逃げ込んだ部屋で俺が真実を知る件について
今回はミスコンから逃げた遊が真実の一旦を知る話です
遊が知る真実とは?
では、どうぞ
ミス声優コンテスト。俺は今までいろいろな騒動に巻き込まれたし、その度に疲れたとか2度と巻き込まれたくないと思っていた。だが、その反面では楽しんでいたのも事実だ。しかし、今回のは話が違う。俺を捕まえる事で強引に票を入れる。つまり、俺が何とも思ってない人が俺を捕まえた場合。その人に票が入る事になる。それって何か違う。だから俺は絶対に捕まるわけにはいかない
「ここにいれば遊華たちもそうだが、他の人に捕まる事もないだろ」
いつもと同じ部屋だと思われているが、ここは親父の作った隠し部屋の1つであり、基本的なレイアウトは俺がいつも使っている部屋と全く同じなので紛らわしい。浩太に絶対捕まるなと言われ俺は現在ここへ引き籠っているわけだ
「さすがに家族すら知らないんだ、俺と会った事もない人がここを知るわけがない」
家族の中で1番最初に隠し部屋の事を教えたのは美月だが、教えた当時はかなりびっくりしていた。だが、俺が教えたのは美月の部屋にある隠し部屋と俺がいつも使っている隠し部屋のみであり、今いる部屋は教えていない
「さて、コンテストが終わるまでの間はここでのんびり過ごしますかね」
ここにいれば少なくとも追いかけ回される事はない。ただ、遊華を筆頭に俺を家探しするかもしれないがな。念の為に隠しカメラの映像をチェックしておくか
「さてさて、遊華たちは家に戻ってきているのかな?」
パソコンを起動させ、カメラの映像を呼び出す。まぁ、来ていてもおかしくないし、来ていなくてもおかしくない。つまり、遊華たちが家にいる可能性は五分五分なのだ
『お兄ちゃん、いいないなぁ』
リビングに仕掛けてあるカメラに映ったのは遊華だ。行動から察するに俺を探しているみたいだ。
「リビングには遊華1人か……他はどうだ?」
リビングには遊華1人だったが、他の場所はわからない。ひょっとしたら1人じゃないかもしれないし
「やっぱり……」
思った通り、トイレ、風呂はもちろん、2階の香月、美月の部屋と親父の書斎、パソコン部屋以外は俺の顔見知りや香月、美月、遊華以外の女性声優が野獣の様に俺を探している光景だった。だが、変だ。年齢はバラバラでも彼女たちは社会人だ。いくら票の為とはいえ、どうしてこうも必死に俺を探す?
「このまま家を荒らされたら面倒だ。ここは羽月さんに電話してこうなった理由を聞いてみるか」
携帯を取り羽月さんの番号を呼び出す。特別急いでるわけじゃない。ただ、俺を血眼になって探す理由を聞くだけだ。
『もしもし?遊君?どうしたの?』
羽月さんは親父とは違い、1コールでは出なかったが、それでも電話に出てくれた。
「今家に女性声優の方々が見えてるんですが、その件で1つ聞きたい事がありまして」
『へぇ~、家に来ているのがわかって捕まってないところを見るとどこかに隠れているのかな?で、何?聞きたい事って』
「女性声優の方々は俺の事を血眼になって探していますが、俺の票に何の意味があるんですか?」
『あれ?何も知らないの?』
知らないから聞いてるんだ。それに、ネットで調べても詳細な事はあまり書いてない。書いてあったのは俺の投票が済んでない、このコンテストの期間が1週間だという事くらいだ
「ええ、俺の投票が済んでいないのと期間くらいしか書いてありませんでしたが?」
『あ~、やっちゃったか~』
まるでうっかりミスをしたと言わんばかりの反応。当事者からしてみればいい迷惑だ
「あなたのミスはどうでもいいんで、早く教えてください」
『あら、随分と冷たいのね。こういう時は慰めるものよ?』
「生憎ですが、俺は親父の様に女性に飢えてないんでそういうのはいいです。それより、俺の票に何の意味があるんですか?」
