俺が遊華に本当の事を確認しようとする件について
今回は遊が真実を知って遊華に本当の事を確認しようとします
前回の終わりでそれっぽいのが見えたのは気にしない気にしない
では、どうぞ
真実とは意外な事が原因で発覚するものだ。例えば、うっかり口を滑らせたり。例えば、尾行していたら偶然その場に遭遇したり。俺の場合は暇つぶしと妹が当時、何を考えていたかを知りたかったという好奇心が原因で俺と遊華の本当の関係を知ってしまったわけだが……
「俺と遊華が本当の兄妹じゃない……?」
遊華が高校入学した日に記されていたのは俺と遊華は本当の兄妹じゃない。従兄妹だったらまだ納得がいったが、そうじゃない。俺と遊華は従兄妹どころか血の繋がらない赤の他人……
「“今日は私の高校入学です。だけど、お兄ちゃんがいない入学式……全然楽しくない……敬さんや浩太さんがいてくれても1番側にいてほしい人、1番お祝いしてほしい人が側にいないんじゃ楽しくない……だけど、私にとっていい事もありました。それは私とお兄ちゃんが本当の兄妹じゃないってわかった事。お兄ちゃんは施設に預けられていたのを私のお父さんとお母さんが引き取ったという話を聞かされた。その時、私は絶望よりも嬉しかった。私の想いは何も間違ってなかった……”って事は俺は養子か何かだろうな」
遊華の日記から俺は元々は施設に入れられた子であり、藤堂家の人たちに引き取られた。こういう事になる
「敬と親父の含みのある言い方の理由はこれか……」
不思議と怒りが沸いてこない。むしろ納得している。敬と親父が妹という言葉を俺が発した時に含みのある言い方や返し方をしてきていたおかげなのか?
「俺がこの世界に飛ばされたのは素直になれなかった遊華が俺に素直に接したい、好きだって言いたいって思ったからか……」
浩太からもらった資料の中にも書いてあった。人の想いによって飛ばされたってな。俺が飛ばされたのもそれが原因だ。ミス声優コンテストで俺は捕まるわけにはいかない。そして、何だかんだでこの世界にいるのも悪くないと感じてきている。だが……
「この世界にいるのも悪くない……が、10年前の遊華はどうなる?この日記を見るに10年前の遊華はきっと寂しい思いをしているはずだ……」
この世界で初めて遊華と一緒に寝た時にアイツは泣いていた。寂しかった、いなくならないでと子供の様に泣いていた。じゃあ、俺はどうするべきなんだ?なんて悩むまでもない。
「俺は10年前に帰る。俺がこの世界で知り合った人は何だかんだで身内を辿っていけば10年前でも会える」
そう結論付けた俺は携帯を取り、親父へ電話を掛けた
『もしもし?今度はどうしたの?』
いつもと同じ親父の能天気な声。弄られるかもしれないが、今回、俺はそんな事に付き合うつもりは毛頭ない
「重要な話があるんだ。今から行っていいか?」
『真剣な話なんだね?』
親父は察してくれたのか、いつもの調子ではなく、真面目に返してくれた
「ああ」
『そうか、じゃあ、待ってる。くれぐれもコンテスト参加者に捕まるなよ』
「わかっている」
俺は電話を切り、財布と携帯を持って家を出る。
「さて、コンテスト参加者は誰もいないな」
一応、必要最低限の変装はしているが、コンテスト参加者に見つかると面倒だ。行動は慎重に起こさなきゃいけない
「右よし!左よし!さて、行きますか」
左右の確認をして親父のいるマンションへと歩き出した。
「駅前を通らずに行けるマンションで助かった」
さっきゲーセンにいると言ってしまった手前、駅前にはコンテスト参加者が大勢いるが、親父のマンションは駅から少し遠い場所にある為、駅前を通らずに済む
「はぁ、俺の今の考えを伝えたら殴られるんだろうな……」
今の考えを伝えたらどんな人でもキレて俺を殴るに決まっている
「さて、着いたな」
前回は香月と一緒だったから遅く感じたが、俺1人で来ると早く感じる。隣りに人がいるのといないのじゃ違うな
「親父、開けてくれ」
『わかった』
エントランスで親父の部屋の番号を入力し、入口を開けてもらう。そこからはエレベーターに乗って親父の部屋へ。そして、インターホンを鳴らす
「親父、来たぞ」
『うん、今開けるね』
羽月さんはいないのか、親父が出た。
「いらっしゃい、遊」
親父が玄関のドアを開けた。まぁ、羽月さんがいないなら当たり前か
「おう……ところで、羽月さんは?」
「事務所だよ。さて、立ち話もあれだし、リビングに行こうか」
「ああ」
親父に案内され、リビングへ
「で、遊はもう全部知っているんだね?」
全部と言うのは俺と遊華の関係や俺が本当は親父の子じゃないという事を言っているのだろう
「ああ、全部知っている。俺が施設から引き取られた子で遊華とは赤の他人だって事も」
「そっか」
親父は嘆くでも悲しむでもなく一言発しただけだった
「俺はここまで育ててもらって感謝しているし、親父がそれを隠していた事を怒っているわけじゃない」
「あれ?意外だね。僕は殴られる覚悟もしてたんだけど?」
親父はいつもと同じようにおちゃらけて見せた
「親父や俺の友人が妹って俺が言った時に“妹か……”なんて含みのある言い方してれば何となく違和感を持つし、真実を知った時に親父や友人の反応を思い出せば納得する」
「そっか、で?10年前に来た原因は遊の事だからわかっているとして、これからどうするの?」
これからどうする?か……もう既に俺の答えは決まっている
