遊びに行くつもりが未来に来ていた件について
今回で本編は最終話です
今回は遊が未来で体験した事と遊がどうやって藤堂家に引き取られたか?と遊華たちとの関係の話です
では、どうぞ
真っ赤になって俯いてしまった遊華を元に戻し、久々に本当の家族との晩飯……って俺はこの家の本当の子供じゃなかったな。まぁ、いい。15年も育ててもらったんだ。本当の家族でもいいだろ。本当の家族との晩飯を済ませ、俺と遊華は必要最低限のものを持って俺たちが生活する隠し部屋へ戻った。だが、俺にはまだやる事がある。俺が体験した事を親父に話す事、羽月さんに会う約束を取り付けてもらう事、俺がどうしてこの家に引き取られたかを聞く事だ
「遊華、俺は親父と話す事があるから先に寝てていいぞ?」
俺と親父の傍から見れば頭のおかしい人と勘違いされかねない話に遊華を付き合わせるわけにはいかないからな。それに、聞いていても退屈だろうし
「私も行く」
「だ、だが、退屈なだけかもしれないぞ?」
「それでも、行く」
「わかったよ」
これ以上言っても遊華は多分、行くと言って譲らないだろう。ならば、こちらから折れて連れて行った方がいい
「父さん、いる?」
『うん、入っていいよ』
今回はノックはせずにあえて外から声を掛ける。親父がまだ起きていてくれて助かった
「入るぞ」
「うん、いらっしゃい。って遊華も一緒かい」
「う、うん、お兄ちゃんと離れたくなくて付いて来ちゃった」
「遊、愛されてるね~」
これから俺が割と重要な話をしようとしているのにいちいち俺を弄らなきゃ気が済まないのか?
「まぁな。で、父さん」
「うん、話してくれるんでしょ?遊が体験した事を」
「ああ、そのつもりで来た」
親父は最初から俺が何を話すかわかっているみたいだな。俺と遊華が付き合ったって報告した時も同じ体験をしてきたって言っただけでわかったみたいだし、この場に母さんがいないのがその証拠だ
「じゃあ、話してくれるかな?」
「ああ」
俺はわかりやすく、且つ簡潔に自分が体験してきた事を話した。遊びにいくつもりが未来に飛ばされていた事、未来の世界では母さんが死に、羽月さんと再婚していた事、その未来で親父が自分と同じ体験をしていた事、遊華が声優という仕事をしていた事。そして、ミス声優コンテストで参加者から逃れる為に逃げ込んだ隠し部屋で読んだ遊華の日記によって俺がこの家の本当の子供じゃないのを知った事
「──と、まぁこんな感じだ」
「そうか、それはいろいろ大変だったね」
親父は労いの言葉をかけてくれた。一方の遊華は理解できないといった顔をしている。まぁ、俺も同じ立場だったら理解はできないな
「お兄ちゃん、証拠!証拠はあるの!?」
遊華は非難すると思っていた。だが、逆にワクワクした表情で証拠を出せと要求してきた
「ああ、これが証拠だ」
携帯のカバーの裏面に貼った遊華たちと旅館で撮ったプリクラの集合写真を見せた
「これが証拠だ。この俺に密着しているのが未来の遊華だ」
「これが、私……」
プリクラにそれぞれの名前が落書きされているんだ、これで信じる他あるまい
「そうだ、信じてくれるか?」
「うん……他の2人の女は気に入らないけど、信じるよ」
何か地雷踏んだ気がするが、それは置いといて次に進もう。ここで詳しく聞いたらいけない気がするし
「で、次は父さんの番だ。どうして俺がこの家に引き取られたか話してくれるよな?」
「うん、そのつもりでいたからね」
俺は自分がどうしてこの家に引き取られたかを初めて聞いた。未来では遊華や他の参加者から逃げる事と遊華に自分の考えを伝えるので精一杯だったからな。
「遊は未来に飛ばされたから僕の仕事をわかってると思うけど……」
「ああ、父さんが作家やってるのは知ってる」
「嘘!?」
遊華は知らなかったみたいだな。まぁ、俺も未来に行って初めて知ったんだが
「本当だぞ。遊華。年齢制限に引っかかるような本を書いてる」
「へぇ~」
ジト目で親父を見る遊華。だが、忘れちゃいけない。俺も遊華もその本の印税や原稿料で生活できている事を
「まぁ、父さんの書いてる本の内容は置いといて、父さんの仕事と俺が引き取られるのと何の関係があるんだ?」
「母さんは元々体質的に子供ができにくい身体だったんだ。でも、子供はほしかった。そんな時、僕は新作の取材で子供が預けられている施設を訪れた。そこで見つけたのが……」
「俺というわけか……」
「正解。話を続けるよ?」
「ああ」
俺が施設にいたという事を遊華はどう思うんだろう?可哀そうだと思うのか?