『冷たいわね。まぁ、いいわ。遊君の票の意味は今後1年の間は自分のやりたい役にオーディションなしで就ける特別権みたいなものね。だから、遊君の1票が入って優勝してもしなくてもその人はオーディション免除ってわけ。これが遊君の票の意味』
オーディション免除?俺の1票で?たかが俺の1票で?馬鹿げてる……1年とはいえ努力しなくていいって事じゃないか……
「意味は解りました。それで?誰がこんな事を考えたんですか?理由によっては俺だって怒りますよ?」
『ゆ、遊君、怖い!怖いわよ!』
知らず知らずの間に俺は自分でもビックリするくらいの低い声が出ていたらしい
「すみません、ですが、話してもらえませんか?1年間オーディション免除を俺の票に付けたわけを」
『当事者だし、知る権利はあるわ。そうね、オーディション免除だからと言って私たちは彼女たちに楽をさせようってわけじゃないの。オーディションを受ける時間をボイストレーニングに回したい。でも、彼女たちにも生活があるし、役をもらってこその役者よ。遊君もそれは解るわよね?』
「はい、その辺は理解してます。ですが、俺の1票にその権利を付ける理由とこんな事を始めた意味が解りません」
別にミスコンの票にこんなものを付けなくても別の方法でもよかったはずだ。なのに、なぜ?
『遊君の票にその権利を付けたのは遊君が本当に好きな人を知る為。こんな事を始めたのは集中してトレーニングができるようになる人が周囲から依怙贔屓だとかで騒がれないためかな。あ、遊君に好きな人がいるならいるでそれでいいし、彼女たちがトレーニングをしてないって言ってるわけじゃないの。ただ、私たちは若い人材を育てたいだけなのよ……そこだけはわかって?お願い』
「俺の好きな人の件は置いといて、若い人材を育てたいっていう気持ちは解りました。だけどなぁ……」
『ん?どうしたの?」
若い人材を育てたいっていう羽月さんや他の事務所の社長さんの気持ちはわかるが、これはちょっとなぁ……
「さすがに大勢で家に押しかけられるのはちょっとなぁ……そもそも、俺は1人1人にそれぞれ魅力があると思うんで、そんな特別な意味を票に付けられても投票しないと思うんですけど」
『遊君がそういうと思ったから遊君の票に特別賞を付けたの!後は遊君のファンの子たちの為にね』
俺のファン?え?どういう事?ほとんど声優としての仕事が来ない俺にファンなんかいるわけないだろ?
「どういう事でしょうか?」
『みんな血眼になって探しているのはトレーニングとオーディション免除もあるし、これはまだ言ってなかったけど、1年間、遊君のお世話を受けられるからなのよ?」
は?何それ?俺そんな事聞いてないぞ!?初耳だ……
「初耳なんですけど……」
『ええ、今言ったからね。遊君の票が入った人は例え私と同年代であろうと妹の世話を焼く兄の様に遊君が接してくれるっていう特典付き』
「つまり、票が入った人はトレーニングに集中できる上にオーディション免除され、1年間だけ俺の妹になれると、そういう事ですか?」
『うん!だから、頑張ってね!』
羽月さんとの通話はここで終了。最初はふざけたコンテストだと思っていた。俺の票の意味を聞いた時もふざけんなって思ったけど、羽月さんたちの若い人材を育てたいっていう思いはわからなくもない。だが……どうして俺が票の入った人を1年間、妹みたいに扱わなきゃいけないんだ……
「アホらし」
羽月さんたちの気持ちは理解できるが、そこに俺を入れる意味がわからん。真剣に考えるだけ無駄なので、俺はこのまま引き籠る。
「念の為に遊華にメッセージ送っとくか」
これ以上家探しされて家を散らかされたら後が大変だ。それは未然に防ぎたい
「俺は今駅前のゲーセンにいるぞっと」