「遊華や香月、美月が俺を好きだっていうのは知っている。自意識過剰かもしれないが、強引にキスまでされたんだ。嫌でも意識するさ。だが、俺はこの世界では誰とも付き合わないし、誰の告白を受けるつもりもない」
俺のこの考えは人によっては激怒し、俺を殴るかもしれない。親父だって人間だ。俺を殴るに決まっている
「そう、で?続きは?」
「は?え?殴らないの?」
「え?何で?」
俺は親父に殴られる覚悟でこの考えを話した。だが、帰ってきたのは続きの催促だった
「いや、結構酷い事言ってるし?」
「まぁ、確かに。でも、僕も遊と同じ体験をした時に同じ事を言ったし」
「ああ、そう。で、続きだが、俺は遊華に同じ事を伝えて10年前に帰って今度は俺から遊華に告白する」
「それはいいと思うけど、香月ちゃんや美月ちゃんはどうするの?このまま放置しておくの?それはちょっと酷すぎじゃない?」
確かに酷いとは思うだが、俺はあの2人を放置するつもりはない。その辺りもちゃんと考えてある。想いを告げさせすらしない?そんな事するわけない
「放置はしない。まして、想いを告げさせないなんて事は絶対にな」
「へぇ~、どうするの?今の話だと香月ちゃんと美月ちゃんは無視して遊華のみを優先するっていう風に聞こえるんだけど?」
「俺が10年前に羽月さんに会いたいって言ったら親父はどうする?」
「僕?僕はもちろん遊を羽月に会わせるよ?」
やはり何年経とうが親父は親父だ。俺を女性関係で弄る事に関しては余念がない
「俺は10年前に帰ったら羽月さんに会う。もちろん、香月と美月にも。そこからどうなるかは知らんが、好きだって言われたらちゃんと答える。それじゃダメか?」
「はぁ……結局放置する事に変わりはないような気がするけど、あの2人の事もちゃんと考えてるなら僕は何も言えないな……」
親父の言う通りだ。結論は放置するになってしまう。だが、俺は10年という長い月日の間、待っててくれた女の子を無視する事はできない
「俺は親父と違って女性には誠実なんだよ」
俺が親父の本当の子供じゃない事を黙っていたせめてもの仕返しに親父はチャラ男だと遠回しに言ってみた
「まぁ、僕は女性にはだらしないところはあるけど……」
自覚してるなら直せ。無理なら監禁されてしまえ
「自覚あったんだな」
「まぁね」
親父と軽口を叩き合ったのは何年振りだろう?未来に来る前は親父は家にいる事が少なかったからな。多分、10年振りだ
「んじゃ、俺もう行くわ」
俺はソファーから立ち上がり遊華の元へと行く準備をする。
「待って、遊」
「何だよ?」
俺の決意を揺さぶろうってか?生憎だが、俺の決心は親父に揺さぶられた程度じゃ揺るがないぞ
「今の法律だと一夫多妻制だから遊は18歳になれば複数の妻を迎える事ができるよ」
「それで?」
「10年前に帰っても結婚するなら少なくとも10年は待ってね。付き合う分には10年前からでもいいから」
前に親父がハーレムでもいいって言ってたわけはそれか……そんなの最初に言ってくれよ
「いいのか?香月や美月と知り合ったのだってイレギュラーな事で未来が変わってしまうかもしれないのにそんな事言って」
「遊、未来に飛ばされたなんて特殊な体験をした人間なんてあまりいないんだよ。それに、未来に飛ばされました。なんて話を誰が信じるの?言いふらしたところでその人はホラ吹きか頭のおかしい人だよ」
親父の言う通りだ。未来を知っているなら自分の都合のいい方に変えようとするはずだ。それがなかったって事は誰も未来を知っていても変えようとはしなかった。という事になる
「それもそうだな。んじゃ今度こそ本当に遊華の元へ行くけど、親父はちゃんと家にいて俺と羽月さん一家を会わせてくれよ?」
「それは10年前の僕に言ってよ……」
「ああ、10年前の親父にも言うよ」
親父と話終えた俺はマンションを出た。さて、次は遊華に想いを伝えますか……
「話があるから俺の部屋へ来いっと」
俺は遊華へ簡潔にメッセージを送る。返信があってもなくても俺は一先ず自分の家のいつも使ってる隠し部屋へと帰る
「さて、最終決戦に行きますか」
俺は10年前の遊華に告白する。だが、この世界の遊華には告白しない。そう、ただ伝えるだけだ。自分がどうしたいかをな。その為に俺は家へ向かってひたすら走り続けた
「はぁ、はぁ、い、意外とキツイな……」
親父のマンションから家まで大した距離じゃないが、全力疾走ともなるとキツイ
「さて、遊華はちゃんと来ているのか?」
玄関で息を整えながらいつもの部屋へと向かう。正直、汗で服が張り付いて気持ち悪いが、今はそんな事を気にしている場合じゃない
「ただいま……」
俺は部屋のドアを開けて中に遊華がいるかどうかを確認した。何だろう?いつも会っているのにこの謎の緊張感は……だが、今回ばかりは俺だって腹をくくる。
「あ、おかえり、お兄ちゃん」
遊華はリビングで1人、ソファーに座っていた。これから俺がする話なんて予想してないんだろうな……
「おう、ただいま」
「おかえり、お兄ちゃん。話って何かな?」
早速本題に入ろうとする遊華はいつもと変わらない笑顔だった。俺がこの笑顔を曇らせてしまうかもしれないのか……
今回は遊が真実を知って遊華に本当の事を確認しようとしました
この後、遊はどうするのか!?
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




