないな
「へぇ~、じゃあ、いつかそのやりたい事っていうのを見せてもらおうかな」
「うん、多分、近いうちに見せられると思う」
「楽しみにしている」
俺と遊華は家への道を歩く。ただ、どうしてもわからない事が1つあった。それは、遊華がどうして俺の部屋の小遣いの隠し場所がわかったか?だ
「遊華」
「ん?何?」
「どうして俺の小遣いの隠し場所がわかったんだ?10年前は俺の部屋に近寄りもしなかったのに」
俺から会話を持ちかける事も少なかったが、互いの部屋に行くほど仲がよかったわけじゃない。それなのに、どうしてだ……?
「────てた」
「何?」
「───してた」
「いや、聞こえないから」
さっきから蚊の鳴くような声で何かを言われても俺には聞こえない。耳が悪くなったとかじゃなく、周囲の雑音が大きいからだ
「だ、だから!定期的にお兄ちゃんの部屋に侵入してたの!!」
言いたい事、聞きたい事はいろいろある。まず、どうして俺の部屋に定期的に侵入してたか、侵入して何をしてたか等だ。
「侵入して何をしていた?」
定期的に侵入してたという部分は聞かないでおこう。侵入して何をしていたかを知れば自ずと答えは出てくる。
「お、お兄ちゃんのベッドに寝転んだりとか?」
「うん」
「…………」
「他は?」
「お兄ちゃんのベッドに寝転んだりとか?」
「それはさっき聞いた。他は?」
同じ事を2度も言わずとも聞いてたぞ。俺が聞きたいのは他にどんな事をしていたか?だ
「…………」
どうして無言になる?疚しい事がないなら言えるよな?
「当ててやろうか?」
ここで問答を繰り返していても時間の無駄だ。ならば、俺が当てる他あるまい
「ど、どうぞ」
「俺のベッドに寝転んだりしてたって事はおそらくだが、俺の匂いを嗅いでいたんだろう。だが、遊華がした事はおそらくは俺の部屋に如何わしい雑誌の隠し場所を見つける事や多分、俺が遊華をどう思っているかを記した何かを探す事だろ?」
「せ、正解……」
空想の世界で女性キャラがやりそうな事をやってた奴を俺は初めて見た。おそらくだが、その過程で俺の小遣いの場所を見つけ出したんだろう。母さんが侵入してこないと思って油断していた……こんな事なら通帳の1つでも作っておくべきだった……
「はぁ……」
なんて言うか……油断していた俺も俺だ。誰も侵入してこないと思って大金を封筒に入れて部屋の至るところに貼り付けて隠すんじゃなかった……
「お、怒った?」
俺の溜息に怒ったと思った遊華は若干不安げだ。使ってしまったものはしょうがないし、考えてみれば俺は遊華に兄らしい事を何1つとしてしてやれてなかったと思う。だから、使われた小遣いは俺から遊華への援助って事にしておこう
「怒ってない。遊華からしてみれば俺は突然失踪した人間だ。最初は希望を持って捜索していたんだろうが、いくら探しても見つからなかった。俺の小遣いは死んだ俺からの家族への贈り物でここぞって時に使おうとかそんな考えだったんだろ?」
「う、うん」
「じゃあ、怒る理由なんかない」
ただ、遊華の勉学関係に使われたのはいいが、父さんの飲み代に使われたのは納得がいかない。どうせ自分の金が足りないとかそんな理由だろうけど。こうして、俺と遊華は家への帰路についた。俺に義母と義姉がいるとは考えもしないで
今回から番外編が始まりました。今までもそうですが、特に章を分けていたわけではないので、番外編はタイトルの頭に番外編と付けて投稿します。
一言言うなら誰も部屋に入らないと油断していた遊が悪い。以上です
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




