俺が観光中に倒れる件について
今回は遊が観光中に倒れる話です
今回で遊たちの家族旅行終了!
では、どうぞ
旅行って楽しいものである。俺はそう思う。だが、その旅行の中でも俺個人としては楽しくない行事が存在する。それは買い物だ。同性同士なら時間も大して掛からないだろう……なぜなら、最初から買うものは決まっている場合が多いからだ。それと、自分も買うものや見るものがあり、時間の進み方が早いと感じるからかもしれない。だが、今の俺は……
「重い。そして、暑い……」
女性陣の買ったものの荷物持ちをし、女性陣の買い物が終わるのを待っている。だが、この炎天下の中で待つのは辛い
「おっせーな……いつまで買い物してんだよ……」
荷物の重さと夏の暑さのせいかすごくイライラする。アイツ等を置いて俺1人だけ先に帰ってしまおうか?と思うほどだ。
「マジで帰ってやろうか?」
車だと時間が掛かるが、電車だとそんなに時間は掛からない。つまり、遊華たちを置いて俺1人だけ先に帰ってもいい。むしろ、そうしたい。遊華たちがヤンデレ化する?そんな事知るか。
「もうダメだ、帰ろう」
暑さと荷物の重さで限界を迎えた俺は遊華たちを置いて帰る事にした。3人とも悪く思うな。時間を掛けるなとは言わないが、俺を放置して買い物している方が悪いんだ。俺は駅に歩き出した
「お兄ちゃん、どこ行くの?」
買い物を終えたであろう遊華が戻ってきたらしい。駅に向かおうとしている俺に声を掛けた。だが、俺の知った事ではない
「遊華たちに散々待たされ、この炎天下の中で外にいるのはキツいから帰る」
薄情かもしれないが、このままだと俺が熱中症になってしまう。引き留められても俺は帰るぞ
「ご、ごめん!謝るから帰らないで!」
遊華に腕を掴まれ引き留められるが、俺には関係ない。今の俺には遊華たちと観光を楽しむ事よりも自分の体調の方が大事だ。観光はいつでもできる。だが、旅行中に体調不良になるのは嫌だ
「暑い、重いで俺は限界だ。買い物したいなら遊華たちだけで楽しんでくれ。じゃあな」
掴まれていた腕を振りほどき、駅に向かおうとするが────
「───っ!?」
何もないところで転んでしまった。そういえば、さっきから何かフラフラすると感じていた
「お、お兄ちゃん!?」
遊華の驚く声と通行人の騒ぐ声を最後に俺の意識は途切れた。ああ、こりゃ多分、暑さにやられたな……
「ここは……?」
目が覚めた俺は視界に見知らぬ天井が視界に入った。そして、鼻を突く消毒液の匂い。おそらく病院に搬送されたんだろう。
「あ、遊、起きた?」
俺が目覚めるのを待っていたであろう香月が声を掛けてきた。遊華と美月がいないのは後で聞くとしよう
「あ、ああ……」
「よかった……本当によかった……ゆう~!!」
「うわっ!?」
泣きながら俺に抱き着く香月。何て大げさなんだ……
「ごめんね……遊……私たちが買い物に夢中になっていて遊が具合悪いなんて気づかなくて……」
自覚があった。いや、自覚させられたと言った方が正しいだろう。おそらくだが、医者にでも原因を説明されたのだろう。
「別にいい。それよりも、俺の方こそ悪かったな。折角の観光を俺のせいで台無しにして」
本当だったら“人に荷物持ちさせて待たせてるんだから少し考えて行動しろ”って言いたい。だが、それを言ったところでどうだ?自分の感情に任せてそれを言うのは違うと思うし、香月しかまだわからんが、泣くくらいにには罪悪感はあるようだ。
「ううん、遊は悪くない。元はと言えば私たちが荷物を持たせたまま遊を待たせたのがいけないの……」
「俺が何で倒れたかって聞いてるか?」
「軽い熱中症だって言われた……」
やっぱり俺は熱中症で運ばれたのか……まぁ、予想通りだな。どれくらいの時間かはわからないけど、買い物中はずっと外で水分を取らずにいたし、水分を買う暇すら与えてもらえなかったからな
「だろうな。あんだけ待たされれば無理もない」
怒りはないし、呆れているわけでもない。だが、自分たちの買い物に夢中になる前に待っている人の事も考えてほしい。買い物をするなとは言わない
「ごめん……本当にごめんね……」
泣きながら謝る香月にこれ以上追い打ちをかけるような真似はしたくない。が、俺じゃなくても急病人が出てからでは遅いのでもう少しだけ言わせてもらおうと思うが、それを香月だけに言うのは筋違いだ。遊華と美月が戻ってきてからまとめて言うか
「遊華と美月は?」
一旦話題を遊華と美月の話題にすり替え、この場を切り抜ける。泣いている香月が可哀そうとかじゃない
「飲み物買いに行ってる」
泣いていた香月はようやく立ち直ったのか、元気がない。まぁ、家族が倒れたんだ。元気がないのも無理はない。
「そうか」
遊華たちが戻ってくるまで暇だな……こういう時に娯楽がほしいと思うが、今回は仕事で来ている為、娯楽の類がほとんどない
「あ、お兄ちゃん目が覚めたの?」
病室の入口を開けた遊華と美月が人数分の飲み物を持ってやってきた。なんて言うか、気が抜ける。一歩間違えば俺は死んでいたかもしれないのに緊張感がない。水分補給を怠った俺に非があると言われればそれまでだが
「ああ、ついさっきな」
しゃべらなくなった香月の代わりに俺が答える。香月は俺が目覚めてから事の重大さを理解したようだが、できればそうなる前に気が付いてほしかったな
「ごめんね……遊ちゃん……」
「お兄ちゃん、ごめんね……」
香月と同じように泣きながら謝る遊華と美月。明るく振る舞って見せても内心は気にしているのか
「全くだ」
許すとも許さないとも言わない。それを言ったところで意味はないからだ。問題なのは今回、俺は大量の荷物を持たされ、炎天下の中で待ちぼうけを喰らった。その結果どうなったかだ
「怒ってる……よね?お兄ちゃん?」
「別に」
さっきも言ったが、俺は怒っていない。呆れもしていないがな。ただ、自分たちがした事がどんな事態を招くか自覚してほしいだけだ
「でも、遊ちゃん素っ気ない」
「元々俺はこうだ」
素っ気ないわけでも何でもない。元々俺は愛想がいい方ではないし、誰にでも愛想を振りまくタイプでもない。
「遊、2人も反省しているし、許してあげてもいいんじゃないかな?」
香月が久々に口を開いたかと思えば“許してあげて”か……許したとしてコイツ等は自分たちが買い物に夢中になった結果がこうだって自覚しているのか?