簡潔に俺がいる場所を遊華に送り、携帯をパソコンの横に置く。メッセージを見た遊華はドタバタと家から出て行った。それに倣い他の人も次々と家から出て行く
「ようやく落ち着いた」
遊華たちがいなくなった家に俺1人。少なくともゲーセンにいる事にしてあるし、遊華を筆頭にゲーセンもしくは駅周辺を探すだろう。家から遊華たちを追い出した俺は再び暇になった。
「本でも読むか」
いつもアニメを観ているわけじゃない。俺でもマンガはもちろん、活字のみの小説だって読む。ラノベの方が読む回数が多いだけだ。そんな言い訳はともかくとして、この世界に来てから俺が読んだ活字といえば、浩太からもらった俺と同じ体験をした人の資料のみであり、小説を読んでいない。
「資料だけじゃなくて、たまには小説でも読むか……」
俺はパソコンから離れて書斎に向かった。この家には書斎が何個あるんだよ……俺が知ってるだけでも書斎は3つある事に若干呆れていた。
「この部屋の書斎は初めて入るな」
2階の書斎は親父を起こしに行くためによく入ったし、いつもの部屋の書斎は俺が浩太からの資料を置いておく為、よく使っている。だが、今いる部屋の書斎は入るのは今日が初めてだ。さっきはドアを確認しただけだだからな
「ここもいつもの部屋と同じか」
部屋のレイアウトはいつも使っている部屋の書斎と同じだ。ただ、置いてある本が違うだけだ。
「はぁ……親父の事だからどうせ年齢制限が掛かる本ばかり置いてるんだろうな……」
年齢制限のない本を適当に取ってさっさと出よう。
「お、これなんかいいな」
俺が手に取ったのは恋愛小説。最近読んでいるのはホラーや異世界ものだからたまには恋愛小説にした。
「あっ……」
目当ての恋愛小説を本棚から取った時に隣にある本が落ちてしまった。ちゃんと並べておけよな……
「へぇ、親父でも日記なんか書くんだな」
落ちた本の表紙には日記と記されていた。恋愛小説を読むよりも親父の日記を読んでた方が面白そうだ。俺は自分の好奇心にあっさり負けてしまい、恋愛小説を棚に戻して日記を手に取った。
「さてさて、どんな黒歴史が綴ってあるのやら」
パソコンの前に戻ってきた俺は親父の黒歴史にワクワクしながら日記を開いた。だが────
「“今日から日記を書こうと思います。だけど、日記って何を書いたらいいかわからないから今日あった事を適当に書こうと思います”ってこれじゃ乙女だぞ……親父」
字は丸みを帯びたいかにも女性が書きそうな字だったし、何だろう?女性を彷彿とした書き方は
「まぁ、読んでいれば誰が書いたかわかるか」
俺は最初のページを開く。1度読み始めたものを止めるという選択は俺にはない
「“お兄ちゃんがいなくなってから1週間が経過しました。なので、私はこれから日記を付けて帰ってきたお兄ちゃんに何があったかをきちんと説明できるようにしたいと思います”ってこれ遊華の日記か」
最初のページには今日から日記を書くという決意表明みたいなものが書かれていた。そして、今俺が見ている1ページ目は10年前に俺がいなくなってから1週間が経過した時のものだった
「これって見たらまずいんじゃ……」
だが、ページを進める手は止まらない。俺は当時の遊華が何を考えているか知りたい好奇心でページを進めた。そして、遊華が高校入学に差し掛かったある日の事が綴られたページだった
「何だよ……それ……」
その日のページには俺と遊華の本当の関係や俺が敬や親父と遊華の話をする時に感じていた違和感……つまり、含みのある言い方をしていた本当の理由がそこにあった。そして、俺はこの世界に飛ばされた理由を確信した
今回はミスコンから逃げた遊が真実の一旦を知る話でした
遊は何を知ったんですかね~
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