「生後1歳で僕が取材に行く1週間前に遊は施設に預けられた。僕はそう聞いた。当時の僕は奇跡だと思ったね。この子を引き取ったら諦めていた子供ができるんだから……それを母さんに話したら2つ返事でOKしてくれたよ。で、遊を引き取った。ここまでで質問は?」
「いや、ない。父さんも母さんも俺を憐みじゃなくて望んで引き取ってくれたってわかって安心した」
本当は俺の両親の事や俺を施設に入れた人の事、遊という名前は誰が付けたか?とか施設の名前を聞きたかったが、それを聞いたところでどうにもならない。聞いても無駄だから。その施設に行ってどうなる?俺を施設に入れた人間に会ってどうなる?俺の名付け親が誰か聞いてどうなる?それを聞いて何かするくらいなら俺は今、俺を好きだって言ってくれる人や家族、友人を大切にする。
「そうか……ありがとう、遊」
別に礼を言われる事は何もしていない。単純に俺を施設に入れた奴にもあるかどうかわからない施設にも興味がないだけだ。だが……
「礼の代わりと言ったらなんだが、羽月さんに会わせてくれないか?」
「羽月に?いいけど、いつがいい?」
「いつでもいい」
「そう、じゃあ、連絡はしておくよ」
「よろしく」
俺は遊華を連れて書斎を出た。この時代なら羽月さんの旦那……香月と美月の本当の父親が生きている。あの2人は幸せに生きているはずだ
「お兄ちゃん……」
部屋に戻った遊華は泣きそうな顔で俺を見ている。結局わかったのは俺がこの家に引き取られた経緯と親父と母さんがどんな思いで俺を引き取ったかくらいだ。だが……
「どうした?遊華」
「お兄ちゃんは本当のお父さんとお母さんの事気にならないの?」
「別に。仮に俺が捨てられて施設の人に拾われたとしたら、それはその捨てた2人に俺を育てていく覚悟がなかっただけだし、俺の本当の両親が亡くなっていて親戚が俺を施設に入れたとしたら、それはその親戚連中に子供を育てるだけの器がない。ただ、それだけの事だ」
「でも……」
本人が気にしていないのに遊華が気にしてどうするんだよ……
「俺は俺を育ててくれた両親や俺の彼女の遊華、俺の友人の浩太や敬がいれば多くは望まない」
「うん!」
この後の話を少しだけしよう。この後、俺はこの時代の羽月さんや香月、美月と出会った。てっきり遊華はヤンデレが発動するかと思ったが、事前に未来で義理の姉妹として同じ家で生活していた事を話していたおかげですぐに打ち解けた。遊華の友達ともすぐに出会えた。だが、1番ビックリしたのは浩太と敬に彼女ができた事だ。それも、俺が未来で出会った人だからな。まぁ、俺も俺で遊華1人と付き合っていくつもりでいた。だが、俺の予想とは違った。俺は秋野美優、冬野由紀、香月、美月、遊華の5人と付き合う事になってしまった。そして、10年後────
「どうしてこうなった」
俺は今、5人の女性との結婚式に出ている。新婦は遊華、香月、美月、美優、由紀で新郎は俺……人間どう転べば妻を5人も迎え入れる展開になるのか誰か説明してほしい。まぁ、同棲する時点でおかしいところはあった。第一に5人の両親がノリノリだったところ、その両親たちがみんなで金出しあって俺と遊華の家を4世帯住宅にしてしまったところだ
「遊、往生際が悪いよ?」
「そうだよ、遊ちゃん」
うるさい。俺の飛ばされた未来とは大きく違うんだ。疑問くらい持つわ!香月と美月にはわからないと思うがな
「遊、いい加減慣れたら?」
遊華、慣れればいいってもんじゃないんだ。俺は遊華たちのファンに殺されないかが不安なんだよ
「遊さんは私たちと結婚するのが嫌なんですか?」
由紀さん、結婚が嫌とかそういう話じゃなくて、何で俺なんだ?って聞きたいんですよ?
「そんなのここにいる全員が遊さんを愛してるからに決まっているじゃないですか~」
美優さん、心を読まないでください。はぁ、彼女たちの職業が声優ってところは俺が飛ばされた未来と変わらないからその辺は変化なしなんですけどね
「それもこれも法案が変わったせいか……」
今年の初めに一夫多妻制が正式に認められた。つまり、1人の男性の為に争わなくてよくなり、好意を寄せてくれる女性全員と結婚できるようになった。まぁ、俺の場合は成り行きというか、彼女たちに強引に押し切られる形でだがな!
「遊、いつまでもごちゃごちゃと男らしくないよ?もう覚悟を決めなよ」
「うるせ、ライオンの檻に俺を突き飛ばすような真似しといてどの口がそんな事言ってんんだ?」
「ん?この口だけど?」
結婚式だし、俺をここまで育ててくれた恩もあるから今回に限り手は出さない。だが、覚えていろ次はない。まぁ、俺は今幸せだからいいか
「遊びに行くつもりが未来に来ていた件について」
まぁ、俺が体験した事を小説にするならタイトルはこんなところだな。これが俺の物語か……可もなく不可もなくってところだな
「遊?何か言ったかい?」
さて、嫁さんたちを待たすと後でうるさいからな。そろそろ行きますか
「いや、別に」
今日は俺の結婚式だが、何事もなく終わってくれよ?結婚式まで俺は疲れたくないからな。できれば平和に式を挙げて、平和に家に帰りたい。
今回で本編は最終話です。
次回からは番外編です。本編でチラッとしか触れてない部分をやっていこうと思います。
遊びに行く時に電車の中で唐突に思いついた話にお付き合い頂き感謝しております。また、拙い文章で所々わかりづらいところもあったと思います。ですが、こうして本編は完結する事ができました。
途中、言葉遊びみたいな所もあり、また、あまり深く触れていない部分も多々あります。その辺りは番外編でやっていこうと思います。
本編はこれにて完結ですが、番外編の方もよろしくお願い致します