「許すも何も自分たちが買い物に夢中になった結果がこれだって自覚しているならいい」
「うん……これからは気を付けるね。お兄ちゃん」
「ごめんね……遊ちゃん」
一応、自覚しているみたいだ。けど、倒れた側からしてみれば文句を一言言っても罰は当たらないだろ
「3人ともそうだが、買い物をするなとは言わないが、さすがに両手に荷物を持たされた状態で炎天下の中を待たされて水分補給ができない状態になるまで物を買うな。買った物くらい自分で持ったらどうなんだ?」
男が持って当然だみたいな顔で買い物をしている女がマンガや何かでいるが、それはあくまでもマンガの世界だ。現実では持たされる方は疲れるし、それを持って待つのは辛い
「「「ごめんなさい……」」」
反省しているようだし、そろそろ許してやるかな。これに懲りたら少しは抑えてほしいものだが……
「反省しているならいい」
泣きそうな3人をこれ以上責めても仕方ないので、許す事にした。それに、せっかくの旅行だし、楽しくやらなきゃな。
「「「う、うわぁぁぁん!!」」」
許した途端に大声で泣きだす遊華たち。ここ病院だってわかってます?しかも、うわぁぁぁんって……そんなマンガみたいな……
「心配掛けて悪かった!だから泣くな!」
今度は俺が謝る側に回る事になった。余程不安だったんだろうな……自分たちのせいとはいえ、家族が倒れたんだ。不安になるのも当然か
遊華たちが泣き止むまで数分の時間が掛かった。その間、病人であるはずの俺が苦労したのは言うまでもないだろう。
「遊君!!」
俺を呼ぶ声と共に突然ドアが開いた。念の為に言っておくが、ここは病院であり、今、俺がいるのは病室だ。何が言いたいかっていうと
「羽月さん、病院では静かにしてください」
走ってきたのか、大量の汗をかいている羽月さんだが、そんな事は関係ない。病院では静かにするのは当たり前の事だ。いくら俺の事が心配だったとしても
「だ、だって、遊君が倒れたって聞いたから……」
「それでもです」
「ご、ごめんなさい……」
シュンとした羽月さんの姿は香月にそっくりだ。香月はこの人の娘だ。間違いない
「わかってもらえれば何よりです」
静かなはずの病室がより一層騒がしくなった。この騒ぎは看護師が注意しに来るまで続いたが、こんな家族も悪くないと思う。
「注意されちゃったね。遊ちゃん」
医者から退院の許可をもらった俺は退院し、再び商店街に戻ると思っていた。だが、遊華たちにとって今回の事は余程堪えたのか、商店街に行く事なく、そのまま家路についた。俺的には観光してもよかったんだが、遊華たち……特に目の前で俺が倒れたところを見た遊華は心配し過ぎじゃないのか?ってくらいに心配された
「家族旅行楽しかったな」
香月と美月に出会ってから初めての家族旅行……いろいろあったが、また行きたい。俺はそう思う。できれば元の世界で
「元の世界に帰ったら遊華とちゃんと話して、親父に頼んで羽月さんや香月と美月……それに、あの2人の本当の父さんや俺の本当の母さんとみんなで旅行に行ってみたいな」
帰宅して深夜回っているのに自室に戻ると不思議と寝れない。旅館の布団が寝心地よかったのが悪いのか、俺が単に寝つけないのが悪いのか……多分、どっちもだな
「資料でも読むか」
旅行中、俺は記念として遊華たちと記念にプリクラを撮った。それが元の世界に持ち帰り可能なのか?それだけを確認してから寝る事にした
「これが1番近いか」
大量の資料の中から俺の現状に近い1冊の資料を見つけた。悪い事になるって書かれてなきゃいいが……
「えーっと、“俺は未来で記念にペンダントを貰ったが、元の世界に帰ってもそれが消える事はなかった。だが、これを読んでいる人は俺と同じ状況になっていると仮定して注意しておく。未来で残るものを貰ったり作ったりすると、元の世界に帰ったらその世界で出会った人間に出会う時期が早まる。未来で出会った人間が大切な人ならいいが、恨んだり憎んだりした人間ならいい事はない”」
この世界で記念を残した俺は元の世界に帰った時に香月と美月に出会うタイミングが早まるって事か……にしても、この資料の人は大切な人にも恨むか憎むかしてた人にも出会ったんだな。しかも、未来で
今回は遊が観光中に倒れる話でした
これにて遊たちの家族旅行終了です
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました




